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No79

第79回 神戸事業所 倫理審査第一委員会 議事要旨

1. 日時:令和3年9月21日(火)15:00~17:00
2. 場所:Web会議方式による
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
林 知里 委員 (兵庫県立大学地域ケア開発研究所 地域ケア実践研究部門 教授)
野崎 亜紀子 委員 (京都薬科大学基礎科学系一般教育分野 教授)
小門 穂 委員(神戸薬科大学社会科学研究室 准教授)
石川 隆之 委員(地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 副院長)
北島 智也 委員 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)
濱田 博司 委員 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム チームリーダー)

(説明者)

森本 充(生命機能科学研究センター 呼吸器形成研究チーム チームリーダー)
渡邉 朋信(生命機能科学研究センター 先端バイオイメージング研究チーム チームリーダー)
林 哲太郎(生命機能科学研究センター バイオインフォマティクス研究開発チーム 技師)

(事務局)

片山 敦 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
高橋 一樹 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)人を対象とする研究計画に関する審査(新規・変更)
(2)その他

5. 委員交代について
 

委員長より、新たに委員に着任された神戸中央市民病院石川委員の紹介ならびに本日で永井委員が退任する旨の紹介があった。

6. 審議事項
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2021-013
「ヒト呼吸器原基のin vitro再構成と極性形成過程の可視化」
研究実施責任者:呼吸器形成研究チーム 岸本 圭史

【概要】
説明者の森本チームリーダーより研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。質疑応答では、共同研究先のA大学が作成した説明文書の文言の一部に関し、もう少し丁寧な記述に修正した方がよいのではという意見があり、委員会としてのコメントを説明者から先方に伝えることとした。審議では特に問題はないとされ、承認と判定された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 変更の書類を拝見していると、A大が入ってくるということだけの軽微な修正になっているとお見受けしたが、PowerPointで見せていただいた最後の実験、あれはA大でやられる研究なのか。

説明者: そうである。A大学で計画しているのは、まずはネズミの肺を使って空っぽにした後にヒトの細胞を入れたいということである。ヒトの細胞を増幅する技術が彼らにはなく、我々はオルガノイドを使うことで増幅できるため、その技術を一緒に共同開発していこうという趣旨である。

委員長: マウスの肺の骨格に入れるというのは研究計画に入っているのか。

説明者: それも実際のところはA大学でやることになる。我々はあくまでも技術的にそれを提供するということである。

委員長: では、オルガノイドができたところで終わるということで、この理研の審査の計画としてはそこで終わりという理解でよいか。

説明者: 理研の研究員が関わるのはそこまでという理解でよい。

★ A大学の同意説明文書を拝見して、これは既に先方の倫理委員会の承認を得ているものだと思うため、機会があればお伝えいただきたいと思うことが2点ある。
 まず「治療のための手術の際に摘出した標本」という言葉はサイエンスの世界では通常使われている言葉だと思うが、肺がんの患者さん向けのICの文書の中で使用する言葉としては、違和感を覚える。これまで多くのICを読んできたが、標本という言葉は初めて見た。被験者としては、あまり良い気分にはならないと思うので、「治療のための手術の際に摘出した部分から」でよいのではないかと感じた。
 もう1点は、「お守りいただきたいこと」の1点目に「研究期間中は研究担当者の指示に従ってください」とあり、研究に協力してくださる方に対して少し威圧的な表現ではないかと思う。やはり協力者に対して敬意を払うような表現が望ましいと思うため、この場合も「研究担当者の指示に従っていただくようお願いします」ぐらいの丁寧さがあってよいのではないかと感じた。

委員長: これは間接的に伝えるということになり、我々が強制的に変更を依頼することはできないことであるが。

説明者: 承知した。ディスカッションをする機会はあるので、その際にご指摘を受けたことについて伝言し、適切に対応してほしいという意図をお伝えさせていただく。

― 説明者退席後、審査が行われた―

委員長: 特に問題はなく、強力なパートナーが見つかり、そこと(共同研究を)やるということで、問題はない上に、進めていただきたい研究と見ていいのではないかと思う。よろしければ承認ということでいきたいと思うが、挙手をお願いする。

―挙手―

 

2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(継続)
受付番号:K2021-017
難治性心筋症疾患特異的iPS細胞を用いた集学的創薬スクリーニングシステムの開発と実践(iPS細胞及び心筋細胞の品質管理)
研究実施責任者:先端バイオイメージング研究チーム 渡邉 朋信

【概要】
研究実施責任者の渡邉チームリーダーより研究計画の実施期間の延長について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では特に問題はないとされ、承認と判定された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 光学的な測定というのは何を測るのか、何の違いが見えると予想したのか。

説明者: ラマン散乱計測においては、基本的には代謝の違い、特に脂質代謝の違いが見えると想像され、これに対して光第二高調波においては、筋肉、筋線維の活性率、筋収縮の効率が見えると想定される。扱う心疾患について、一つが膜の変性、もう一つが筋肉の異常ということだったため、この二つを選択したということになる。

★ これまでは研究実施者が受け取る心疾患の名前は知らされていなかったが、これからは疾患の名前を知った上で、どちらの方法で解析するかを決めるということか。

説明者: 正しくは心疾患の名前は知っているが、そのときの実験のサンプルでどれが何かというのは、われわれは知らされていない。

★ これからはそれを知った上でやるということか。

説明者: これからもブラインド(サンプルの詳細は知らされない)でいこうという話になっている。

― 説明者退席後、審査が行われた―

委員長: (研究が)遅れた理由がはっきりしているため、それは認めてもよいかと思うが、いかがか。

★ 新型コロナウイルスは研究にはあまり関係ないだろうと思ったが、やはり関係しており、研究が遅れてしまうという事態になっている。これは相当深刻な問題が起こっているなと思いつつ、聞いていた。

委員長: 病院の現場のことは完全には知らないが、全ての診療科が影響を受けてしまうということで、病院全体は相当大変だった。では、この課題に関しては、2024年3月までの継続を認めるという承認で大丈夫かと思うが、よろしければ挙手をお願いする。

―挙手―

 

3)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2021-014
「個別化T細胞受容体遺伝子導入T細胞療法のがん臨床応用を目指したネオアンチゲンおよびそれを認識するT細胞受容体のスクリーニング」
研究実施責任者:バイオインフォマティクス研究開発チーム 林 哲太郎

【概要】
研究実施責任者の林研究員より研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では特に問題はないとされ、承認と判定された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: CTC(血中循環主要細胞)というのは、がん種によってたくさん出てくるものと出てこないものがありそうということを示唆するデータはあるのか。

説明者: 今、一般的に検証されているのは乳がんである。乳がんではCTCがあるということは分かっているが、今のところ、肝胆膵領域がんや口腔がん、胃がんは、CTCというものがまだ採れてきていない状態であり、まずはCTCを同定するところから始めないといけない。

委員長: Circulating tumor cell。血液中をサークリングしているわけか。

説明者: そうである。原発腫瘍から漏れ出てきたがん腫瘍細胞で、これが転移して、体中にがんが広がっていくような感じになる。

委員長: DNAは出てくるけれども、細胞が出てくるというのが、なかなかまだ・・・。

説明者: 細胞も出てくる。もちろんcell-free DNAとして出ていく部分もあって、そちらで研究されている分野もある。

★ 転移性大腸がんが対象に入っているが、これは追加の項目には挙がっていなくて、前から予定されて実施されていたものか。

説明者: 当初から予定として入っている。

★ 対象のところにはあるけれども、その他の部分には一切出てこないが、それは何か理由があったのか。

委員長: 目的・意義のあたりにないということ。

★ 目的のところや、対象者の選定基準など。肝胆膵領域のがんと今回追加の口腔がんと胃がんのみで、大腸がんがなかったのだが。

説明者: その転移性というのは、元々は肝がんから転移したものというイメージで書かれている。原発が肝がんで、そこから転移した大腸がんということである。

★ 承知した。

委員長: 医学系以外の方々には、これは少し難しかったのではないかと私は思う。それを全て理解するのは倫理委員会の目的ではないというところもあって、どこまで議論しようかなと思うが、がんが出している物質が分かったら、その抗体を作ってやっつけてしまえという療法なので。

説明者: がん特異的なタンパク質が、がん細胞の表面に提示されていくので、そのがん特異的な提示された抗原をRNAシークエンスから予測していくというところから始まっている。それに反応するようなT細胞、免疫細胞を作って、結局はそれを用いて、個別対応という形でがんをやっつけていくという流れになるかなと思う。

委員長: かなり臨床に近い基礎研究ではないか。

説明者: 内容的にはそうだが、私たちのラボはこういうシークエンスの技術を開発するのがメインになっている。

委員長: こういうパートナーシップが理化学研究所と病院ないしは医学研究機関の間にあって、私はいつも日本トップの理研がこのように組むのはすごいと思って、組むからこそできる医学かつ生物学研究なのだというように見ている。

★ 臨床の世界でも恐らく何年後かにはこういう時代が来るのではないかと思っているので、非常に興味深く聞かせていただいた。

委員長: あっという間にcirculating DNAの方はもう臨床にいって、今度は細胞の研究がフロント、最先端で進んでいるのだなと思う。
それでは審査に移らせていただきたいと思う。

― 説明者退席後、審査が行われた―

委員長:しっかり考えておられるというように私は読み取った。よろしければ、承認ということにしたいと思うが挙手をお願いする。

―挙手―

 

4)その他

加藤委員長からゲノム医療・ゲノム編集を巡る最近の状況について、
がんゲノム医療の先の話が始まりつつある点に関して、ならびに世界保健機関(WHO)の委員として活動してきた立場からのゲノム編集技術に関する話題提供があった。

以上

 

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