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No82

第82回 神戸事業所 倫理審査第一委員会 議事要旨

1. 日時:令和4年12月15日(木)14:00~15:10
2. 場所:Web会議方式による
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
林 知里 委員 (兵庫県立大学地域ケア開発研究所 地域ケア実践研究部門 教授)
小門 穂 委員 (神戸薬科大学社会科学研究室 准教授)
石川 隆之 委員 (地方独立行政法人神戸市民病院機構 神戸市立医療センター中央市民病院 副院長)
北島 智也 委員 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)
濱田 博司 委員 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム チームリーダー)

(説明者)

升本 英利 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム 上級研究員)

(事務局)

片山 敦 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
高橋 一樹 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1) 委員長互選
(2) 人を対象とする研究計画の変更申請に関する承認について(報告)
(3) 指針改正に伴う規程等の改正について(報告)
(4) 人を対象とする研究計画に関する審査(変更)
(5) その他

5. 報告事項
 

1)委員長互選
委員長の互選が行われた。加藤氏が選任され、当氏は選任を受諾した。

 

2)人を対象とする研究計画の変更申請に関する承認/許可について

事務局より、第81回の委員会から今回までの間に迅速審査による承認・許可の手続きを執った研究計画の変更申請2件について報告があった。
詳細は以下の通り

事務局: 変更申請の方で、委員会に諮らずに承認・許可された2件について報告させていただく。責任者が別のラボに移られ所属の変更をした。4月の段階で所属が替わっており、変更申請を実施した2件となる。

委員長: 承知した。これは報告ということで。

 

 

3)指針改正に伴う規程等の改正について

事務局: 指針改正があったということと、それに伴って理研内の規程、規程細則等を変えたというお話をさせていただく。
 個人情報保護法の改正が指針に取り込まれ、生命・医学系指針が改正されている。それに基づき、理研の規程と細則を改正したというところと、計画書の書式を変えている。
 指針改正の新旧対照表になるが、個人情報保護法の改正に伴う理研の倫理規程の改正点についてということで、理研で資料を作ったものがあるので、こちらを使って説明させていただく。
 今回の指針で幾つか改正点があるが、用語の整理が行われたというところで、いろいろな個人情報保護法に基づいた用語の整理がされている。
 試料・情報の取得・提供についても、インフォームド・コンセントが必要なくなったとか、そういうものもある。
 個人情報の保護に関しては、今まで学術例外が適用されていた国立研究開発法人とか大学等でも個人情報の保護を確実にしましょうというところが入ってきている。
 あと、倫理審査に必要となる範囲の見直しというのは理研内の話なので、こちらは割愛させていただく。
 用語の整理であるが、これはあくまで理研として、今まで理研では新たに死者の情報に関する用語が定義されてきたが、それについて、(個人)情報などを使うときには生存する個人の情報と同じように死者の情報も取り扱うということで、切り分けはしないことを規程の中の位置付けとしている。
 また「匿名化」とか「対応表」というものが用語として使えなくなってしまったので、そちらも理研の規程内でも削除している。
 情報の取り扱いに関する区分であるが、昔は「連結可能匿名化」と「連結不可能匿名化」と言っていたものがあるけれども、それは前の指針改正で使えなくなっており、今度は「匿名化」というものが使えなくなり、匿名の過程において個人情報保護法の中で定められた「匿名加工情報」という用語と「仮名加工情報」というものに分けられることになる。
 ざっくりした言い方で正確ではないが、「匿名加工情報」というのが今までで言う連結不可能匿名化で、「仮名加工情報」というのが対応表のある、遡れば個人を特定することができるような情報が残っている状態のものになっている。

委員長: 一言いっておくと、「匿名加工」というのは医学研究ではあまりなくて、いろいろな個人につながる情報、例えばゲノム情報でそれなりの長さのものがあればもう絶対にそれは個人につながるので、「匿名加工」にはならない。だから、どちらかというと、われわれが見ないといけないのは「仮名加工」の方である。

事務局: そうである。「仮名加工情報」は「他の情報と照合しない限り」ということで、他の情報と照合すれば特定の個人を識別することができるような情報というもので、「匿名加工情報」は個人情報に結び付くものを完全になくしてしまうので、そういうものは医学界ではあまり使われないと思う。
 「仮名加工情報」は、照合性が容易か容易ではないかというところで切り分けられることになる。例えば、「例1」にあるように、氏名等と特定の個人を識別できない情報が合わさったものが取得情報になってくると思うが、氏名と識別できない情報を分けるということをして、それぞれにIDを付けて対応表を設けると、これで特定の個人を識別できない情報については「仮名加工」をした情報になるという概念になっている。
 この図では、「匿名加工情報」だけれども個人情報に当たるものというものがここに示されているもので、元となった個人情報を仮に捨てると言っても対応表がある「仮名加工情報」に、「例3」になってくると、それでも個人に関する情報に該当するということになる。
 仮に対応表を理研に保有しないという「例2」の状態にしたとしても、元の個人情報とつながった情報があれば、照合性があるということなので、これも「仮名加工情報」だけれども個人に関する情報ということになってくる。
 理研にて元のデータを所有しないというのと、対応表も所有しないで加工された情報だけ手元にあるという状態だと、「仮名加工情報」の個人情報に該当しないものに該当するということで、このような切り分けが「匿名加工情報」、「仮名加工情報」、「個人情報」という切り分けの中である。
 新たに設けられた「個人関連情報」というものがあるが、これはWebページに個人がアクセスした履歴とか、個人に結び付いて何かしらで収集されるデータみたいなもの、CookieとかIPアドレスみたいなものが「個人関連情報」ということになって、これが新しく定義されたものになる。
 このように(既存の)言葉が使えなくなったので、理研の様式の中でも「仮名加工」した情報なのか、「匿名加工」した情報を使うのかということを申請してもらうような様式に変わっている。
 あとは、インフォームド・コンセント等を受ける手続き。
新たに試料・情報を取得して研究を行う場合とか、自分の機関において保有している既存試料・情報を自分で用いる場合と他機関に渡す場合、こういうときにインフォームド・コンセントやオプトアウトをしなさいよと。一例として、他の研究機関に自分の施設で持っている既存試料・情報を提供する場合に、ICが要るのか、オプトアウトが要るのかというのが変わってきているところがある。例えば、試料だけの提供である場合にはICは要らないと変わったり、要配慮個人情報などを他の機関に渡す場合にIC手続きの簡略化ができる措置が幾つかあるとかそういうものが取り込まれており、前の指針よりも若干情報や試料の流通がしやすくなった感じにはなっている。
 オプトアウトで既存試料・情報を提供する場合。学術研究機関であるというところが前提条件であるが、そういうところが他機関からもらったり、他機関にあげたりというところではオプトアウトでよい。しかし、それは研究対象者の権利・利益を不当に侵害する恐れがないことだとか、そういうところの制限はあるのだけれども、オプトアウトで既存試料・情報を提供することができることになってきている。
 あと一つ大きなこととしては、海外へ試料・情報を提供する場合。海外の個人情報に関する法規制が、EUとか、厳しくなったというところもあり、それが取り込まれた結果、情報や試料を取得する際に、どこの海外の国のどういう機関に渡す可能性があるのかをきちんと説明して同意を得なさいというふうに変わってきている。これは見方としては難しいところがあり、海外で発表することがあるときに国名まで言うのかというところがちょっと悩ましいところではある。
 個人情報の保護等について。「利用目的による制限」、「要配慮個人情報の取得制限」、「第三者提供の制限」というのは、学術研究は例外ということで認められてきたものが細分化されて、学術研究機関も安全管理措置をしなさいとか、保有個人データの開示等をしなさいというのが、学術研究でも適用されるということになってきた。個人情報の保護として遵守すべき主な点としては、「不適正な取得・利用の禁止」、「正確性の確保」、「漏えい、滅失等の防止」、漏えいのあった場合は報告(注:個人情報保護委員会への報告と本人への通知)しなさいといった「安全管理」と「報告」が求められている。理研としては、どんな試料や情報に関しても安全管理措置を取りなさいということをやっているので、大きな変化はないかなというところがある。

委員長: 正直言ってこの個人情報保護法の改正そのものがかなり細かく、それがさらに指針に反映されているので、全貌を詳細まで100%理解できる人が何人ぐらい日本にいるのだろうみたいな感じがあり、どちらかというと運用していってここはどうも大事な改正点に引っかかりそうだということがあれば、そのときに勉強して正しく審査ができるようにしていくという両建てでいくしかないかなと。指針を勉強するのだけれどもOJT的に押さえていくというような感じを思っている。
 もうちょっと時間を取ってもいいかなと思う。★先生(委員)も大変で。委員会を持たないといけないし。

★ はい。大変である。運用の中で解釈をしていく中で、私から見ると独自な解釈がされているのかもしれないなと思ったりもしているが、うちは厳しくなっている。

委員長: 要するに、個人情報保護という全個人情報を対象とする法律を、医学研究の現場にどこがどう当てはまるのかみたいな話を、結構議論になっていて、医学・医療独自の法律がもっとあるべきではないかという話はされているが、では、それが本当に作りやすいものなのかどうかというのも簡単ではないので、皆さん見ておかれるといいかなと。
 一つ、単なる情報提供だけれども、ヨーロッパが、GDPR(General Data Protection Reguration:一般データ保護規則)というのが、specific consentといって目的をきっちり特定しないと物が動かないという仕組みをつくってしまったら、そうしたらバイオバンクとかデータベースが困って、二次利用に全部元に戻らないといけないではないかという話になっていて、かつ、国ごとに学術例外のつくり方が違うとかという話があったりして、EHDS(European Health Data Space)という新しい法体系を医療・健康分野で作ろうという動きが出てきている。それは日本でもだんだん話題になってきているので、良くも悪くも日本は向こうが動いたらそれに合わせて動くと思うので、それがちょっと現場に合わせた状況をつくるのに役立てばいいなというような感じで。とはいえ、目の前では対応しないといけないという。

★ 一つ疑問があるのだけれども。今、臨床の場では、病院も、行政データも、地域のデータも、いろいろ臨床ベースでの統合がすごく進んでいると思う。個人情報を適切に管理した上で、そして行政の情報は特定の企業であれば情報を得られるという企業が二つか三つ、何か、指定されたところがある。データベースの管理であるとか、特定の事業の。

委員長: それは次世代医療基盤法?

★ そうである。そこなどが、臨床ベースのデータの方がデータ共有と活用も進んでいると思うが、一方で研究となると疫学研究も含め、指針を見ると厳しく管理されていて、臨床のところと協働するとその指針が緩くなるというか、ちょっと大ざっぱに何でも認められるみたいな感覚を持っているのだけれども、その辺は実際どうなっていくのだろうか。

委員長: あれは基本的には先ほどで言うところの「匿名加工情報」に近い、もう個人に戻れないような状態のものの話だと僕は理解しているが。次世代医療基盤法というのは。

★ 行政データとなると、個人の名前や住所というものと結び付いた状態で、そしてそれを介入にも生かしていく。元々行政ベースの臨床は個人を対象とするよりか集団対象だったので、そんなに個人個人のデータは必要なかったのが、今はそれが集団から個人への介入がターゲットになっていて、個人へ介入していって、その経過も追ってデータも得るというような研究が、少し日本で計画されているという印象があるのだけれども、何かその辺が、法律となると私たちはもう全然よく分からないので、大丈夫なのかなと思う。

委員長: なるほど。なかなかこの委員会としては、自治体が行うような健康管理につながるような研究というのはあまり関わってこないので、例えばがん登録法(注:「がん登録等の推進に関する法律」 )などがあると、がん登録に関しては「個人情報保護法」は関係なくて、がん登録法の下での監督になるのでというふうに外れていくのだけれども、それが次世代医療基盤法というのでどれぐらい外れているのか分からないけれども、基本的にはこの委員会で扱うものは、完全に外れるものはまずないと思うので。
 一つ、事務局に確認。学術例外で五つ項目があって、三つは例外のままなのだけれども、二つは法律にかかってしまうわけで。その特に安全管理のところに関して、もし何か問題が起こったときに、研究現場がいきなり個人情報保護法で罰せられるのかということを時々聞く人がいると思う。それは理研としてどう見ているのか。

事務局: 所内規程に照らしてどうかというところをまず理研の中で審議して、最悪は処罰ということにはなるかとは思う。

委員長: 今度、調べておいてもらえないか。つまり法律として、法律が学術機関である理研を、対象となると言っているわけで。そうしたら法律がダイレクトに、例えば理研の研究者を罰することがあるのかどうかという。全国の他の組織にいる人たちにも同じ問いがあるわけなので、これに関しては全ての医学研究関係者にとっての問題で、まだ私はきれいに答えられない。

事務局: 承知した。

委員長: では、次の審査課題に入ることにさせていただく。

6. 審議事項
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2022-017
「心疾患特異的iPS細胞を用いた病態再現および治療に関する研究」
研究実施責任者: BDR個体パターニング研究チーム 升本 英利

【概要】
説明者の升本研究員より研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後審議となった。審議では特に問題がないことを確認後、承認とされた。
質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 三次元で、トレーニング培養ということで。それで、細胞自体は次のページのiPSが理研から来たものなのか。

説明者: そうである。

委員長: 健常者由来のiPSも使っているのか。

説明者: 使っている。

委員長: 試料自体はもう承認している。未成熟というのは人間の場合にどのぐらいのイメージで、例えば胎児なのか新生児なのか。それから成熟というのはどの辺のイメージとお答えになられるのか。

説明者: 今回私たちが、例えば先ほどの組織を作る場合の期間は大体一月弱ぐらいになる。それは受精卵から考えると、一月というところになると、その段階では心臓の心筋層はまだ非常に未成熟で、自己拍動もまだ、始まったか始まっていないかというところになり、胎児期でもかなり早い段階ということになっている。そういうところなので、それでヒトの心機能を本当に見られているかというのは、以前からその点は課題にはなっているところではある。

委員長: 新生児というよりは、もうちょっと前の段階。それでも薬剤の検査ができるだろうという、できてみないと言えないことかもしれないが、そんなイメージでよろしいか。

説明者: 部分的には現状でもできてはいるが、そのあたりはやはりより成熟であった方が、よりターゲットとなるヒトの心臓に近いはずで。

★ ヒトの生殖細胞のどこまで培養してよろしいかという、その倫理的な大問題が今見直されようとしているらしいけれども、説明者の説明だと、心臓のところだけを模しているとは思うが、今回は生殖細胞ではないため関係ないとしても、何かお考えがあればちょっと聞かせていただきたい。実際には研究をどこかでやめるのだと思うのだけれども、それは何か基準を持って、ここら辺以上でやめるとか、何かそういうのはあるのか。

説明者: 生殖細胞の場合はその議論がもう今必要だと思うのだけれども、このいわゆる体細胞に関しては、心臓もそうだが、まだちょっと技術的に全然追い付いていないというところではないかというのが正直な印象である。

★ 承知した。

委員長: いわゆる胚発生を経由しているのではなくて、もう心臓の未熟な細胞が、ある意味いきなりできてきていて、だから組織を作っているわけだから、いわゆるヒトの胚を培養するという状況に似たことは起こらずに心臓ができているということで。

説明者: そういう理解で。特にiPSの場合はブラストシスト(胚盤胞)までしか戻らないというか、結局そこからもう一回分化に向かっているという感じなので。

★ 先ほどのお話なのだけれども、脳は大体60日目ぐらいまでのオルガノイドができていると前にお聞きしたのだけれども、心臓の場合はもっと短いということなのか。

説明者: 実際は60日とか長くやればやるほど、ある程度より成熟に近いものができるのではないかと予想はついているが、ただ一方で、三次元的な培養をやるのは結構トリッキーで、長期にやるのが現実的に難しい。だから実際はあまりそこまで長期にできていないというか、一月ぐらいがちょっと限界みたいなところがあり、現状、技術的レベルとしてそういう状況かなという感じである。

★ 30日程度のものであっても、ああいう物理的な動きを加えるとかなり、精度の良いものができるということなのか。

説明者: そこをこれから研究していきたいという状況である。

委員長: 細胞の実験をたくさん見ているこの委員会としては、人間の体の組織がいわゆる外的な力とか、電気の刺激とか、そういうもので変化していくというイメージをあまり持たずに見てきていると思うのだけれども、考えれば当たり前のことかもしれないし、そういう方向に研究がだんだんいっているということを今日見せていただいたのかなと思っている。なかなか手探りのことも多いのだろうなというふうに思った。
 今回これ以前の計画に対して新しい手法が加わったからといって、何か気にすることがあるわけではないという風に見て取っているし、他にもし質問がないようなら、説明者には退席いただいて審議に入りたいと思う。

―説明者退席後、審議が行われた―

委員長: 今の課題についての変更申請は、逆に勉強させていただいたぐらいで、恐らく問題はなく承認できると思いうので、よろしければ挙手で承認を頂きたいと思う。

―全委員挙手―

委員長: では審議は終わりということで。
委員の任期は、この春から?

事務局: そうである。この4月から。

委員長: 委員長の任期は、何か私が初めてなったときは5月ぐらいだったのだけれども、私はこの年度における委員長なのか。

事務局: 任期の間の2年間の委員長ということに。

委員長: この12月に始まるのか。

事務局: 委員会が開かれずに互選がない場合はそれまでの委員長職は引き続きというところで今までやっていただいていて、今回開催があったので、改めて互選という手続きとなった。

委員長: それで4月に遡って、2年間の委員長ということで。了解した。

 

7. その他
 

委員長より再生医学領域における最近のELSI(倫理的・法的・社会的課題:Ethical, Legal and Social Issues)についての話題提供があった。

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