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No77

第77回 神戸事業所 研究倫理第一委員会 議事要旨

1. 日時:令和2年12月22日(火)13:58~14:59
2. 場所:Web会議方式による
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
林 知里 委員 (兵庫県立大学地域ケア開発研究所 地域ケア実践研究部門 教授)
野崎 亜紀子 委員 (京都薬科大学基礎科学系一般教育分野 教授) 北島 智也 委員 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)
濱田 博司 委員 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム チームリーダー)

(説明者)

入來 篤史 (生命機能科学研究センター 象徴概念発達研究チーム チームリーダー)
松本 桂彦 (生命機能科学研究センター 合成生物学研究チーム 研究員)

(事務局)

吉識 肇 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
高橋 一樹 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)人を対象とする研究計画の変更申請に関する承認について
(2)令和元年度研究実施報告書について
(3)人を対象とする研究計画に関する審査(新規・変更)
(4)その他

5. 報告事項
 

人を対象とする研究計画の変更申請に関する承認について
事務局より、第76回の委員会から今回までに迅速審査による承認の手続きを執った研究計画の変更申請10件について報告があった。

6. 審議事項
 

ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2020-035
「『赤ちゃんの安全』のための見守り(全自動リスク行動アラート)システムの開発」
研究実施責任者:BDR 象徴概念発達研究チーム 入來 篤史

【概要】
研究実施責任者の入來チームリーダーより新規研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、説明文書の表現が専門的すぎるのではないか、また、リスク行動の撮影を行うことになるので「リスクはない」という表現は間違っているのではという指摘があった。説明文書に、記載がなく誤解を生じるのではないかという箇所があるため、共同研究機関に文書の確認と修正を求めること、協力保育所における研究参加となる場合においても1組毎に確実にインフォームドコンセントが行われるのかどうかを確認することとされ、条件を満たした上で適正と判断するとされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: **大学のセンターの中で赤ちゃんが観察されるということか。

説明者: 普段、昼寝をしているときに寝返りをするかどうかという映像を撮るので、ルートとしては二つあると聞いている。一つは**大学にいつも相談に来ているご家庭にお願いして、家庭の中で昼寝をしている2、3時間を撮ってもらうということである。もう一つは、募集のところに少し書いてあるが、現地の市役所と契約している保育所があるようで、その保育所と連携した形で、保育所内で撮像してもらうというパターンがあるように聞いている。

委員長: 分かった。いずれにしても、これはおおよその映像を撮れればいいのか。よくあるのは、きっちり何かある部分を撮るということがあると、そういうセッティングのところに持っていかなくてはいけなくなり、そこで起こった事故の責任は誰が持つのかということで、単なる普通の保育所での出来事なのか、その研究によって起こったことなのかということが問題になることがあるが、今回はほぼそういうことはなくて、自然状態を見ていると。

説明者: そうである。これは普及させるシステムを作ることが目的なので、学術研究であまりきっちりしたことをやると、かえって良くなく、できるだけ簡素で害のないものということで、その点で**社のアドバイスをもらいながら、カメラの設定や設置の方法などをやるということになると思う。

委員長: よく分かった。では、委員の皆さまからら、ご質問をお願いしたい。

★ 2ページの研究方法のところの6)に「臨床試験を行う」とあるが、この臨床試験とはどのようなものかを教えていただきたい。

説明者: われわれの業界で使う「臨床」とは現場でということなので、要するに赤ちゃんが寝ている保育所や家庭の現場でという意味である。

★ では、何か介入したり、トライアルというか、検証するという意味は含まない、ただの観察のみであるという理解でよろしいか。

説明者: 介入があり得るかどうかというと、ちょっと想定できない。目的が普通に昼寝をしている赤ちゃんの検出で、非常に自明なことなので、観察だけだと考えて差し支えない。

★ 私が勝手に想像した介入というのが、赤ちゃんが寝返りをしたときにアラートやブザーが鳴ったりして、それがちゃんと感知できているかという実験、ちゃんと危険がとらえられているかを検証までするということで、臨床試験なのかなと読んだが、そういうことはないということか。

説明者: それは検証するが、観察だけである。寝返ったかどうかは自明なので、それを基にしてお母さんたちが赤ちゃんを見に行くわけであるから、その時点で検証できるということである。

★ お母さんたちが赤ちゃんを、何らかのサインを出たものを察知して、見に行くというところまでを、この研究が含んでいるのかどうか。

説明者: 見に行って、その結果をフィードバックしてもらって、(研究に)生かすような行為があるかどうかということか?

★ そうである。

説明者: それはない。ちゃんと検出できているかどうかは、やはり実験室の中でやったアルゴリズムを作り込んでいくので、それを実際の現場でもう一回当てはめてみて、適用してみて、検出しているかどうかはこちらで見るが、それは観察で検証できる話で、現場に何かを依頼するということはない。

委員長: アラートが来たときに、俯せになっているかどうかを確認したりするのか。

説明者: お母さんなり保育士さんなりがこれを利用されると思うが、その前にアラートを発した時点で、われわれは映像を見ていれば分かるので。むしろ現場としては、ちゃんと作った骨格検出ができているかどうか、つまりあるところで作ったシステムを新しいビデオ映像に適用するところに転移学習があるわけなので、通常の深層学習は既にあるデータで検出できるかどうかということが深層学習のメカニズムであるわけだが、これはリアルタイムで検出してアラートすることが目的なので、同じ赤ちゃんなのだけれども、新しいフレッシュな映像でちゃんとできているかどうかを試験するという意味で、もう一回、実地でデータを取る必要があるわけである。データを取った段階で動作しているかどうかは実験者の側だけで分かるし、それがやることなので、先ほどのご質問のように、協力者なりにそのフィードバックを求める必要はない計画である。

委員長: 模式図の中でお母さんが出てきて、そこにアラートが行って、どこまでを先生たちが研究データとして取って論文に書くというか、まとめるかということとずれているので、われわれが混乱しているのだと思う。コンピューターの中で、本物の映像に合わせてチェックが効くシステムができたかどうかを見ているわけか。

説明者: そうである。

委員長: 研究者が映像で見て、このシステムがうまく動いたことを確認されたら、そこで一人一人の赤ちゃんのデータ取りが完成するのか。

説明者: そうである。

委員長: クリアに分かった。他にあるか。

★ 個人のご自宅か、あるいは協力を頂ける保育所等で撮像することになっているが、個人宅についてはどのようにリクルートするのか。また、募集方法に関しては、プロトコルの12分の3ページに「**大学**研究センターのウェブサイトや〇〇市、□□市の広報誌、あるいは地域コミュニティ雑誌への広告掲載を通じて募集する」とあって、これは個人も保育所なども同じような形で募集されるのか。さらに保育所であれば、その保育所単位で申し込みというふうにするのか、どのような形でリクルートされるのか。

説明者: これは**大学の**研究センターではルーティンにやっている方法だそうで、**研究センターでいろいろなデータ、ビデオ映像などをしょっちゅう集めているので、それにのっとっている。個人で既に通っていらっしゃるご家庭もあるので、そこにお願いするとか、ここに書いてあるように通常のリクルートの方法があるので、それに載せるということで、保育所単位で契約というか、お願いしているところもあるそう。保育所の中で保育を任されている方々に同意を取った上で、そういうデータを収集するということは、もう日常的にやられているそうである。

★ そうすると、グループというか、何人かいるところをまとめて撮るという形になるのか、お一人お一人を撮るという形になるのか、どちらなのか。

説明者: これは多分、最初の目的のところで、ニーズが一番あるのは保育所の保育士たちの負担軽減ということなので、この中で基本的に今、イメージしているのは、天井に1台付けて、まとめて撮るということである。その中で一人一人を別々に撮るということは、多分、普及型のシステムとしては負担が大き過ぎるので、まとめて撮るということになると思う。

★ 保育所の場合は何人もいると思う。そこでまとめて**大学のこういう研究に参加するということで、一人一人の保護者から同意を頂くという格好になっているのかどうか、お伺いしたい。

説明者: **大学の倫理委員会の審査は、この共同研究契約が締結されてから倫理審査委員会を立ち上げて、審査するということである。今、出ているインフォームドコンセントは予定稿であり、最終的なものはこれから決まるそうである。通常の方法では、今、委員がおっしゃったように個人、個人に同意を頂いた上で、保育所は保育所単位で説明して、合意を得た上でやっていると聞いている。

★ 状況については承知した。

委員長: 確認であるが、要するに一人一人の赤ちゃんと親御さんに説明が行くということでよろしいか。

説明者: そのはずである。先ほど申したが、**大学での倫理委員会はこれからなので、恐らく理研で何か注文を付ければ、それを申請書に盛り込んでもらうことは可能だと思う。ただ、それは機関対機関で注文を付けるのか、あるいは共同研究者のレベルで相談してやるのかは、理研の本部とご相談した上で、適切な方法を取らせていただければと思う。

委員長: 了解した。理研はいつもデータ解析側なので、実際に人と接点を持っておられるのは病院なり、今回の場合のように外側にあることが多くて、この委員会としてはどこまで人との接点についてこちらの委員会から注文を付けるか、いつも少し迷いながらやっている。なるべく向こうを信頼して、しかし、われわれも少しご意見を申し上げることで、全体が適切になるようにという理念の下にやっているので、どのように表現するかは審議で決めさせていただきたいと思う。

★ 3ページの対象と人数のところに健常者100名とあるのですけれども、対象が0歳から3歳児までということで、特に俯せ寝のリスクが高い4カ月以上の0歳児が最低何名必要かであるとか、男女比などは特に必要ないのか。

説明者: 男女比は特に限定していないが、一般的な保育所や家庭に普及することを考えると、人口構成に合わせた比率になると思う。何名が必要かというのは、理研の方でヒトではなくて動物でシステムをかなりブラッシュアップしてあるので、100名を超えて何百名が必要ということはあり得ないと思う。例えば10名程度でかなり性能の良いものができるということになれば、そこで打ち切る可能性はあるが、ただ、機械学習というのはデータが多ければ多いほど、精度はどんどん上がってくるし、研究期間内といろいろな状況が許す限り、データは多ければ多い方がいいというのがこの分野の通例である。

★ ICの部分で、被験者の立場で読ませていただいたときに、結構難解な文言が出てくるのと、逆に保護者や保育士が必要とするような情報がないのではないかと感じた。例えば昼寝といっても、お昼寝が短い子もいれば、そのときの状況によって長く寝たり、短かったりするが、その撮影時間がどれぐらいであるか、撮影しているときに立ち会いが必要であるかどうか、それから立ち会っているとき、この撮影時にもし俯せになったりして危険を感じた場合、撮影時であっても手を差し伸べていいのかなど、その辺のところは丁寧にこのICに盛り込むように、大学の方にお願いしていただければと思う。

説明者: そこはご指摘いただければ大変ありがたく、そのように要請させていただきたいと思う。今、何点かご指摘いただいたが、これをコメントとして後で頂けるのであれば、それをそのままお伝えする。

委員長: では、ご説明と質疑はこれで終わりたいと思う。審議に入らせていただく。

-説明者退席後、審議が行われた-

委員長: まずは★委員がおっしゃった、一組一組の参加者、親と赤ちゃんにしっかりと説明がなされるようにしていただきたいということが一つ。もう一つは、今の実際の撮影について、もう少し詳しく、分かりやすく説明書に書かれるのが適切だろうと。

★ 13ページの説明書の中の3番の「研究の方法」の1行目に「ヒト-サル共通の前臨床プログラムを開発し、動物実験による予備的検証を進めつつ」と出てくるが、これを一般の方、普通の保護者の方が読まれたら、何かすごく大変な研究に参加させられるのではないかという誤解を生じてしまうのではないかと思う。この文言は計画研究書には必要であると思うが、ICの中に必ず入れなければいけないのかどうかというと、なくてもよいものではないかと感じた。

委員長: そのとおりだと思う。

★ 特に「ヒト-サル共通」というのは、日頃、サイエンスになじみのない方だったら、少し不自然に感じたりするかもしれないと思う。

委員長: 事務局はそれぐらいの表現で、うまくまとめて。専門的な内容を分かりやすく書くようにと。

事務局: 専門用語ではなく、分かりやすい表現で。

委員長: そうである。あとは、撮影中に何か起こったときに、その責任がどこにあるのかをもう少しはっきりさせて。研究による責任と、そもそも赤ちゃんがお昼寝をしているから起こる責任を分けられるようにした方がいい。

事務局: 承知した。通常の保育というところで、基本的には俯せ寝をしたら起こすとか、ひっくり返すと思うが、そういうことを普通にやっていただくというところを強調するというのでは、また違う話かと思う。

委員長: 「予想されるリスクなので、研究によって新たに生じるリスクはないと思われる」と書けばいいのではないか。「新たなリスクはない」というふうにしておかないと、通常の中でのリスクは元々あるわけである。人間は生きていたらリスクがあって、赤ちゃんは特にあるわけだから、それが研究によるリスクではないということが結果として分かるように表現するということである。

★ これは**大学の**研究センターが共同研究先で、そこで既にいろいろな保育所やお母さん方とつながりがあるというお話であった。そのつながりのあるところで、いろいろな研究に参加してもらっているという経験がある中で、このIC文書は随分とサイエンティフィックだなというか、そのように感じた。それで、保育所との話し合いだけで事が進んでいないだろうかという懸念が少しあったので質問をした。

★ 同意撤回書が「私は、『能力の発達的起源に関する意識調査』の研究に参加することに同意し」となっているが、これは何に使われた同意書、同意撤回書なのだろうかと私も思った。

委員長: ★先生とは、つい先日医学研究系でない組織の倫理審査の問題について学会の中で話をした。これは恐らくそういう問題が非常に大きいと思う。**大学はしっかりした大学であるが、医学系の研究をどんどんやっているところではなく、恐らくこの分野のことをよく分からない人ばかりなのではないかと私は想像している。
 であるから、研究者の方も、倫理委員会の方も、最低限のことをやっていて、指針に基づいて行うようになってはいるが、それ以上にもっとちゃんと理解し、研究者と研究参加者の信頼関係をつくらなければいけないわけである。難しいのは、私たちはデータを使う側の組織の委員会で、本体の委員会ではない。向こうに対してある種の越権をして、どこまで言うのかということは、もう20年来の理研発足以来の課題である。
 この説明文書に「非常に専門的である」と。「もう少し全体的に分かりやすくされるのがよいと考える」ということを付けることにしたい。そして、具体的には研究の方法のところと先ほどの予想されるリスクのところを指摘する。それから撤回書については、研究課題名が違うことを指摘する。その上で、「私たちとしては、できましたら改訂された説明文書、同意書を見せていただけるとありがたいです」というふうに伝える。そして、それを確認して、それでまだ何かあれば、言ってみたらいいと思う。皆さま、それぐらいでいかがか。

★ 承知した。

委員長: では、要するに条件付きということで、委員長が指定する数名の委員と共に修正案を確認した上で、それに納得できれば適正と判断するという形でいきたいと思う。それでよろしければ、挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2020-012 
「三次元イメージング技術を用いた病理組織診断の標準化」
研究実施責任者:BDR 合成生物学研究チーム 上田 泰己

【概要】
説明者の松本研究員より、前委員会から継続審議となっていた研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では特に問題はないとされ、適正であると判定された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

説明者: 前回、A大学とB大学の書類に不備があり、今回、A大学とB大学の同意書がそろったので、再度、審査をお願いした次第である。

委員長: しっかりと資料がそろったのが見て取れるが、委員の方々からご質問等いかがか。

★ 既にメールで差し上げたとおり、若干の懸念があったが、中身をよく見て、あとは医学研究の指針の欄を見ると、死んだ方が同意を撤回することについても明確な規定があるので、それにのっとってやればいいのであり、前回指摘したA大学の方は、教育用に献体された方の材料を使うということで懸念したが、そこはきれいに書き直されていて、いずれも納得している。従って、私はこれで結構だと思っている。

委員長: 前回は足りなかった部分がクリアにされたというやりとりを、今、させていただいたところである。ご質問等がなければ、審議に入る。

-説明者退席後、審議が行われた-

委員長: いろいろな段階の人がおられると。これから献体される方、既に献体が決定している方、それから亡くなった方のことも考えて、全ての手続きがどのようになされるかということが分かったと思う。また、いずれも指針にのっとっていて、同意を取れる場合は取り、研究について通知・公開して、撤回の機会を与えるということもできているし、解剖が行われるまでの撤回の自由もしっかりとあるので、これで承認ということでよろしいかと思う。よければ、挙手をお願いしたい。

―全員挙手―

委員長: それでは、これは承認ということで進めたいと思う。

 

7. その他
 

委員長より、倫理指針改正に係る話題提供が行われた。

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