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No73

第73回 神戸事業所 研究倫理第一委員会 議事要旨

1. 日時:令和2年2月18日(火)15:00~16:45
2. 場所:理化学研究所 神戸地区 MIR&Dセンタービル 2階 大会議室
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
野崎 亜紀子 委員 (京都薬科大学基礎科学系一般教育分野 教授)
林 知里 委員 (兵庫県立大学地域ケア開発研究所 地域ケア実践研究部門 教授)
北島 智也 委員 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)

(説明者)

前田 亜希子 (生命機能科学研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクト 上級研究員)
升本 英利 (生命機能科学研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクト 上級研究員)
高橋 恒一 (生命機能科学研究センター バイオコンピューティング研究チーム チームリーダー)
神田 元紀 (生命機能科学研究センター バイオコンピューティング研究チーム 研究員)
室伏 真由美 (生命機能科学研究センター 器官誘導研究チーム アシスタント)
武尾 真 (生命機能科学研究センター 器官誘導研究チーム 上級研究員)
髙里 実 (生命機能科学研究センター ヒト器官形成研究チーム チームリーダー)

(オブザーバー)

小川 壮 (神戸事業所長)

(事務局)

吉識 肇 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)
高橋 一樹 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)人を対象とする研究計画の変更申請に関する承認について(報告)
(2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規・変更)
(3)その他

5. 報告事項について
 

(1) 人を対象とする研究計画の変更申請に関する承認について
事務局より、研究計画10課題について、人を対象とする研究に関する倫理規程細則に基づき、研究実施場所及び保管場所の追加・削除等に係る変更申請の承認手続きを実施した旨の報告があった。

6. 審議事項
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2019-052
「網膜色素変性の遺伝子診断および自己免疫の検出」
研究実施責任者:網膜再生医療研究開発プロジェクト 前田 亜希子

【概要】
 研究実施責任者の前田研究員より、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では特に問題はないとされ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

説明者: 今後は共同研究機関である**病院を主体として、理研ではその研究を援助する役割へと変更するということになる。つまり、立場としては今まで理研主体でやっていたものと全く同じ研究について、**病院に主体を移したいということである。この変更によって、より臨床応用へと内容を移行する予定である。

委員長: 背景が分かった。
がんゲノムが先に行われているが、それ以外のゲノム医療ということか。

 そうである。これまでの研究から日本眼科学会の方でも研究として評価していただいて、理研と**病院、あとは神戸の企業でありますA社の3者でパネルをデベロップしてくださいということで、ちょうど今、動いているところである。

委員長: では、よろしいか。質問がなければ、(質疑は)終了する。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 特に問題ないと思う。臨床での研究に期待したいと思う。それでは挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2019–072
「HLAホモiPS細胞由来心臓系列細胞及び細胞構造物を用いた心臓再生医療のための前臨床研究」
研究実施責任者:網膜再生医療研究開発プロジェクト 升本 英利

【概要】
 研究実施責任者の升本研究員より、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、特に問題はないとされ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり
★ 実際に運ぶものは、シートになってから運ぶのか。

説明者: そうである。

★ それは何に入っているか。

説明者: それは運搬用のディッシュ様の容器になる。

★ ディッシュの中に培養液が入って、そこに浮かんだ状態で運ぶということか。

説明者: 浮かんで、それを固定するような形になっている。

★ 実際のシートはどのぐらいの大きさなのか。

説明者: 直径4cm程度のものになる。

★ 要するに、これでうまくいったら、そのまま運んで、すぐに移植というイメージを考えているわけか。

説明者: そうである。最終的に製品化するに当たってはそのようにしたいので、まずその予備検討というか、そういったことをしたいという状況である。

委員長: 少し先の話になるが、どのくらいの時期に臨床研究をしたいのか。

説明者: 臨床研究自体は、これとは直接関係ないのだが、○○大学病院の方で予定しており、それはそんなに遠からずだと思う。この前臨床はむしろ治験というか、製品化も含めたところになるので、それはもう少し先かなというところで、ちょっと明確に言いにくい。

★ この**株式会社はどういった会社であるのか。

説明者: 私の前のラボのボスがファウンダーとして設立したベンチャー企業である。その**株式会社でセル・プロセッシング・センターを有しているので、臨床用の製品を作って、それをA大学に持っていくという流れになる。

委員長: **のCPCはどこにあるのか。

説明者: ○市にある。

委員長: では、そこからAに持っていくと。

説明者: そうである。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: これもほとんど問題ないと思う。目的もはっきりしている。よろしければ、挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

3)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2019–078
「眼疾患における眼底所見の自動解析方法の開発」
研究実施責任者:バイオコンピューティング研究チーム 高橋 恒一

【概要】
 研究実施責任者の高橋チームリーダー及び神田研究員より、新規研究計画の内容に沿って説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿った形でオプトアウトが行われていないのではとの指摘があったため、当該研究計画の内容を示したオプトアウトの手続きを行う必要があるという意見があった件を共同研究機関に伝え、考え方の確認を行うことという条件付きで適正と判断するとされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: これは大きな意味でAIの研究と言ってもいいのか。

説明者: その中で画像解析という分野があり、その部分に当たると思う。

★ 今回のプロジェクトの中には、誤診断をしたときに、それはなぜかを探求することも入っているのか。

説明者: 入っていない。あくまで共同研究先の医師が判断した内容を教師データとして使って、それと同じような判断をするモデルをまずは立てるということになる。

★ 眼底画像というものは、素人には判断できないような画像か。

説明者: 明らかに判断できる部分もあるけれども、結構微妙なものも含まれている。

委員長: 医師でも初心者、熟練でないと分からないような世界なのか。

説明者: そういうものもある。

★ 応用としては、熟練していないような医師でも、その判断を助けることができるというか、そういうものか。

説明者: さらに専門性が求められる判断は現場では生じてくると思うが、ベースラインとしては使えるかと思う。

委員長: 画像というのは、よく目で個人認証をするなどと言っているが、それとは違うものなのか。

説明者: 虹彩認証とは違う。画像の取得方法が違う。

委員長: 個人同定はどれぐらいできるのか。

説明者: 血管の形に関しても、個人で時間によって変わってくる可能性もあるというか、固定されているものではないので、ある時点でこの人だと判断するのは現時点ではかなり難しいのではないかと。

委員長: なるほど。虹彩のパターンとはだいぶ違うということで。

説明者: 違うという認識である。

★ 3ページの「募集方法」のところで、この研究が「介入を伴わない既存試料を用いた後ろ向き観察研究であるため、同意の取得が困難である」とある。後ろ向き観察研究であるから同意取得が困難というのは、そういうわけではなくて、そういう観察研究で同意取得が事実上困難であるため、指針では同意を個人から直接取らなくてもよいという形になっているので、ここは「あるため」という因果関係のやり方ではなくて順接で「あり、」とした方が、理解としては正しいかと思う。

説明者: 修正する。

★ これは院内掲示なり、ウェブサイトなりに載るのか?

委員長: その掲示がこれなので。

★ これは一般論が書いてあると思うが、通常は研究利用する場合には「こういう研究をやっています。この研究に診療に関わるような情報をご提供いただきたい」ということを一件一件提示する必要がある。それがオプトアウト方式の同意の在り方なので、多分、**センター病院は幾つかやっておられると思うのだけれども、どのように出されているのか。

説明者: **センターの中にも研究部門があり、さまざまな研究を行っている中で、これは一般的にということで掲示されるのだと思う。確かにその掲示のされ方、それから私の方でも厚生労働省の倫理指針(人を対象とする医学系研究に関する倫理指針)を確認して、その中でもこの六つの項目が求められている中で、抜けているものもあるが、この研究に関しては**センター病院の方で既にIRBの審査が済んでいるということで、こちらでの申請に続いている状況である。

委員長: 今、おっしゃった六つの点を通知・公開しなさいというところをやっているかどうかは確認されていないのか。

説明者: これで確認というか、所定の手続き・申請が済んでいるということで。

★ 3ページの「対象と人数」について伺うが、「その他」に「眼底疾患を有する者と眼底疾患を有さない者合計で2000例」とあるが、これは2000人ということか。眼が一対だとしたら。

説明者: われわれは匿名化されている情報を手に入れるので、そのペアが本当にペアかどうかは、われわれには分からない。

委員長: 厳密には分からないと。

説明者: そうである。疾患に関しても、両眼に疾患を有する人や、片眼だけに疾患を有する人がいらっしゃるので、本当にペアになっているのかということは、われわれの方では関知できない状態である。

★ その場合、ペアが含まれていることで、解析する上で重みが付いてしまうということはないのか。

説明者: 機械学習のモデル自体が右眼なのか、左眼なのかということが、分類のパラメータとしてデータに含まれていますので、その辺も含めて学習してしまうということはあり得る。ただ、そういったことも含めて学習した上で、こういった今回開発する手法が医療応用において有用なのか、有用ではないのか、あるいはそこに問題があるのならば、問題を同定するということが研究の目的だと理解している。

★ 分かった。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

★ これはやはり当該研究に関する情報がないので。

委員長: 情報がない。オプトアウトとしては、あまりにも漠とし過ぎている。

★ どういう研究の、それこそ研究タイトルなどが明示されていることは最低限必要ではないかと思う。

委員長: **センターの倫理委員会はこれで通ったので。

事務局: 通ったと聞いている。

委員長: われわれとしてはもう少し具体的に研究内容や責任者を出してオプトアウトの手続きをするのが正しいのではないかと考えるということを研究者に伝え、研究者から**センターに聞いていただくと。大きな基本としては、別の倫理審査委員会が承認したものに対してあまり手を出し過ぎることはしないが、これはあまりにもダイレクトにデータそのものの取得に関わるところなので。

★ この**センターというのは非常に研究をなさる大きなところだと認識はしているが、一般にこの病院は研究をする病院と認識してよろしいのか。

委員長: これは神戸市立の△△病院から眼科が飛び出したものである。(△△病院の)眼科は完全に**センターに行き、独立の病院になった。それで、元の病院は○○大学とも組んだりして、非常に有名な研究もやる病院である。そもそもiPSの髙橋先生のものはそこで。

★ そうすると、その臨床の病院というのはいわゆる病院なので、研究を主体と考えない場合には、それだけでは研究機関として認められなくて、基本的には個人情報保護法上は全てオプトインでやらなければいけないので。しかし、これが研究機関と組んで共同研究という形になったときに、それは研究機関として認められるという立て付けになっている。 そうすると、この**センター病院が仮に通常の診療の病院だとすると、理研と組むことによって初めて研究機関として、オプトアウトが認められるという形になる。

委員長: 大きな研究の意義は分かるし、取り扱いはちゃんとしていると思うので、そこのオプトアウトの手続きをしっかりしてもらうことが必要だと思う。軽微な修正ということで承認できると思うが、よろしいか。

事務局: 今のお話をお伝えして、その反応を確認するということにしたい。

委員長: 条件付き承認として、それを全員に回してもらいたい。それでよろしければ、挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

4)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2019–076
「毛髪の性状解析データ等の保管と毛髪診断方法の確立に向けた追加解析研究」
研究実施責任者:器官誘導研究チーム 辻 孝

【概要】
 説明者の室伏氏より、新規研究計画の内容に沿って説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、特に問題はないとされ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 後継法人は**か。

説明者: そこはまだ確定していないところがあり、もしかしたら○○(企業)が中心になるかもしれない。

委員長: 終了する研究の方でどのようなことが続けられていくかはコンソーシアムの中にいた各メンバー次第というところがあるわけか。

説明者: そうである。基本的にはこの3月末で研究を終了して、各社がデータを持ち帰って、各社に合った解析をしていくということになるので、そちらはもう各社で委員会の承認を得て進める。

委員長: 組織としてはある意味、シンプルになるということか。

説明者: 理研のみになる。

委員長: 商業化するわけでもなく、その可能性は探るけれども、現在はいわゆる研究をするということになるか。

説明者: そうである。

★ この(参考資料)下の四角で囲んであるところの「高度化」ということの意味と、最終行にある「共同研究による研究の高度化」は何を意図されておられるのか。

説明者: 医療機関との連携というのは、今までアンケートでしたら百何問と回答していただいて、疾患患者さんの組成分析データの比較をしている。今度、そのデータが出てきたら、医療機関の先生と相談しながら、この設問は要らないのではないか、この組成は関係ないので今後の解析では省いていいのではないかといったことや、この疾患は毛髪診断で見えそうか、見えなさそうかを議論し、さらに検体を採って、もっと深掘りしていきましょうという話になるようであれば、また新たに倫理審査をお願いして発展させたいというのが、「高度化」の意味合いになる。
 下の企業との共同研究も一緒でして、今回得られた研究データから何か面白そうな知見が見えたときに興味を持ってくださる企業がいらした場合には、そこでまた話が発展するようであれば、再度、倫理審査をお願いしてと考えている。

★ 分かった。

★ コンソーシアムを解散するから、(データが)あちこちに出ていくということで、そこでけしからぬことが起きたとしたら、これは誰がどうやって責任を取るのか。

説明者: その後(4月以降)は各社になる。各社がそれぞれの責任でそれぞれの委員会を開いて、実施内容を決めてやっていくので、契約上はもう3月で終わりである。

★ 契約は終わっても、理研を中心にして集めてきた研究用のデータがあるわけで。もう解散したから理研は知らないというわけにはいかないのでは。

委員長: 多分、その問題はありとあらゆる共同研究に言えることで。共同研究契約で全て縛っているはずで、持っていった試料をどう使うかということは、いい加減なことにならないように基本的に入っている。

説明者: ICの範囲内でというところがまず大前提にあるので、そこから逸脱するようなことはしないという前提で企業は持ち帰っているという形である。

委員長: そこは端的に言うと、チームおよび理研の契約担当の方で、今回、コンソーシアムが解散するので、そういう変なことが起こらないように、元の同意に対してしっかりとやる、それから変な情報・サンプルの使い方をしないということをもう一回、念を押して見ておくことが大事なのではないかと思う。

説明者: 承知した。

★ 保管はこのコンソーシアムが今、メインで持っているのか。

説明者: そうである。今は解析の関係上、毛髪診断コンソーシアムの解析を担当している企業の研究所、○○のところにある。

★ そこに全部あって、一部、分析に使用したものが理研にあるのか。

説明者: そうである。組成分析の過程で一部、フリーズストックしているものなどがある。

★ 「後継団体が保管しているものを移管して受け入れる場合がある」とあるが、どのように誰が管理するであろうということになっているのか。

説明者: 確定していないが、現在のところ、このコンソーシアムの幹事法人をやっていた○○が筆頭になって後継の団体をつくろうとしているので、○○が基本的には検体の管理などを主体的にやると。それで、恐らくこれの切り替えの契約の中で、その検体を外に出す場合はどのようにするのかということが文言に落とし込まれると思うので、そこの文案が上がってきたときに、理研としても「このようにしてください」と意見を言うタイミングはあると思うから、先ほどおっしゃっていた取り扱い方について、定義が不明確なようであれば、明確にしようと思う。

委員長: つまり、今、言われた3社と今回の理研のこれで、その範囲に生検体は全て集約されるのか。

説明者: 収まると考えている。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: **委員の懸念は大変重要で、今やっているものが散逸して、いい加減なことが起こらないようにしないといけないということは、まず押さえてよかったと思う。それで、今回の研究は、髪の毛でこのようなことが分かるということがまだ分かっていないのでやるということのようなので、やらせてあげるべきかと思う。これはよろしいか。研究自体は粛々とやるということで、計画自体は問題ないかと思うから、よろしければ、挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

5)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2019–054
「皮膚疾患の解析と皮膚再生医療に向けた基盤技術の開発」
研究実施責任者:器官誘導研究チーム 辻 孝

【概要】
 説明者の武尾研究員より、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、特に問題はないとされ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: この病気はどのぐらい珍しいものなのか。

説明者: 難治性疾患の認定を受けている。

委員長: これは、BRCと組むということか。

説明者: そうである。

★ 生着させて、ケロイドが発症するまで待つのか。

説明者: そうである。

★ そのケロイドが発症する確率というか、頻度がどれぐらいのものなのかということが分からないと、その実験がうまくいくかどうかは分からないのではないかと思った。ケロイドがすごく発症する患者さんといっても、恐らく全身ですぐに発症するわけではなく、何かトリガーがあって発症するものだと想像するのだが、その辺のバックグラウンドで分かっていることはあるのか。

説明者: 切り傷であったり、持続的な圧迫があったりする場合に、ケロイドが発症しやすいということがある。

★ マウスで生着させて、そこで何かストレスを加えることでケロイドを誘導するということか。

説明者: そうである。

★ 健常者のiPSだったら、いくら傷付けてもケロイドにならないのか。

説明者: 必ず発症するというわけではないので、今回は発症しやすい疾患iPSを使って。

委員長: コントロール実験をやっておかないといけないかもしれない。

説明者: そうである。健常者の方からのiPSと一緒にコントロール実験を予定している。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: こういう分野もあるということで、細胞自体はBRCがしっかり管理して、元のインフォームドコンセントなどもしっかり取られているものをもらってくるということなので、大きな問題はないはずで。そういうことで、よいと思うが、よろしいか。

―全員挙手―

 

6)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2019–075
「爪器官および指器官系の再生医療に向けた基盤研究」
研究実施責任者:器官誘導研究チーム 武尾 真

【概要】
 研究実施責任者の武尾研究員より、新規研究計画の内容に沿って説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、代諾者に向けた説明文書があると考えられるので共同研究機関に確認すること、また計画申請書中の記載内容について適切な表現に修正すること、という条件が付され、条件付きで適正と判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: (この研究は)世界的にもあまりやっていないのか。

説明者: 世界的にもほとんどやっていない。マウスでやっているところが2チームぐらい、海外にある程度である。

★ 先天的な指欠損や爪欠損というのは、どれぐらいの割合で発生するのか。そんなに多くはないのか。

説明者: 正確な数は持っていないが、逆に指が多い、多指の方は**病院の場合は年間200症例ぐらいあるらしい。いろいろな先生方に聞いてみると、やはり指の有無というのは命にかかわるようなものではないので、実際に来院される方も恐らく数が限られているだろうと。ですから、正確な発症数は恐らく分からない。ただ、多指症と同じぐらいの発生頻度ということであれば、恐らく一つの病院で200件で、○○大の場合でも年間30例ぐらいは手術をしていらっしゃるということですので、それほど低い割合ではないと思う。

委員長: これは未成年が40名、全体が50名、成人が10名ということで、未成年の年齢は?

説明者: これは2歳以下を想定している。というのも、多指症の場合は1歳以下で(手術を)行うことがほとんどらしいので。

委員長: では、この説明文書は大人向けに。

説明者: 作っている。

委員長: これは「あなたが受けられる手術では」などとなっている。

説明者: 確かに本人向けの文言になっている。

委員長: これは整理して、改訂ぐらいは考えていただかないと。

説明者: おっしゃるとおりである。

委員長: 子どもなら1歳以下で、成人10名は?

説明者: 特に年齢層は想定していない。

委員長: それは多指ではなくて?

説明者: 多指ではなくて、陥入爪や外傷を想定している。

★ 書き方の問題なのかもしれないが、「代諾/賛意」のところで、「本人の意思/賛意を確認するための考え方・方法」の2行目で「社会通念上になんら問題が無い」と書いてあるのが。ここはちょっと書き過ぎかなというところがあり、そこまでは書かなくてもよろしいかなと思う。「父母の判断にて行われる。」でよろしいのではないかと思う。

説明者: 承知した。

委員長: いわゆる医療倫理としては案外、大事なところである。

説明者: ここは一応、手術のICではなくて試料提供のICになるので、手術するか、しないかは別に医療機関の方での代諾というか・・・。

委員長: だが、この文章は「切除術は常識的に自己判断能力を満たさない幼児期に本人の意思によらず父母の判断にて」ということで、これはまるで手術のICに読める。別なら別と書いていただかないといけない。

説明者: 承知した。

委員長: 手術することが決まったときに廃棄される予定のものについて、自由意思で提供の打診をするわけか。

説明者: そうである。

委員長: ちょっと整理が要るかと思う。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: その代諾のところの計画書自体と説明同意文書について病院の方に問い合わせてもらって。

事務局: 対象がお子さんなのに「あなた」はおかしいのではないかなど、そういうことでよろしいか。

委員長: そうである。代諾者への説明になるようにということである。それから、手術の同意と別の試料提供の同意だということなので、それが反映されるように計画書の方も、説明文書の方も見直していただきたいと思う。
 これは事務局と私で確認したいと思う。条件付きということでよろしいか。では、挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

7)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2019–055
「ヒト多発性嚢胞腎特異的iPS細胞を用いた病態の再現に関する研究」
研究実施責任者:ヒト器官形成研究チーム 髙里 実

【概要】
 研究実施責任者の髙里チームリーダーより、新規研究計画の内容に沿って説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、特に問題はないとされ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ これは遺伝子治療という方向に行こうという想定か?

説明者: 遺伝子治療に関しては、最終的にはCRISPR-Casを使って**遺伝子を修復したときに治るかということも実験系では検討できるが、実際の患者さんに対して適用するのはなかなか難しいところがある。今回は、遺伝子治療による根治治療というよりは嚢胞が大きくならないように遅らせる療法など、そういう対症療法に使うような薬の開発を想定している。

委員長: どれぐらいの年齢で嚢胞が異常になってくるのか。

説明者: 大体10代後半からできはじめて。40代に入る前に多くの方が透析に移行する。ただ、そういう意味では、われわれの系は3週間ぐらいで作るので、そういう意味でも、なるべくオルガノイドを使って短期間に嚢胞を作らせるような研究開発も同時に進めている。

委員長: そもそも以前からやっておられる正常のオルガノイドも、それなりに早くできるのか。

説明者: そうである。これは3週間培養すると、人間の15週目ぐらいの腎臓に相当すると今、考えており、そういう意味ではvitroでやると、なぜかスピードアップする。それが良いことか、悪いことかというのは別として、本当だったら10年かけるものをスピードアップしていいのかどうかという話はあるが、使う側としては非常に便利な方法にはなる。

★ 早くなるメカニズムは分かっているか。

説明者: 一切、分かっていない。

委員長: 細胞自体はBRCから来ているので、信頼できるものだと思う。

★ この延長線上に嚢胞腎ができたとする。うまくできたら、そこにさらに今度は先生がお持ちの正常なiPS細胞をそこに載せて・・・。

説明者: それがどうなるかは興味深いところである。

★ 嚢胞腎の上に載せるとか、そういうこともあるわけか。

説明者: 例えば正常な腎臓から出ているような液性因子なりがよく働くかもしれないし、逆にそういう元気なものが悪性化させてしまうかもしれないので、それはやってみないと分からないが、取りあえずわれわれの方向としては、もうきちんと嚢胞を抑えると知られている薬剤をまず試してみて、実際に抑えるかを見たい。その後は例えば製薬会社と協力して、新しい薬剤を開発するということを考えている。

委員長: そういうものができると、いかにも理研らしくて、ちゃんとバイオロジーがあってやっている感じである。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 特に問題ないと思うが、よろしいか。では、挙手をお願いする。

―全員挙手―

  その他
 

事務局: 皆さんの任期が、この3月末ということで、(4月以降も)引き続きお願いさせていただけたらと思うが、よろしいか。

委員長: よろしいか。では、そういうことで。

 

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