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No72

第72回 神戸事業所 研究倫理第一委員会 議事要旨

1. 日時:令和元年12月17日(火)15:00~17:20
2. 場所:理化学研究所 神戸地区 発生再生研究棟A 2階 大会議室
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
野崎 亜紀子 委員 (京都薬科大学基礎科学系一般教育分野 教授)
林 知里 委員 (兵庫県立大学地域ケア開発研究所地域ケア実践研究部門 教授)
北島 智也 委員 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)
濱田 博司 委員 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム チームリーダー)

(説明者)

神田 元紀 (生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 研究員)
髙里 実 (生命機能科学研究センター ヒト器官形成研究チーム チームリーダー)
松本 桂彦 (生命機能科学研究センター 合成生物学研究チーム 研究員)

(オブザーバー)

小川 壮 (神戸事業所長)

(事務局)

吉識 肇 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)
高橋 一樹 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)平成30年度研究実施報告について
(2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規・変更)
(3)その他

5. 報告事項
 

(1) 平成30年度研究実施報告について
事務局より、平成30年度中に実施された研究計画等に係る研究実施報告について、報告資料に基づき説明があった。
また、研究計画1課題において試料提供済みの研究参加者から同意の撤回が1件あり、試料及びデータを保管している各機関において廃棄が適切に行われたことをゲノム実地調査でも確認されたと報告があった。

6. 審議事項
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2018-024
「ロボットとAIを用いた次世代型細胞培養の基盤技術開発」
研究実施責任者:BDR 網膜再生医療研究開発プロジェクト 砂川 玄志

【概要】
 説明者の神田研究員より、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

説明者: ロボットが培養した細胞株について、いろいろな検査手法を使って、その中の一つとしてトランスクリプトーム解析を用いて、人が作ったものとロボットが作ったものはどちらが良いのか、どれぐらい良いのかを評価しようとしている。

委員長: AIが見るのは、●●や○○のデータなのか。

説明者: そうである。

委員長: それはうまくいきはじめているのか。

説明者: ●●については、ほとんどきちんとできている。

委員長: RNA-seqは個人識別符号になる・ならないの議論があったが、ならないということで?

説明者: ならないという理解である。

委員長: 了解した。では、他に質問がなければ審査に移る。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。
委員長: 最後に押さえを入れたが、RNA-seqでmRNAから出てくる塩基配列情報は個人識別符号という個人情報にならないということを個人情報保護委員会が表明しているということで、今回は個人情報を出すわけではないと。検査、分析を外注して、しかも契約書をちゃんと交わすということである。
 何か気になるところはあるか。

★ 契約書の内容についてはこれで大丈夫か。

委員長: これは理研のひな型なのか。

事務局: 理研のひな型ではない。

委員長: これは当然、理研の産学連携の担当がチェックするということになるのか。

事務局: そうである。

委員長: では、適切かどうかは、事務局に確認していただくことにしたい。

委員長: よろしいか。では、オーケーの方は挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

2)ヒトES細胞使用計画変更に関わる審査(新規)
受付番号:K2019-045
「ヒトES細胞から尿路系組織を作成する研究」
研究実施責任者:BDR ヒト器官形成研究チーム 髙里 実

【概要】
 研究実施責任者の髙里チームリーダーより、本研究計画の項目に沿って説明があり、質疑応答が行われた。その後、審議が行なわれ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 今までES細胞についてどのようなご経験があるかということ、教育研修について研究チームの方も含めてどのような計画をされているかということ、もう一つは細胞の取り扱いについてご説明いただきたい。

説明者: 私は2008年に*大学にいたときからヒトES細胞の扱いがあって、その後、2009年からオーストラリアに7年間、そこでもヒトのES細胞とiPS細胞の両方を使って腎臓を作るという研究をしていた。もう10年ほどES細胞を使っている経験があるということになる。

委員長: 理解した。

説明者: 講習会については、当時の*大学での講習会および理化学研究所に移った後に人倫理に関する講習会を複数受けている。われわれのラボメンバーに関しては、今のところ、iPS細胞しか使った経験はないが、基本的に手技はもう全く同じものとして扱えると考えている。

委員長: 8ページに研修計画があるが、これはラボの方も受けられるのか。

説明者: そうである。われわれのラボの人間はiPS細胞しか使ったことがないので、もしこの承認が下りたら、こういうES細胞を取り扱うのに必要な注意点、研修等を私が施すということになる。

委員長: では、その細胞の管理は。

説明者: 管理については主に11ページの**という部屋で細胞を使う。細胞のストックとしては、その向かいの中央にある**という部屋にある-80℃のフリーザー。**のフリーザーと液体窒素タンクで、これはどちらも鍵を掛けることができて、これで保存するということになっている。その向かいの**という部屋にはオートクレーブがある。もう一名もここ(研究計画)に一緒に入っているが、**での使用を予定されている。ここにもそれぞれインキュベータとES細胞を培養する装置、そしてその前室の**にはオートクレーブと液体窒素(保存用)があって、16ページのとおりである。

委員長: 理解した。

説明者: 最後に、元々、昔の指針でES細胞を厳密にタンクごと分ける必要があるということがあったので、18ページに書いているように**という部屋にディープフリーザーとES細胞専用の保管庫がある。

委員長: 今は分けなくていいけれども、昔は分けていたから、そのまま使っているというか。

説明者: そうである。昔から使っているES細胞は既に保管されている。われわれもそれを使わせていただこうという計画である。

★ 最近、A大病院で受精卵を紛失してしまって訴えられた事例が出てしまった。相当厳格に管理していたつもりでも、やはりどこかでいろいろな齟齬が起こって、臨床の現場でさえ起こっているわけであるから、研究の現場でも、そういうことをどうにかして防ごうという努力が要るような気がする。何かうまい考えはあるか。

説明者: 個人的な考えであるが、例えば記録を電子化するとか、入退室記録も全部カードで記録しておくとか、人の卵子などを扱う場合だと、より厳密な形でそういうことがあると、管理しやすいのかなと思う。

★ 普段からいつも研究室内で情報共有し、ONE TEAMでしっかりと大事な試料を使っているのだという意識をみんなでかき立ててやっていただくことが大事ではないかと思うので、ぜひその辺は頑張っていただきたい。

説明者: 承知した。

委員長: このES細胞のストックはどなたが管理して、どういうグループが使っているのかというのは?この理研のこのセンター全体では、今、使っている人がいるわけで。(どこのグループか)ご存じなのか。

説明者: ○○研などが使われているのでは。

事務局: (現在は)○○研のみである。多分、使う分だけを最初に分与してもらって、あとはもう自分の(研究室の)中で管理されるのだと思う。

★ これはiPS細胞ではできなくて、やはりES細胞でやりたいと。

説明者: どうしてもES細胞でなければいけない理由は、iPS細胞が本当に人間の体細胞と同じなのか、embryoの細胞と同じなのかという証明がまだ誰もできていないので。実際にエピゲノムというのですが、ゲノムを修飾しているようなタンパク質等の発現を見ると、ES細胞とは若干違うということが分かっているので、本当にiPS細胞が人間の体で使えるような臓器になるかということはまだ証明されていない。そういう意味では、ES細胞を使う方がより安全であると言える。
遺伝性の病気を持っている患者さんからiPS細胞を作るというのはiPS細胞の一つの大きなメリットなのだが、日本でもiPS細胞だけではなくてES細胞も同時にやる必要があると私は常々思っている。

委員長: この研究はマウスでin vivo、要するにまだ実験段階のところまでしかいかないと。

説明者: そうである。

委員長: 臨床用も含めたES細胞と書いてあるが。

説明者: これは臨床用にも使えるグレードのES細胞を分与してもらって使うという計画になっているが、実際に臨床にはまだ使わない。

★ 研究の計画に関して、この使用計画というのは何人規模で、どういった役割分担でお仕事がなされることになるのか。

説明者: 僕らの場合ですと、これを全部一人で作るわけではなくて、膀胱を作る人、尿路を作る人、腎臓を作る人に分けた3チームでやっている。それぞれのチームが大体1人から2人ぐらいの規模なので、トータルだと5、6人の規模という感じで、三つのプロジェクトを一つにまとめて尿路系という形を作るということをやっている。

★ 先ほどおっしゃったKさんは。

説明者: このゲノム編集の部分を非常に得意とされている先生なので、ベクターを作り、細胞に導入して、ES細胞が出てきたときにそれをピックアップするという操作の部分を主に頼んで、やっていただきたいと考えている。

★ 今度はテクニカルな話で、最後のところのマウスを使ってやるというのは同所性にやってみるということか。

説明者: これは面白いのだが、通常、最初にマウスの腎臓の被膜下に移植することができて、それでちゃんと血管がオルガノイドに入ってきて、オルガノイドの糸球体まで血管が相当上がってくる。実は同所性でなくても、いわゆる腹膜や大網など、いろいろなところに移植したことがあるが、どこに移植しても、ちゃんと血管が入ってきて生体の循環系とつながるということが分かっている。

委員長: それはマウス-マウスか。

説明者: いえ、ヒトのiPS細胞をマウスに移植したものである。

委員長: もうそこまで行っているのか。

説明者: そうである。iPS細胞では、この三つはできているが、それを一つに組み合わせて一体的な尿路系にするところはまだできていない。まず腎臓だけを作って、腎臓だけを移植するとつながるというところまでは見えている。

委員長: より理解が深まりまった。他にもしご質問がなければ、質疑を終わる。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 最初に確認したチェックリストに当たるところは全て話題にできたと私は見ているが、よろしいか。その他、研究の中身もかなり具体的に分かり、iPS細胞で進んでいることも分かったので、かなり期待できる研究かと思う。

★ 研究計画書の作り方の一般論としてどういうものが正しいのか、いまひとつ分からないところもあるが、研究者の規模とか、どのような人がそのチームに入って研究するのかということが(研究計画書からは)分からない。誰が何を担って、どういう責任で、どのような役職・職位で、どのような専門性がある人がやるのかということを審査するのが通常の研究計画の審査だと思う。

委員長: ES細胞を使う研究というのは使うこと自体にものすごく倫理的問題があるわけではなくて、作るところはものすごく問題があるのですけれども、われわれは多分、ES細胞の利用に関して、どのようなチームが本当に責任を持ってということを見るところまでは(審査は)要らないのではないかと、僕は思う。

★ これはES細胞だからと不必要に複雑にする必要は全然ないのですけれども、例えば遺伝子組換え計画書だったら、大学だと、関係する人・使う人の全員の名前が出て、何年間の経験があるかというのをちゃんとやる。それがないのは、確かに僕も違和感はある。

委員長: これは理研として様式を作ったときはどういう議論をしたのか。

事務局: ESについては国の様式を用いて審査をしているので、今回はこれで審議させていただいている状況で。以前は確か、そこには関係者の名前は入っていた。実施者についても経歴など、すごく細かいものまで求めて、確かに記載はされていたと思う。

★ 特に研修を受けなければいけないということになっているので、どのような研修をどうやって受けたかというのは、ものすごく厳しくやった。

委員長: 今は研究者の届け出も要らなくなったのか。

事務局: 国に対しては。ただ、理研の中では、誰が参加するかというのは把握している。

委員長: どうやって把握しているのか。

事務局: この計画に対して、従事者の届け出というものを別に出していただいている。ES細胞についてはそういう形で、人倫理の一般的な方ですけれども、昔は申請書に付けていたが、あまりに人の登録・削除が激しいので、別に分けて届け出という形にさせていただいている。それは研究倫理協議会というこの上の委員会があって、そこで議論していただいて、そういう形でご承認いただいた。

委員長: 多分、事務的な話なのである。(従事者の届けを申請書に)入れた瞬間にそれをチェックするという仕事が入ってきて、もうやめましょうということで、理研全体で決まった。

★ ここの研究室のこういう人が何人ぐらいでこの実験をしているということが見えた方がやはりよくて、恐らく審査のときも委員の皆さんがそういうことを質問されていると思う。

事務局: 説明者の先生にそこは説明していただくという形でやらせていただくのでは駄目か。

★ 何人ぐらいという規模感で、具体的な名前までは必要ないと思う。

委員長: では、当面はそれでやらせていただいて、また良い形を探っていきたいと思う。では、今のES細胞の審査に関しては、チームの構成も分かったので、また、いろいろ準備もできているということで、よろしければ、挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

3)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2019-043
「三次元イメージング技術を用いた病理組織診断の標準化」
研究実施責任者:BDR 合成生物学研究チーム 上田 泰己

【概要】
 説明者の松本研究員より、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 病理組織診断なのだが、それを透明化することでより良く、しかもスピードアップもできるのか。

説明者: そうである。

委員長: 今はどこまで、丸ごとの臓器ではなくて断片でうまくいっているのか。

説明者: リンパ節や小さなところ、胃の組織など、そういったものはうまくいっていて、ちゃんとがんが見えるようなものにはなっている。

★ こちらの試料というのはA大病院、A大の病理学教室で・・・。移動のことがよく分かっていないので。

説明者: A大附属病院からサンプルを採ったものが病態病理学教室に来て、こちらで透明化等を基本的にはして、一部、染色などで場合によってはB大学の方に協力してもらって、それらが理研に来て、理研で撮影する。

★ C病院は外れるとして、この全体が共同研究という形の体制になっているわけか。

説明者: そうである。

★ それで、こちらの最後に付いている「病理解剖についての説明書」、こちらは共通して使われている説明書なのかということが1点。ここに書いてあるのは、この試料、標本は「当病院およびA大学にて責任を持って保存させていただきます」とあるが、物自体はB大や理研に来た上でいろいろな研究をされるということになっている。

説明者: 研究して、撮影後、すぐにまたサンプルはA大に返却して、基本的には理研には置かないということである。

★ 「当病院」なので、これは恐らく附属病院とA大で保存されるということで、理研に保存されるわけではなく、また、B大に保存されるわけでもないと理解してよろしいか。

説明者: そうである。

委員長: 理研に一時保存するというのが今回新しく来ているけれども、元々全部、A大にしかない形で。

説明者: A大に保存で、撮影のときだけ来る。

委員長: 透明化して測ったら、すぐに戻ってくるということのようであるが、大丈夫か。

★ 承知した。ここに細やかな物の移動のことまで書く必要はないと思うが、この説明書と物の移動との関係がどうなっているのだろうかと。

委員長: これは一般的な説明書で、この研究のためのものではない。

★ それはそれでよいということか。

委員長: 確か私の理解では、それと二つ前のこれがオプトアウトで、拒否される方はオプトアウトされると、この研究には使いませんということで、セットで来たのだと思う。

★ 理解した。

委員長: 他にご質問は。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: この透明化の技術はかなり有名で、私自身はどこまでこれがいろいろなことに使えているのかまでは把握できていないが、これがその一つかと思う。リンパ節が見えたとか、がんが部分的な組織で透明にしたら見えるというのは結構すごいのではないかと思う。
 研究指針の審査としては、今、元々どういうものだったかということも確認したので、三つの変更点はよろしいか。病院が一つなくなること、腎臓に関しては丸ごとの臓器も使いたいということ、試料・データを理研が少しだけ保管するということである。必要な期間だけ保存するということで。問題がなければ、これはこれで大丈夫ということで、挙手をお願いする。

―挙手―

委員長: 様式の話や研究者のリストの話など、いろいろできたので、よかったと思う。

 

  その他
 

委員長より、ヒトを対象としたゲノム編集研究に伴う倫理的・法的・社会的課題等の現状と今後について話題提供があった。

 

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