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No76

第76回 神戸事業所 研究倫理第一委員会 議事要旨

1. 日時:令和2年10月15日(木)14:00~16:23
2. 場所:Web会議方式による
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
野崎 亜紀子 委員 (京都薬科大学基礎科学系一般教育分野 教授)
林 知里 委員 (兵庫県立大学地域ケア開発研究所 地域ケア実践研究部門 教授)
北島 智也 委員 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)
濱田 博司 委員 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム チームリーダー)

(説明者)

升本 英利 (生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 上級研究員)
北島 智也 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)
坂口 秀哉 (生命機能科学研究センター 理研BDR-大塚製薬連携センター 上級研究員)
宮西 正憲 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム 上級研究員)
松本 桂彦 (生命機能科学研究センター 合成生物学研究チーム 研究員)

(事務局)

吉識 肇 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
高橋 一樹 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)人を対象とする研究計画の変更申請に関する承認について
(2)令和元年度研究実施報告書について
(3)人を対象とする研究計画に関する審査(新規・変更)
(4)その他

5. 報告事項
 

1)人を対象とする研究計画の変更申請に関する承認について
事務局より、第75回委員会から本委員会までの期間に迅速審査及び委員会に諮らず承認の手続きを執った研究計画の変更申請(2件)について報告があった。

2)令和元年度研究実施報告書について
事務局より、令和元年度の研究実施報告について説明があり、研究の実施に於いて特に問題がなかったことを確認した。

6. 審議事項
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2020-031
「心疾患特異的iPS細胞を用いた病態再現および治療に関する研究」
研究実施責任者:BDR 網膜再生医療研究開発プロジェクト 升本 英利

【概要】
研究実施責任者の升本研究員より新規研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、特に問題はないとされ、適正であると判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 赤字の1から10は別の株なのか。

説明者: これは別の株である。

委員長: そのうちのどれをお使いになるのか。

説明者: 1番を使おうと思っている。

委員長: 創薬研究として、1株だけで大丈夫なのか。

説明者: そこが微妙なところではある。これはBRCの方で準備するのがそれなりに大変であるらしく、10株あるが、それを配布できるようにするために増やして準備するのが結構大変で、取りあえず1株でやってみるのが現実的だというところがあったので、1株としている。

委員長: なるほど。では、もしかすると近い将来に準備ができれば、追加することもあり得るということか。

説明者: 可能性はあるかと思う。

委員長: 私からもう一つあるが、先ほどのきれいな図をもう一度見せていただけないか。この委員会はiPSの研究をたくさん審査してきた中でも、このようなことをやるのだと驚くような図であるが、質問としては、健常のiPSないしはマウスのiPSで論文は出ているのか。

説明者: 健常のiPSで、今、リバイズ中である。

委員長: 拍動の圧というのか、それが数値化できることが大事と計画書には書いてあったが、もう一言聞いてみたいというか、どのようなことが測れるのか。これはあくまで科学的な話であるが、研究が何かを理解できないと倫理審査はできないので、完全でなくても大ざっぱにつかみたいという趣旨の質問である。

説明者: それ用の資料は準備していなかったので、口頭で説明するが、拍動に応じて流路の中のパーティクルが動く。この動き方のスピードや量を見るのだが、その際に同時に電気刺激をこれに与えて、電気刺激に対する反応性、つまりパーティクルの動きがどのように変わってくるのかを計算することができる。そのパターンによって、実際にどの程度の力が図で言うところのDiaphragm layerに掛かるかを計算できる。そこからは計算になるが、実際にDiaphragm layerを押した量、要するに距離から、この流路内のどれだけの体積の液を動かしたかという計算ができて、そこから圧を計算できて、さらに力が計算できるというシステムになる。

委員長 すごい。

★ 素晴らしい。私も退官する前はマウスでこのようなことをしていたが、そのときはこんなにうまく収縮力を見る術がなくて、画像で拍動、大きさを見たりして、ささやかな論文を作った。そこから実際に拍動力をどうしようかということで、そのときも相談したが、良いアイデアがなかった。これは素晴らしいアイデアで、こういうものが進むと、良いお薬ができると思う。
 私の知っている限りではこのような精緻な機械はまだ開発されていないので、ぜひとも頑張って良い成果をうまく出していただきたいという印象を持った。

委員長: この測定するというのは世界で初めてということになるのか。

説明者: そうである。少なくともヒトiPSを使ってこれをやったのは初めてである。

委員長: では、質疑はこれで終わりたいと思うが、よろしいか。これから審議に入る。

―説明者退席後、審査が行われた―

委員長: 本当に理研らしい、世界の最先端を走る、しかもそれを創薬につなげるというものである。1株という問題はあるが、後に増やされるかもしれないし、これは問題ないということで、承認でよろしければ、挙手をお願いする。

―全員挙手―

委員長: 全員に賛成いただいたということで承認とする。

 

2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2020-030
「ヒト胚の発育不全の原因の解明:ヒト受精卵の染色体を構成するタンパクの修飾レベルの観察」
研究実施責任者:BDR 染色体分配研究チーム 北島 智也

【概要】
研究実施責任者の北島チームリーダーより新規研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、受精卵の研究利用への同意を得る過程について議論になった。また、説明文書の意義や目的についての記載が専門的な用語のため分かり難いとの指摘があった。研究実施を前提とした同意取得となっていないか等を共同研究機関に確認すること、提供される受精卵が何のために使用されるのかが分かるよう申請書等に記述し、説明文書についても適宜検討することとされ、条件を満たした上で適正と判断すると判定された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ よろしいか。特にこうした研究では、共同研究機関の方の問題だとは思うが、不要になったというのはどのようにして不要になったかなど、そういうことは十分に共同研究者としては留意された方がよろしいと思う。ものがものだけに、ただ使わなくなったとか、要らなくなったということではなくて、ご本人たちから「もう廃棄していただいて結構です」と言いだしたものについてやるなど、間違っても「実は研究に使うので、そろそろ廃棄していただけませんか」などということが決してないような体制をぜひとも取っておやりになることを強くお勧めする。一般的な意見であるが。

委員長: 具体的に何をするとそれが保たれるのか、対応できるのかというのはどうしようかなと思い、今、計画書を見たりしていた。

★ インフォームドコンセントの取り方のところの工夫になるのではないかと思う。そういうことに十分に留意する、気を遣うことは大事なのではないかと思う。

委員長: ES細胞のためのヒト受精卵の提供のときには、廃棄の意思を先に示していただいて、示されたものについて研究の話を持ち出すことになっている。私はこの研究にそれが要るとは思っていないが、今、**委員がおっしゃったのはそれに関わる話で、恐らく廃棄されるだろうというものについて研究の話を持ち出すということで、実際にここはどうなのか。余った場合には研究で使うというのが、クリニックの方針なのか。

説明者: 恐らく治療を終了するというときに、患者さんからは何かしらの意思を受け取っているはずで、それを書面で取っているのかということを確認する。

委員長: 一つの案としては、そこで「これはこのような手続きでインフォームドコンセントを得て入手するものである」ということを加えてやるということで、結局、そのタイミングで先ほどの説明文書が出るということになるのではないかと思う。

説明者: 承知した。確認させていただく。

★ 同意書の取得に当たって、妻と夫の両方のサインがあってということで、これはもう同じ場で説明して、2人の同席の下、説明の上で同時に同意書を得る、そのような場があるということか。

説明者: 基本的には、全ての説明は旦那さんと奥さんが同席の上でされると認識している。

★ (夫婦が)そろわないと駄目というルールなのか、片一方でもオーケーなのか。

説明者: この研究に関しては、両方が必要だと意識している。

★12ページのICの「4.研究協力者にもたらされる利益及び不利益」の1行目に「年齢依存的な受精卵の変化の解明を主たる目的とした基礎研究」と出ているが、ちょっと表現が分からない。200名の中で例えば高齢出産というか、卵子提供者の年齢は関わってくるのか。

委員長: これはミスではないか。

説明者: これは年齢依存的な卵子の質に関する研究をしているときのものを下書きにしているので、それが残ってしまっているかもしれない。これは修正させていただく。
 さらにご質問に答えると、この受精卵における今回のわれわれの研究の目的、見たいところというのは、年齢に依存する可能性も十分に考えられるが、今回の研究のスコープには入っていないということになる。ですから、高齢出産の方に関する新しい知見が出てくる可能性は考えられると思っている。

委員長: 1ページ目の「研究の意義及び目的」の最後の2行に「前核のサイズ制御と染色体を構成するタンパク質の修飾レベルの制御」と書いてある。サイズは見たら分かるし、画像を撮ったら分かるのかもしれないが、修飾レベルというのは何か薬を掛けて、それで映像を撮るのか。

説明者: ここでタンパク質の修飾レベルと言っているのは、基本的にはヒストンの修飾のことを想定しており、ヌクレオソームの中にあるヒストンの修飾レベルであるから、抗体で免疫染色して、そのシグナルを測定するということになる。

委員長: これは計画書に書いていたか。

説明者: ヒストンどうのこうのまでは書いていない。ヒストンの修飾レベルが最初に見たいところであるが、他のタンパク質の修飾を見るということも考えられるので、ヒストンと具体的には書かなかった。必要があれば、書きたいと思う。

委員長: なるほど。どうしたらいいのかは分からないが、「卵の中のタンパク質を標識して」とか、そういう言葉が方法のところに入ってきた方が、分かりやすいと思う。つまり、画像を撮るということは分かるが、それでタンパク質のことがどうやって分かるのかなということで、ちょっと理解を遮っていると思った。

説明者: 「研究方法」のところに「抗体で標識する」などと入れたいと思う。

委員長: 説明文書の1ページ、「近年、分子生物学技術の革新により、染色体を構成するタンパクの修飾状況を詳細に観察する」とあるが、私が思ったのは、修飾状況などと言われても、一般の人は全く分からない。また、すぐ下に「メチル化」と書いてあるのが、これも多分、一般の人は分からない。もちろん専門家は分かっているが、(一般向けに)分かりやすくしてもいいのではないかと思う。

説明者: 基本的に受精卵が胚発生するときには遺伝子発現を伴うが、その遺伝子発現を最初の方で規定するものの一つがヒストンの修飾状態と位置付けられているので、何と書けばよろしいか。

委員長: 今、一つ思い付いたのが、「タンパクの化学的な修飾状態を」と書くということで。

説明者: 「胚発生に関わる化学的修飾状態」はいかがか。

委員長: それくらいでいいかと思う。

★ 同意撤回書においても夫と妻の両名記載のところがあったと思うが、撤回書の場合は1人でも、どちらかがノーと言えば、もう認めざるを得ないというか、中止せざるを得ないのではないかと思うが。

説明者: はい、そのように思う。それが原則だと思うので、確認させていただく。

委員長: もし他になければ、そろそろ質疑を終わろうと思う。説明者が退室したら審議に入る。

― 説明者退席後、審査が行われた―

委員長: 幾つか指摘があって、先ほど**先生から指摘があった、どちらかだけでも同意撤回書は出せるという件については、計画書に入れてもらうことができると思うので、当然、それを運用していただいて、あとは私が指摘した本当に小さい2カ所を直していただくということで、委員長確認で、条件付きで進めるということでいきたいと思う。それにご異存がなければ、挙手をお願いしたい。

―全員挙手―

 

3)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:2020-K025
「海馬オルガノイドを用いた脳発生に関わる基礎研究」

 

4)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:2020-K024
「海馬オルガノイドを用いた基礎および精神疾患治療を目指した応用研究」
研究実施責任者:理研BDR-大塚製薬連携センター 坂口 秀哉

【概要】
研究実施責任者の坂口研究員より新規研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。受付番号:2020-K025については特に問題はないとされ、適正と判断された。受付番号:2020-K024については“遺伝性の”という文言について議論があった。遺伝性という文言が適切かを検討し、必要に応じて修正することという条件を満たした上で適正と判断すると判定された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★委員長: ESの方を意識しながら質問するが、3名の研究者がいて、先生以外に2名ということか。

説明者: テクニシャン1人、研究員1人を雇用しようと考えている。

委員長: その方々の研修はもう終わっているのか。それとも、これからか。

説明者: まだ公募をかけているところなので、これからになる。

委員長: では、決まったら、研修を受けていただいてから従事するということで。 委員の方々からはいかがか。

★ 統合失調症というのは、基本的には誰しも、健常だった人が時間をかけてなるもので、発生とはまた違うのかなと思うが、今回のターゲットは先天性のもので、先天性のものは発生自体がおかしいであろうといわれているのか。

説明者: そうである。22q11.2欠失症候群に関しては、統合失調症は予後が良かった例において起こる話で、実際のところ、この疾患ではそんなに長く生存出来ない患者の方が多い。予後良好の生存例の場合で高確率に精神遅滞、学習障害、発達遅滞が見られ、統合失調症様の症状も呈するため、本疾患は先天性の統合失調症を引き起こすと認識されている。そういう意味では、今回の申請における実験では非常に重篤な精神障害をキャプチャーするモデリングになると思う。
 であるが、そのご質問はすごく大事なところで、多くの精神疾患を基にした疾患モデリングというのは、何となく見られる病理像が見られたからモデリングだとか、そのような形ですぐに結び付けてしまうところがあるが、本来はやはり発生を基にしてステップごとにできてくるものなので、私も納得しているのは、誘導したものがよりマチュアになったときに初めて起こるものは本当のものだろうということである。ですから、ここで見られるのはあくまでそういう特殊なケースであって、実際にそういうものをもっと軽症なものに用いたときには、さらにオルガノイドを分散して神経ネットワークをつくるなど、より成熟を図るような措置が必要かと思っている。

★ なるほど。

★ 遺伝性の統合失調症ということだが、その遺伝性という言葉の使い方が正しくないのではないかと思った。先ほど**委員が先天性という言葉に言い換えられたが、私はその言葉を聞いて、そちらの方がどちらかというとまだ受け入れやすいのかなと思ったが、そこはどのようにお考えか。

説明者: 先天性と遺伝性という言葉は確かに難しいが、この遺伝性統合失調症という言葉自体は認識されていると私は思っている。ただ、この疾患に関して言うと、確かに遺伝子の欠失、染色体の欠失なので、確かに先天性と言った方が確かだと思う。

★ 私もそう思う。スポラディックにディリーションが起こるものなので、その方がいいと思う。

委員長: 受精卵、生殖細胞から受精してという、その過程で新しく欠損が起こったために、その個体に起こるということか。

説明者: そうである。

★ 途中の説明であった、遺伝的な関与がある、もしくは高率な統合失調症という文脈だったら理解できるが、「遺伝性」というと、やはり親から子にという意味合いが入ってくるかと思うので。

説明者: 「遺伝性」の方は直すこととする。

委員長: 研究者の社会との対話、社会とのコミュニケーションもとても重要で、適切に社会との関係を持っていただくということで。もしかすると計画書の中でも表現を変えることが必要と思われたら、考えていただけるといいと思う。

説明者: 承知した。

委員長: 他にあるか。ES細胞の使用ということで、何か委員会として見落としていることがあったら、ご指摘願いたい。責任者の略歴(経歴)、使用の目的・意義、使用の方法・期間・・・。インキュベータ内をパーティションで区切るということであるが、これは大丈夫か。インキュベータには他の細胞が入ってもいいが、細胞が混ざらないということが重要である。

説明者: パーティションで区切るということと、インキュベータ自体を分けるということの二つができるが、今のところはまだ余裕があるので、インキュベータ自体を分けようと思っている。

委員長: 分かった。(そうであれば)ミスが少なくなる。
 では、われわれは一通り確認できたと思うので、もし委員から申請者にご質問がなければ、審議に入ろうと思う。

― 説明者退席後、審査が行われた―

委員長: 1点だけ、「遺伝性」というのは違うだろうということで、これは恐らく修正されるのではないかと思うが、**委員にも見ていただくことにしたいと思う。遺伝性という表現が適切かどうかを検討し、必要であれば、修正していただきたいというコメントを条件付き承認の形で付けて、確認は委員長と**委員がすることにして、それでいきたいと思うが、よろしければ、委員の方は挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

5)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:2020-K022
「単球・マクロファージ等の血液細胞の多様性と小児疾患発症の相関性に関する基礎的研究」
研究実施責任者:個体パターニング研究チーム 宮西 正憲

【概要】
研究実施責任者の宮西研究員より研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では新たに募集する健常者の募集形態について議論があった。被検者にとって不本意な同意となる可能性を払拭するため、研究責任者と同一科内に所属する者を被験者としないことを申請書に明記すること、という条件を満たした上で適正と判断すると判定された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: この委員会でだけではなくて、いろいろな委員会で常に話題になるのは、健常者からサンプルを採るときのやり方である。「機縁募集」とだけ書かれているが、実際に、どのような方々になるのか。

説明者: 同僚や病院内の関係者など、基本は成人が対象になるかと思うが、病院関係の同僚・友人が多分、一つの対象になるかと思う。

委員長: A病院は血液腫瘍内科で、B大学医学部附属病院はどこか。

説明者: B大学医学部附属病院は小児科になる。

委員長: その同じグループからも提供があるのか。

説明者: そうである。声は広く掛けることになるかと思う。

委員長: それぞれのチームの責任者は誰か。

説明者: B大学医学部附属病院は助教のC先生になる。A病院は部長のD先生になる。

委員長: 教育機関の場合、大学院生のような単位認定や博士号の審査など、そういう権力関係にある人の弱い方の立場にある人は対象にしないというやり方をよくする。違う教室からというのは、やはり難しそうか。

説明者: そこも含めて、特にC先生はB大学の出身なので、科を越えてご友人に声を掛けていただくことは十分に可能かと思っている。

委員長: なるほど。例えば「病院内でも募集を行う」と書いた上で、「同じ診療科からの提供者は求めないことにする」という文言があるといいと私は思う。

★ こういう研究テーマで、血液腫瘍内科などの関連科にあれば、研究にある程度の理解を示す先生は、声を掛けられたら、採血に協力はするかなと思う。

委員長: 同じ診療科内でも大丈夫か。

★ 大丈夫であるように思う。

★ 今回、10人の健常者を集めるだけでいいのだったら、加筆して、(募集に)制限を掛けて、パワハラのようなことが決して起こらないような環境で研究する形を整えた方がいいかもしれない。

委員長: それぞれのご意見があると思うが、後で何かが起こったときにややこしい。医療現場で研究をしていて、ある程度の信頼関係があって、こういう血液を出したいということがあるのも私は分かった上での発言であるが、後で審査させていただく。
 私からもう一つ質問であるが、最初の承認から1年以上は一応たっていて、資金が得られる・得られないという議論、問題もあったと思うが、今までに試料が何人ぐらい集まって、何ができたかをご説明いただきたい。

説明者: 研究を始めるに当たり、研究費の確保も当然あるし、今回の倫理委員会を含めた準備があったのと、この助成金が取れたタイミングということも当然あるのだが、今年度の一番の成果としては、最初に臨床データからのレトロスペクティブな研究をかなりいろいろな症例を含めて行い、神経芽腫という特定の疾患において単球の治療前の数と予後の予測に非常に相関性があるというデータが出てきて、ちょうどそれで論文をA病院と理研が共同で書かせていただき、10月頭にアクセプトという形で、うまく論文にすることができた。ここのタイトルにある疾患と単球の関係性がヒトの疾患においても実証されたということで、今後、この疾患によりフォーカスした形での単球との関係性を進めていこうと考えて、今、やっている。

委員長: 分かった。それで結構である。他に質問は。

★ 健常者のサンプルの数は10人で十分か。

説明者: 今後の解析をするときに、本当は患者さんでやりたいのだが、非常に希少なので、健常者をコントロールに使うということと、その辺の条件検討も含めたサンプルとしても使いたいと思っている。それで条件が決まったら、患者さんの中で群間比較のような形で進めていく形になるかと思っているので、一応、まだ10人で十分かと考えている。

委員長: よろしいか。なければ、質疑は終わりたいと思う。

― 説明者退席後、審査が行われた―

委員長: 私が厳しめというか、こだわり気味というか、今はいろいろなことが起こるご時世、時代なので、同じ診療科内というのは避けていただいて、そこは明記していただきたいという指示を出したいと思う。条件付きということで、委員長確認で進めたいと思う。それでよろしければ、挙手をお願いする。

―全員挙手―

 

6)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:2020-K012
「三次元イメージング技術を用いた病理組織診断の標準化」
研究実施責任者:合成生物学研究チーム 上田 泰己

【概要】
説明者の松本研究員より研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、A大学のオプトアウト用文書について議論があった。オプトアウト文書の内容が本人向けであり、遺族への説明となっていないとの指摘があり、また、今回追加の共同研究機関であるB大学の説明文書がないこともあり、継続審議とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: A大学のオプトアウトというのは・・・。これは元々、解剖用に提供されているものなのか。

説明者: そうである。解剖実習用のものである。A大学とB大学は解剖実習用に提供されたものを使う。

委員長: 元々、解剖の教育だけではなくて研究に使うということは説明の上で、提供されているのか。

説明者: 包括的に取っていると私は理解している。

委員長: 通し番号の27ページ、これがA大学医学部の、この研究に関する説明か。

説明者: そうである。三次元顕微鏡観察技術を用いたヒト脳全細胞アトラスの構築に関する説明書である。

委員長: こちらはこれからの方に説明するのか。

説明者: そうである。

委員長: その前の26ページの「献体御遺体の画像撮影に関する説明書」が包括的なものか。

説明者: そうである。これが非常に広く取ったもので、それを理研へという話である。

委員長: これは教育に使うとは書いてあるが、研究とは書いていない。

説明者: 29ページからの公開文書の方に書いてある。

委員長: 29ページは一般的な研究に関するお願いではなくて、三次元イメージングの研究課題に関するお願いである。

説明者: これは三次元イメージングで、具体的なものである。こちらを公開してもらって、これに参加することに異議のある方は連絡を頂くということである。

委員長: 研究の同意はなくて、解剖実習用の献体ということで使ってきたものに対して、これをオプトアウトで出してきているのか。

説明者: そうである。

委員長: 既にA大学で行われている画像研究に対して、要するに分かりやすい質問をすると、29ページからの書類は今作って、これから出すものか。

説明者: これから出すものである。これは理研が主になっているプロジェクトなので、理研の方で審査を通ってから、A大学の方でこれを最終的に申請して、正式な承認を得るということで、その前に一度出していて、そこで止まっているという状況である。

委員長: A大学の倫理審査委員会はまだ通っていないのか。

説明者: そうである。理研が通ってからになる。

委員長: A大学は解剖実習用に献体されたものを研究に使うということで、この文書を恐らくホームページに出して、希望されない方は申し出てくださいというオプトアウトの形でやろうということになるのか。

説明者: 私はそのように理解している。

委員長: 解剖というのは元の目的があって、実習の場合には教育用実習で、研究が入っていない。それを研究に使うときにどういう手続きが妥当なのかということはいつも問題になって、昔からなかなか研究を入れない。一応、確認はしていただくといいと思う。ただ、指針上はオプトアウトでいける。
 他の方から質問等は。脳のイメージングということで、大事な研究であることは当然だが、いろいろな形で亡くなった方の脳を使うということである。

★ 画像という意味では献体はしやすいかと思うが、同時に教育用として解剖もあるということか。

説明者: 解剖実習を行った後のものである。

★ 献体された方は、この**会に入会するという意味なのか。

説明者: **会に入会された方が、解剖実習に使われるという形になる。

★ **会には献体する前にもう入会されていて、**会の方を対象に献体の依頼が行くということか。

説明者: そのように思っている。

★ では、**会というのは、通常の患者さんとはまた違うカテゴリーになるということなのか。

説明者: 自分で「実習目的に自分の体を使ってください」ということで、医学実習用に善意で提供するというものだと理解している。

★ 献体される方というのは、そんなにたくさんいらっしゃるのか。私は画像撮影については十分に了解は得られると思うが、教育用の解剖の献体が一緒に書かれているのはちょっとどうなのかなと感じた。

説明者: その件に関しては、A大学のものは既に解剖実習等が行われた後に脳が保管されているというものになる。B大学のものは、解剖実習で脳の解剖をしない場合があるので、そのようなものを本研究に使わせてもらう。

★ では、画像撮影というのは、ご遺体から取り出した脳を撮影するということなのか。

説明者: この研究の場合は死後の脳を取り出して、ある程度切断して処理を行い、標本にして、光学顕微鏡でイメージングする。

★ 意味が分かった。

委員長: 資料、通し番号の26ページを。これは「新入会員様用」と書いてあるので、まだ生きている方で、自分が亡くなったら医学生の教育のために自分の身体、遺体を提供していいとおっしゃった方に、もう今から画像撮影の研究に関する説明をするという話であるのか。

説明者: そうである。

委員長: その次はその説明書で、その次が承諾書。これは生きている方が自分で、自由意思で参加するかしないかを決めると。29ページは「倫理委員会の承認および医学系部門長の許可を得て、下記の医学研究を実施しています」とあって、いろいろなことを調べるけれども負担はないと書かれていて、三つ目の文で「このような研究では、国が定めた倫理指針に基づき、対象となる方お一人ずつから直接同意を得るかわりに、研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開することが必要とされています」とある。この書類全てを見ると、既に会員になっている方には先ほどの紙は渡さないように読み取れる。

説明者: そうである。

委員長: 今、生きている人と、もう解剖が終わって脳が保存されている人の両方がいるのか。

説明者: そうである。ご生存の方と既に解剖実習が終わった方のもので、A大学に関しては、今のところ、既にご遺体になって提供されたものが中心である。

委員長: 厳密に言うと、3種類の人がいるので。一つはこれから入会される方で、それはもうきっちり紙での説明がされる。次は既に入会されていて、亡くなって、解剖実習に使われる方。それから、既に亡くなっていて、脳が残っている方。これは本人に語り掛ける文章になっているが、亡くなった方で、脳が保存されている方に関しては、ご遺族に対して語り掛けるのではないかと思うが、その辺がどういうことになっているのか。

説明者: 私の理解だと、これでご遺族に同意を取る・・・。

委員長: しかし、これは文章としてはちょっと不十分では。

説明者: 確かに。

委員長: 会員になっていて、「自分が死んだら、どうぞ」という方に、「いや、実は研究にも使います」という文章にはなっていると思う。恐らく研究をすぐに始められるのは、もう脳になっている方だと思うので、ここはご遺族でしょう。

説明者: そうである。

委員長: 確認を頂いた方がいいかと思う。

説明者: 承知した。

委員長: また、B大学については文書が来ていなくて、同じ議論ができないので、どうするか。そして、CセンターとD大学神経内科は研究一般の同意を得られているのか。Cセンターは同意書がある。D大学神経内科もある。だから、やはりA大学とB大学は確認が必要である。
 それでは、審議に入らせていただく。

― 説明者退席後、審査が行われた―

委員長: 増えるサンプルが多くて、それぞれ状況が違うので。特に解剖実習への献体を研究に使うというのは、注意が要るところだと思っている。医学生の教育のために自分の身体を使っていいとは言ったけれども、知らぬ間に研究に使われていたという話になると、研究というのは、やはり理解のある人はいいのだが、そうではない人にとっては「勝手に」という副詞が付くことがあるので、心配になる。

★ おっしゃるとおり、確かにおかしいかなという感じはする。

★ 今の献体と画像撮影のICを見ても、やはりもっと分かりやすく丁寧に書かれた方がいいと思う。また、そこでやはりご遺族の意思というか、ご遺族にもきちんと説明されるような何らかの方法が取られるべきではないかと思う。

委員長: 今の話を聞いて思ったのは、この書類は亡くなっていない会員に対する説明がないようである。オプトアウトではなくて、会員への説明ができないのかなと思う。これはホームページでオプトアウトしようとしているのだが、**会があるので、実際には連絡を付けられるはずである。
 教育目的に利用されることに同意している、この**会の会員から個別に同意を取ることを検討されたかどうかを調べていただきたいと思う。そして、同意を取れないのであれば、それはなぜなのかをご説明いただきたいと思う。それから、先ほどの遺族に対しての説明文書がないのか、必要と考えるけれどもどうなのかという質問をしたいと思う。B大学の書類が来たら、同じ観点で、皆さまに書類を回して検討するしかないかと思う。

★ 新しくこれから入会する人に関しては、やはり解剖に使っていいということ以外に、当然、研究の趣旨についても話をして、理解を得ておくことは大事だと思う。解剖だけと思っていたけれども、加えて研究への利用も今後はあるということが出てきた人には、やはり何らかの形で連絡を差し上げるのがいいと思う。

委員長: 一般的には、拒否の権利は家族にも与えるということがあると思う。先ほどの書類を直して、「献体された方のご遺族で、研究に使われたくない方がおられたら、言ってください」というのがいいのではないか。現在、会員であって、ご存命の方には、やはりご本人に「教育目的だけではなくて、こういうとても大事な研究があるので、よろしいでしょうか」という説明を堂々と正面からされる方がいいと思う。

★ それはいいと思う。

委員長: それが書類から見て取れないので、そこは質問したいと思う。

事務局: このあたりは事務局としてももう一回、申請者に対してしっかりと確認させていただきたいと思う。こちらの理解では、既に保管されているものだけを使うと聞いているので、26ページ、27ページ、28ページの説明書が一体どういう位置付けになるのかということはもう少し明確にして、皆さまにご説明したいと思う。

委員長: 取りあえず反応を見たいと思うので、継続審査として質問を送ることにする。よろしければ、挙手をお願いする。

―全員挙手―

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