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No.11

第11回 神戸事業所 研究倫理第二委員会 議事要旨

1. 日時 平成28年8月23日(火)18:00~21:00
2. 場所 理化学研究所
ライフサイエンス技術基盤研究センター 大会議室
3. 出席委員等
(委員) 雪村 時人 委員長(大阪大谷大学薬学部 教授)
辰野 久夫 委員(辰野・尾崎・藤井法律事務所 弁護士)
塩見 進  委員(大阪市立大学大学院医学研究科 教授)
西口 修平 委員(兵庫医科大学内科学 教授)
中村 通子 委員(朝日新聞岡山総局 記者)
高橋 政代 委員(多細胞システム形成研究センター
網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー)
(説明者) 水野 敬   (ライフサイエンス技術基盤研究センター
健康・病態科学研究チーム 上級研究員)
渡邊 恭介   (ライフサイエンス技術基盤研究センター
健康・病態科学研究チーム 研修生)
佐々木 章宏  ライフサイエンス技術基盤研究センター
健康・病態科学研究チーム 研究員)
林 拓也  (ライフサイエンス技術基盤研究センター
機能構築イメージングユニット ユニットリーダー)
(オブザーバー) 渡邊 恭良(ライフサイエンス技術基盤研究センター センター長)
(事務局) 片山 敦   (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真   (神戸事業所 安全管理室)
堀江 仁一郎 (神戸事業所 安全管理室)
4. 議事項目
(1)平成27年度研究実施報告について
(2)平成27年度ヒトゲノム解析研究実地調査報告について
(3)人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(新規・変更)
(4)その他
5. 報告事項
1) 平成27年度研究実施報告について
事務局より、平成27年度に実施された研究課題等について報告があり、研究結果及び進捗状況を確認した。2) 平成27年度ヒトゲノム・遺伝子解析研究実地調査報告について
事務局より、平成27年度に実施したヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に基づく、実地調査の結果に関し、該当する1課題について報告があった。
6. 審議事項
1) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-16-19
「疲労による自律神経機能変調の神経基盤研究」
実験責任者: CLST健康・病態科学研究チーム 渡邊 恭良

 

2) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-16-20
「fMRIによる小児疾患の疲労定量評価法の開発」
実験責任者: CLST健康・病態科学研究チーム 水野 敬

 

3) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-16-25
「癒しによる抗疲労効果の神経基盤研究」
実験責任者: CLST健康・病態科学研究チーム 水野 敬

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 説明文書について、18歳まで引き下げたことによって、親権者による同意撤回が可能になるということは説明文書の中には記載されないのか。「親権者に提示するよう説明する」というのは、18歳の方に「お父さん、お母さんに渡してください」という説明をするということか。
説明者: そうである。
★ 親権者には、18歳の対象者を通じて渡すということになるわけか。
説明者: そうである。直接こちら側から親権者に渡す機会は特に設けない。
★ そうすると、この説明文書のどこかに、親権者による撤回は可能だということを書いた方が。
説明者: 了解した。

 

4) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-16-28
「疲労と感情認知の関連機序研究」
実験責任者: CLST健康・病態科学研究チーム 水野 敬

 

5) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-16-21
「社会的状況における疲労感の神経基盤研究」
実験責任者: CLST健康・病態科学研究チーム 佐々木 章宏

 

6) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-16-26
「疲労状態における安静時脳機能ネットワークの解明」
実験責任者: CLST健康・病態科学研究チーム 佐々木 章宏

【概要】
1)~6)について研究実施責任者/研究実施者の水野上級研究員、渡邊RA、佐々木研究員より、各研究計画の変更内容(軽微)について説明があり、質疑応答の後、審議が行われ、説明文書へ親権者による同意撤回及び親権者に対する説明文書の提示に関する明記についてのコメントを付した上でいずれの課題も承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 軽微な、しかも十分説明された納得のいく変更だと思う。3)については委員から指摘があった、未成年者については、親権者が同意を撤回できるという項目も入れるべきではないかという意見である。
★ それと、その前提として親権者に提示してくださいと。「予測される結果・危険・不利益」の項ではないかと思うが。例えば、「18歳以上20歳未満の方については、本説明書を親権者に提示ください。」と、「また、親権者による情報提供と研究同意撤回が可能です」ということを。
説明者: 例えば「予測される結果・危険・不利益」の上の段の「実験で得られた画像・データの取扱い」の項目で、希望により測定結果についての資料の入手または閲覧することが可能である。あるいは、研究計画等についても、被験者の希望により開示することができる旨記載しているが、それも同様に親権者の方も閲覧することができるとした方がよろしいか。
委員長: そこまで親権者の仕事を増やすというのもまた別の議論になると思うが。
説明者: ただ、そういった要望が親権者の方から寄せられる可能性というのはあるかと思う。一方で、何でも開示するというのは、18歳以上の方の自由意思というのを逆に侵害しないのかということも少し疑問に思ったが、どのように考えたらよろしいか。
委員長: 親権者にはできることになる。
★ 法的には請求があればできる。今回の申請については、直接、親権者に渡すのではなく、対象者を通じて渡すという整理をされているため、そのことと同意撤回可能であるというだけでよいのではないか。
説明者: 了解した。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

事務局: 18歳の未成年者については全計画共通になるが、追記する場所としては「研究への協力の任意性と撤回の自由」のところに入れた方がよいと思う。整理して、また確認いただくということで、内容としては、親権者による研究参加の同意撤回が可能である旨を説明文書に記載するというものと、親権者に対して説明文書を提示する、それに関する追記をするというような。それが共通ということでよろしいか。
★ 審議事項の3~7と全て同じか。
事務局: 同じである。
委員長: では、この審議事項を通して、18歳以上、20歳未満の未成年者に対して、親権者が同意撤回できること、それから参加者に対して親権者に説明文書を見せることを付け加えるということで、私がチェックさせてもらうということでよろしいか。

 

7) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-16-27
「脳画像データ活用による製品・サービスの評価基準の構築」
実験責任者: CLST健康・病態科学研究チーム 渡邊 恭良

【概要】
研究実施者の佐々木研究員より、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行われ、承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 60歳未満と限定していないのはこの審議資料か。
説明者: 他の計画に関しては疲労負荷がかかるため、60歳以上の方を対象とするのは難しいかと思い、60歳未満ということに限定は付けたものになっている。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 他に何か質問、追加がなければ、合わせて承認ということでよろしいか。
オブザーバー: ImPACTの60歳未満を変えていただいた一番の理由は、これまでのデータで非常にきれいに年齢に応じて、もちろん萎縮が起こるということはよくご存じだと思うが、非常にきれいなラインが出てきている。それから、アメリカでもこういうコネクティビティーでやっているが、Resting state functional MRI、そういう状況でも、いろいろなコネクティビティーの問題が年齢で非常にきれいに出てきていることから、できれば来ていただいて、いろいろなリスクもあるかもしれないが、少なくとも75歳以上の後期高齢者も測り、もう少し高齢者のところもちゃんとやっていきたいという部分がImPACTでも求められている。

 

8) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(新規)

受付番号: KOBE-IRB-16-22
「気分障害患者および健常者を対象としたMRIを用いた脳画像研究」
実験責任者: CLST機能構築イメージングユニット 林 拓也

【概要】
研究実施者の林ユニットリーダーより、本研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行われ、承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 共同機関名に「医学部」が入ったり消えたりしているが。
説明者: 修正させていただく。
★ 採血でBDNFというのは何か。
説明者: 成長因子ホルモン。神経組織の神経成長ホルモンと考えられているが、こういうものが特に脳の発達や形成の際に必要になっているタンパク質の一つで、そういう機能を持っているのではないかということが考えられてはいる。いろいろな病気で、このBDNFの異常との関連性が示唆されてはいるが、明確にこのBDNFの異常が、何らかの疾患と特定して関連付けられているという段階ではなく、あくまでうつ病の中の一つの病態を、間接的に反映するマーカーとして使えないかということで測定させていただく。
★ メラトニンは睡眠に関わる。
説明者: メラトニンもタンパク質、アミノ酸であるが、睡眠覚醒のリズムのコントロールに重要であると考えられており、うつ病でも睡眠覚醒の障害を来す患者が非常に多いことから、メラトニンの測定と併せて関連付けて解析したいという内容である。
★ 今回、対象とする気分障害患者の診断と定義に関しては、これは全て共同研究機関がされるということで、どういう定義でどういう患者をインクルードするかというのは、どこにも記載がないが。
説明者: 詳細は記載してはいないが、基本的には精神科の先生の方ではスタンダードな診断基準になっている。
★ そういうことは書かなくていいのか。どの方法によってなど。
説明者: そちらの方法については、共同研究機関の研究計画書には詳細は記載されているが、理化学研究所の方にはそこまで詳細は。
★ 先方で診断されたものをこちらで解析するからということか。
説明者: そうである。
★ これは画像だけではなく、いろいろなデータを全部こちらで解析するということか。解析については、共同研究機関ではなくて、全て理化学研究所がやるということか。
説明者: そうである。データは一通りのものは頂く。基本的な解析の部分で一番タスクの多いのはやはり画像の部分であり、例えば1人の被験者の画像解析でも、最低でも4~5時間ぐらい時間をかけないときちんとした結果とならない。それは1人当たりの時間になるため、その後、例えば50人、100人のデータを全部集めて集団解析をする、統計処理を行うことになった場合でもやはり画像解析のタスクというのは非常にウエートを占めるかと思う。それで出てきた画像解析結果を、さらに血液データや行動評価との関連付けで統計処理を行うだけではあるが、そこの部分については、かなりウエートとしては少ないと思う。
★ うつ病と躁うつ病は違うデータになるかもしれないが、その内訳は特に定めないといいうことか。
説明者: その明確な区別は、気分障害として広く捉えるという形で、うつ病と躁うつ病(双極性障害)というのも分ける考え方もあるが、最近は双極性スペクトラムという、一連のつながったような疾患として捉えられるという考え方が精神科の中である。そうした個々の患者の症状の違いが、脳の中のネットワークの違いであったり、脳の構造の違いであったりということにもし表れているのであれば、それはそれで診断的にも有用であろうと考えている。
オブザーバー: この大学のスタディーは、今言われた観点のスタディーと、「発揚気質」ということ書いてあるが、その発揚気質というものから躁うつ病やうつ病が、ある脳のコネクティビティーの変化によって発病してくるのではないかということの仮説を証明したいという内容がスペシフィックにはある。
説明者: そうである。この気質という評価法というのは長い歴史があるが、なかなか科学的な証明がないという状況の中で、気質と脳の機能、構造との関係性というものに、何らかのブレークスルーがあるのではないかということを仮説として考えられていたということがある。特に、「循環気質」や「発揚気質」といった気質の分類が歴史的にも知られているが、その発揚気質が特にうつ病、躁うつ病に関連する気質ではないかと。気質というのは、患者の方でなく、むしろ正常な方々の性格の分類のようなものであるが、正常な方々でも、ある特定の性格のタイプはうつ病になりやすいと。何らかの外因的な要因、例えば社会的な要因、人間関係などが加わると、うつ病・躁うつ病になるのではないかというような仮説を持っている。そこにもう少し客観的な手法によって、気質の分類と脳の構造機能の関係、それから患者における躁うつ病と脳の機能・構造の関連性をつなげるものとして、MRIを使っていきたいというような背景である。
★ そうするとこの研究は、計画書を読んでいてよく分からなくなってしまうのだが、単に健常者と気分障害の患者の脳の画像的な特性などの違いを見るということではなくて、健常な人も、さらに二層化されて、発揚気質がある人、仮説によるプレ患者と、本当の健常と、そして患者とという3群で比較して、プレ患者のような人と、もう診断がついて患者になってしまった人との共通項を探すというように、このインフォームド・コンセントを読むと感じられるが、そういうことなのか。今の説明と、このインフォームド・コンセントの患者向けの説明を読むと、実験の枠組みが、ある健常者と患者について、双極性スペクトラムがヒトに特徴的な脳の変化を見るということを言っていないような気がする。これは私がやって「あなたは発揚気質で、うつ病になりやすい、脳が変異しやすいですよ」というようなことを言われてしまうということなのか。
説明者: まだそこまでの、例えば正常な方で、この研究に参加いただくことで、うつ病になりやすい気質があるとか、MRIの診断結果によって、なりやすい、確率が高い状況にあるということまでは判断できない。あくまで研究として、説明文書にも書いてあると思うが、MRIの画像診断に基づいて、病気の診断はできない。それに対する病気の診断結果をお伝えできるものまでの信頼度の高いものが得られるとは考えていない。ただ、健常者の方々の気質の違いは、これまで言われてきた仮説で、特に発揚気質が、うつ病・躁うつ病との関連性が非常に強いということは、今までも共同研究の結果で既に論文化されている。例えば前頭葉の内側面の脳が、構造が大きい方は発揚気質が高いということは、正常の方で認められている。発揚気質がものすごく元気なタイプの方は躁病になりやすいのではないかと歴史的には言われているが、まだそこをきちんと明確に、躁うつ病の方で前頭葉の内側面が膨らんでいるという観察も、まだきちんと証明がない。正常の方々の気質、それから躁うつ病との診断、そこを関連付けるエビデンスがまだ全くない中で、今回のMRIの研究だけで全てそれを証明できるほどのものにはならないと思うが、ある一定の間接的な指標になるようなものが得られることを期待したいと思っている。
委員長: そういうことである。健常者のMRIの所見で、「あなたは発揚気質で、躁うつ病になりやすい」というようなことは絶対に言えないし、言わない。
説明者: そこは非常に難しい段階である。少なくともこの研究の成果として得られることを期待されるものは、正常の方々の気質のタイプが、一般にポピュレーションとして、群としてこういうパターンのようだ、双極性のタイプの方は群としてこのようなパターンだというところまでを、一つの成果と考えている。グループとして分かったことを、そのまま個人に適用できるかというのは、また別の話である。そこまでの一人一人の患者の診断が確定的に言えるほどまでに、MRIの結果からできるということまでは、期待はできないというのが現実だと思う。
★ これを何回読んでも、共同研究機関が何をしたいのかがよく分からないのだが。少し前の方を読むと、健常者で発揚気質を持っている人が、うつ病や躁うつ病になっていくときに、脳はこうやって変化するのではないかという変化の経緯というか、それを見たい、知りたいというようなことが、最初の方に、結構壮大なことが書いてある。それであとのところを見ると、発揚気質の人と気分障害に共通した脳の変異を探すということが書いてあり、何か少し違うような。発揚気質の人がうつ病になったときに、膨らんでいるところがへこむ、もっと膨らむといったそういう変異、偏差を見たいと言っていたような気がするが、今度は病気になってしまった人と、なっていない人との相同性を見るとここで言っており、一体何を見たいと言っているのかよく分からない。
説明者: 脳の画像の中で、どのようにこういう結果が出てくるかというと、脳の中のどこで変化が起きるかということが一つである。もう一つは、そのどこかでどれだけの量で変化しているかということも、一つの評価結果として出てくる。ここにある共通の特徴と言っているものは、どこという方だと思う。脳の中で気質に関わる場所、特に発揚気質に関わる場所、それから躁うつ病に関わる場所が、脳の中で共通の場所、同じ場所で変化しているのではないかということを期待している。そういう意味での記載である。例えば、先ほどお話しした発揚気質に関わるものとして、脳の内側が膨らんでいそうだという正常者の結果が、既に先行結果であるが、同じような結果を、前頭葉の内側面で膨らんでいる人は、躁うつ病の方に見られるということを、結果としては期待する。ただ、それが病気の人と健常者の方と区別するものは、もう一つ別の観点から、その膨らみ方が多いか少ないかというものが、一つの違いとして出てこないかなという期待はある。例えば、非常に膨らんでいる方は、病気になられる傾向が高い。普通の方よりは、他の気質の特徴の方よりは、発揚気質の方は内側面が少しは膨らんでいるが、その程度は小さく、病気の方はもっと膨らんでいると。そういう病的なものについて、病気の方と正常者との違いは、もし区別ができるかどうかもやってみないと分からないということはあるが、群としての差が出ないかどうかということが興味の対象になっている。
★ 発揚気質の人は、このような疾患、気分障害になりやすいというのは、大前提としてこの研究を考えているということか。
説明者: そうである。そこは長い歴史があり、とてもこの一つの研究で「それは本当だ」「それはうそだ」とか言えるものではないが。
★ その前提に立ってこれをやっているということか。
説明者: その前提はまず受け入れたということで、その気質と躁うつ病との関連性が、どういう意味で共通でどういう意味で違うかということをもう少し明確化していきたい。
★ 「あなたは気分障害になりやすいですよ」ということが、将来的にこのようなマーカーとして画像が使えるようになったらいいねということを狙っていると。
説明者: そうである。
委員長: 実際は遠いのでは。
★ 200人ぐらいで足りるのかなという気もするが。
説明者: 分からない。非常に混沌としている状況であり、こうした研究は世界中ではやられてはいるため、やはりそういう点でも、単に画像を撮って比べるというのではなく、非常に高度な解析を加えて、解析の技術そのものも日進月歩で進んできて、そうしたものを駆使して、少しでも感度を高く差が捉えられないか、共通性が捉えられないかという観点で研究を進めたいと思う。
★ この対象者に、「気分障害の既往または現症のある方」と、既往の方は、かつてあって今は治っている、そういう方は健常者に入るのか。これは気分障害者のゾーンに入るのか。 それとも3群の対象者に分けることになるのか。
説明者: 気分障害の既往のある方、現症のある方については、気分障害のグループに。
★ 既往の方というのは、今は治っているという意味か。
説明者: 今は治っているということになる。
★ そうすると、倫理の観点からだが、この気分障害者の方に「あなたは気分障害者だ」ということは、医師としても告知されるわけか。
説明者: 告知はされる。あくまで精神科の、主に外来受診になるが、患者で、通常うつ病であっても、告知されて治療がされるとなっている。
★ 診断書にもいろいろな病名が出てきて、「うつ病」と書いていない診断書が結構多い。それで患者は「自分はうつ病ではない」、でも、医学的にはうつ病なのであるが、そういう方にこういう試験に臨んでいただくときに、倫理的に特に問題はないのか。確かに精神科に来ておられるのですが、組織の中にうつ病の方がおられたときに、ものすごく周りが神経質になって、そのときに「あなたはうつ病だ」とはむしろ言わないように我々はしているが、それは構わないのか。
委員長: それは精神科の外来でされる、あるいは入院患者であり、みんな知っている。
★ 基本的に外来受診されている患者であることから、治療意欲のある方が入っておられるので、診断、例えば検査、治療、医療費が掛かるようなものについては、基本的な必要な説明をされた上で、医療行為が行われていると思う。
★ 新型うつというのが出てきているとよく議論されるが、今回、新型うつは射程に入らないわけか。
説明者: 新型うつというものも、明確な診断基準そのものは、まだ標準的な診断基準の中に取り入れられていないのではないかと思う。こちらで行う研究の趣旨としては、現在のところ、受け入れられている気分障害、それから双極性障害という方々を対象とし、限定して検査・研究をさせていただくこととなっている。
★ 了解した。
★ 実施期間について、「実施期間は2013年9月1日から2018年8月31日」となっているが、もう始まっているということか。
説明者: 既に承認を受けている課題である。共同研究機関で研究を最初に主導的に始められ、既にMRIの研究としては2013年から開始されている研究内容である。
★ その時点からのMRIは全部もらうわけか。
説明者: 違う。理化学研究所でこれから始める研究内容については、これから収集するデータを頂き、解析を行う。というのは、正常者の方で既に先行論文があるが、その段階では、先方で既に取られたデータを、こちらでアドバイスして研究成果を出したという形になっていたが、そういう経過の中で、やはり画像の撮り方、MRIの撮影方法や解析方法に問題があるということが、だんだん浮き彫りにされた。そのため、そういうものも含めて、全て一からやり直すということで、撮影方法、解析方法も、全て理化学研究所でやってもらうということである。
委員長: そうすると、今回さらに新しくなるという意味では、新規のところになるべきかもしれない。
説明者: 理化学研究所では新規課題であるが、共同研究機関の先生側からすると既に先行。始まっている研究である。決まった枠組みの中で方法の一部を変更し、研究を継続したいということで、先方でも理化学研究所が研究に参加するという旨、変更申請をこれからするということになっている。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

★ もう一度確認させていただきたいが、この目的は、画像を解析して、画像バイオマーカーを検出すること。取りあえずそれをやってみるということか。
委員長: そうである。大抵の医学研究はそうであるが、群に分けて、健常者と病気の人と分けて、それぞれでいろいろなパラメーターを測定、解析することで、両者間、健常者と疾患の人の間で何か違いがあって、その次のステップとして、その違いが意味のある違いかどうかを、また新たな研究を加えて進めていく。そういう点から言うと、ある程度、既にこの辺が原因に関係しているということが分かっているところに注目された研究ということになる。最終的には、これがこの病気の原因になるという説明ができるかどうかを調べていこうというのが、この試験の目的になると思う。
オブザーバー: そうである。もう一つは、そういう群間の比較と、いろいろな気質などの数値化されたデータとの症状のコリレーションやBDNFとのコリレーションなどを取り、それを並べていくことによって、ある脳の部位がそういうファクターと有意なコリレーションを持って、ある傾向があるかどうか、そういうことが分かると思う。
委員長: 画像だけで、うつ病が診断される。
オブザーバー: 画像だけでは無理であるが、その周辺のいろいろなデータも含めて、パターン的な診断をやっていかなければいけなく、本当に典型的なうつ病になった方というのは、結構診断がしやすいし、客観的なバイオマーカーが動いている場合が多い。しかし、早期のうつ病が本当に意欲低下で起こってきている、我々が少し落ち込んだとき、さらにきつく落ち込んだとき、それと本当に病的な、いわゆる境界のところの診断は非常に難しい。
委員長: 素人からすると、うつと診断された人がうつ病なので、本人が決めることでもなく、社内で決めることでもなく、精神科を受診されてうつと診断された方が、うつというような約束で進んでいると思うが、現実にはうつかどうか分からない。今言われた境界のところは。
オブザーバー: 予防的にうつ病という診断をつけて治療を開始することだってあり得る。放置しておくと良くないので。その辺の問題がいろいろある。
委員長: 疾患としては非常に重篤な疾患である。そういう意味で、さらに研究を進めていただくということが。
★ しかし、これはうつ病の診断マーカーではないのでは。うつ病になりやすい人も共通のものということ。
委員長: これを積み重ねれば。他になければ語句の修正をして承認ということでよろしいか。

 

9) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(新規)

受付番号: KOBE-IRB-16-23
「自律神経系と中枢神経系の間をつなぐ脳内機構解明研究」
実験責任者: CLST機能構築イメージングユニット 林 拓也

【概要】
研究実施者の林ユニットリーダーより、本研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行われた。審議では、一部のプロトコルの被験者への説明の必要性等について議論され、説明文書への一部説明内容の追記を条件とし、説明文書へ親権者による同意撤回及び親権者に対する説明文書の提示に関する明記についてのコメントを付した上で承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: この寒冷昇圧試験というのは、保険の点数は付いているのか。
説明者: 保険の点数は付いているはずである。
委員長: それともう一つは、この血圧を意識させる、あるいは糖尿病を意識させるという教育が、あるいはトレーニングのようなものが、どうなのか。かえってどのようなタイプの脅迫をするような話になるのか。それとも、普通の話なのか、結構これは大きな問題だと思うが。
説明者: 基本的にこの研究を行う担当者は、循環器内科の医師が行う。循環器内科の医師が血圧の危険性について話す一般的な説明を、この研究の時間内に行う。高血糖についても同じである。また、血圧の測定ならびに血液検査のための血液採取もこの医師が行うということになっている。
★ 日ごろ、18歳のような若い人であれば、血圧も血糖もあまり感じていないと思うが、年齢制限がないため、50歳といった人が入ってくる。いつも高血圧を気にしている、もともとの血圧に対する関心度というのが、個人差がすごくあるような気がするが、その辺はどのように調整するのか。
説明者: 簡単な質問紙で血圧に対する意識度というものを、非常に単純なものでしかないが、スケールとしてお答えいただいた上で。
★ 気にしているかというような。
説明者: そうである。そういう情報も集めるようにしている。
★ 仮説としてはどの辺にあるのか。そのつないでいるところという、「血圧は怖い」と思っている気持ちと心臓が変化するというのは、どの辺にありそうなのか。
説明者: 基本的に、将来的な出来事を予測する、ないしは期待する、ネガティブなものもポジティブなものも含めて、予測できる脳というのは背外側の前頭前野という場所にある。そういう場所に、この意識群と意識群ではない群の違いが出てくるのではないかということは期待している。
一方で、自律神経系の調整、血圧の反応性の調整が脳の中のどこで起きるのかということは、画像ではきちんとまだ分かっていないが、仮説としては、非常に脳の深い、深部の場所、特に脳幹部分は、呼吸や血圧の中枢があるということは古典的に知られている。ただ、そういう脳幹の部分は非常に小さい場所であり、MRIで検出できるかどうか、検出能があるかどうかという点は、少し難しいかもしれない。ただし、それに関わる大脳の中にも、脳幹部分の自律神経と関わる場所があるのではないかということも想定されているため、特に前頭葉内側面の下の方になるが、そういう場所は自律神経系と関連があるのではないかと言われている。
★ 知識やそういうものと、爬虫類みたいな脳の部分とをつなぐ中継ポイントのようなものが、どこかにあるのではないかということか。
説明者: そうである。病気の知識・記憶といったものは、側頭葉の海馬という場所にあるが、そういう海馬と非常につながりが深いのは、先ほど言った背外側の前頭前野。
★ それと脳幹の奥の方をつなぐ、どこかまた中継ポイントのようなものが。
説明者: そうである。中継ポイントないしは直接のコネクションというものが、どのように変わるかということが見えるといいと考えている。
★ 説明文書だが、説明にあった二つの群、被験者の群で、高血圧と高血糖の二つに分かれるというのはどこを読めば分かるのか。これはむしろブラインドにされているわけか。
説明者: その点については、個々の被験者に説明を明確にせずに。
★ この実験Aと実験Bのところの質問票などで情報提供を上げてしまうと。
説明者: 実際にAとBの区別は、実験の流れの違いになってくるが、MRIを行うか、行わないかの違いだけである。寒冷試験だけの場合はA、MRIと同時に寒冷試験を行う場合はBというような内容の説明になっている。あくまで最初の血圧に関するリスクを話すかどうか、高血糖に関するリスクを話すかどうかは、こちら側でデシジョンして被験者ごとに説明していただくが、それを話すか話さないかも含めた研究の全てのプロトコルとして、個々の被験者様に明確にはしないつもりである。
★ 倫理の観点から、そのことを説明の段階で言わないのが良いのか、2群に分かれるということを言ってしまったほうがかえって良くないのか。
説明者: その点は難しいが、本人に血圧に関する意識付けをした群と、意識付けされていない方々の群を、どう明確に区別できるかというのは非常に難しいところであり、あくまで我々が意識付けを意図して説明したとしても、完全にその方々が、意識が持てるかどうかという確認も非常にしがたいところもある。両方の可能性をうまく説明し、高血糖の説明をするという可能性と、高血圧のリスクの可能性、研究の概要全てを話した上で、その方については血圧の可能性をまた話すということになると、非常に話がややこしくなり、理解しがたいのではないかということを、倫理的な点で少し懸念している。
委員長: 最初に質問したのは、その点があり、もし血圧の話、糖尿病の話をどちらか聞くことになると言わずに説明同意文書に書いていないことをするというのは良くないと思う。具体的に説明する必要は確かにないと思う。医学的な話についての説明は二通りある。それについては、私も分からない、循環器の先生に任せているなど、明確に書く必要はないが、そういうことをするということが同意文書にないというのは、委員の方々どう思われるか。書いていないことをしてはいけないと思う。何か書いておいていただかないと。
説明者: 書いてしまうと意識してしまう。
委員長: 書けないけれど、けれども、何か書いておいていただかないと、書いていないことをするというのはどうかという気が。
★ 糖尿病の話と血圧の話のいずれかはするわけか。そうであれば、いずれかの話をさせていただくと書いたところで、それを意識することにならないのではないか。
★ 気にされているのは、寒冷昇圧試験であると書いてあるため、「血圧に関係のあることをやるのだな」というのは思うだろうなと。それで、その前に血圧と血糖と言うと、被験者に仕掛けが見え見えになってしまうというのを気にされているということか。
説明者: そうである。
★ 「まず健康相談室で健康に関する話を医師から聞きます」など、健康に関する話であればいいため、血圧や血糖という具体的なものを出さずに。
委員長: 私が言いたいのは、何か書いておいてほしいということ。
★ 事前にそういうことを伝えることがこの実験にマイナスであればブラインドでもいいと思うが、そうでないのであれば、やはり対象者を尊重すべきではないかと。
説明者: 健康に関する情報に関して話をするという、簡単な文言を入れる。
★ なぜかと言うと、研究の意義・目的のところで、意識がどういう影響を及ぼすのか、与えるのかと、今回、その実験をするとあり、「あなたはこの実験に協力していただく。意識がどう影響を及ぼすのか。最初に意識の話がありますよ」と、それを本人に言わないでというところは、少し倫理的に引っ掛かる。
委員長: 例えばダブルブラインド試験などの説明文書が参考になると思うが、プラセボが行くか、実薬が行くかは分からないというような話をされたらいいのではないかなと思う。
説明者: 了解した。
★ 委員の懸念は、「研究の意義及び目的」というところに一言、意識と脳の働きの関係を調べるということを明示し、どんなことをやるかというのは、「研究への協力の任意性と撤回の自由」と、「本研究では、安静時および寒冷昇圧刺激負荷時の脳内反応機構を調べることを目的とし」というこの目的が、隠されている部分が少しあるのではないかという懸念なわけではないのか。これは自律神経だけか。
説明者: 「安静時の手または足を冷やすことによる脳の働きや仕組みを調べることを目的とします」と、広くではあるが。
★ どちらも「研究の意義」のところに自律神経についてのことを調べる、刺激に対してどう反応しているのか、そのとき脳がどう動くかということを言っているが、そのときの意識付けでどう変化があるのかというのを見たいのだということが、最初の大きい研究の目的とか、どんな研究であるかという大きなスキームを示すときに、一言いるのではということだと思う。
説明者: この目的の項目のところに少し加えさせていただく。
★ 例えば、健康に対する情報提供の内容がどう影響を及ぼすかということを一つ書き、寒冷試験の影響がどういう影響を及ぼすか、その二つについて調べますということを明記して、これを読まれた方は、そのことをそんなに明確に意識するとは思わないと思う。終わってから初めて「そういうことか」ということに多分なると思うため、書いておかないことをするというのは、少しだまし討ちのようにもなるため、これはやっていただいた方がいいと。
委員長: 簡単でいいので書いておいていただいた方がいいと思う。
説明者: 研究の目的・方法のところの説明に加えさせていただきたいと思う。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 「研究の意義、目的及び方法」のところの「寒冷昇圧試験」の項目に、健康の話の影響も一言、一文加えていただくということでよろしいか。

 

10) 人を対象としたMRI研究計画に関わる審査(新規)

受付番号: KOBE-IRB-16-24
「米国ヒト脳コネクトームプロジェクトの画像・データを用いた脳機能解明研究」
実験責任者: CLST機能構築イメージングユニット 林 拓也

【概要】
研究実施者の林ユニットリーダーより、本研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行われ、承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ これはアメリカで、現在進行形でデータ収集中ということか。
説明者: 現在も進んでおり、既に900例近いデータが公開されている。MRIを撮るだけであれば、日本でも撮れるのではないかという話は当然出てくるが、米国のこのプロジェクトのすごいところは、MRI装置そのものを自分たちで開発し、非常に高度、高性能なMRI装置を独自に構築して、ワシントン大学にそのMRI装置を設置して、限りなく非常に性能のいい画像データを取得させていただく。1人当たりにかけるMRI撮影の時間は、4日ほどに分けて、トータル4時間ぐらいをかけてMRI撮影をするというような内容になっているため、結構体力の要る研究になっている。
同時に、行動評価であったり、血液検査は遺伝子の解析も含めて、遺伝子解析情報センターに送り、所定の手続きできちんと管理されるというようなセンターの下に、データベース化されるということになっている。こちらの方には、遺伝子情報はもらう予定はなく、画像情報と本人からの行動情報、性格情報といったものに限られるかと思っている。血液データのうちで一部のホルモン検査等もされており、それについては個人が特定できるものではないため、もし公開されるようであれば、それも頂き関連性を調べるといったことをしたいと思っている。
★ ワシントン大学の7テスラのMRIというのは、全例7テスラのMRIを撮るのか。
説明者: 1800人全例が3テスラ受けていただくが、そのうちの一部の方でミネソタ大学に行っていただく必要がある。行ける方について、7テスラも受けていただき、両方受けていただくということで、実際に受けられる方は200~300例のはずである。
★ 3テスラと7テスラで全例はそもそもできないと思うが、やはり全然違うものか。
説明者: 7テスラと3テスラで、信号ノイズの比といって、画像のきれいさを示す指標は2倍以上になる。そのSN比が2倍というのはかなり大変な技術であり、それを、磁場を上げることによって2倍にするということになる。
★ こういう人を7テスラに回すといったそういう基準は全くなしで、ランダムに7テスラか。
説明者: 選択に関しては、説明をしていただき、希望者、参加してくれる方のみ。
★ この除外基準で除外されない人は全部入っているということだが、例えば人種の割合などは分かっているのか。
説明者: それは記載していないため、全ての人種の方も含まれている。
★ 基本データとして、そういうものが入っていた方が解析しやすいことはないのか。むしろ入れることがよくない?
説明者: 人種の差というところを明確にサイエンスにしようとしている話は聞いたことはない。
委員長: 科学的には人種差、あるいは人種と人種の差と、同じ人種内でのバリエーションを調べることは、例えば薬物代謝酵素などは昔からされている。人種間よりも、人種内のバリアンスの方が大きいということは既に実証されており、調べることは全然問題ない。
★ 基本情報に入ってこないのか。
説明者: 情報には入ってこないのではないかなと思う。
★ 年齢、男女などは入っているの?
説明者: 入っている。基礎情報としては入っている可能性はあると思うが、それを解析対象とするかどうかはまた別問題である。
委員長: それはまた別問題であると思う。それと、このプロトコルの中に、理研の名前も出てこないため、本来こちらで審議対象とすべきかどうか迷う。そのデータ提供者がそういう倫理性、データを受ける研究者に対する何か求められているのか。
説明者: 倫理性は同意するということが求められており、研究者個人としてはそれに同意した形でデータを得る。
委員長: この倫理委員会で審議するかどうかというのを審議していると時間がかかることもあり、これは全然問題ないのではないかと思うが、倫理的な立場を尊重し、データを受け入れられるということが求められているのであったとすえすれば、我々もそれについて若干議論を。
説明者: 米国でも、注意を促す文言があるが、画像情報、血液情報、いろいろなデータが、特定の個人について全て集まってきている。そういうデータを集めることで、もしかするとその人が特定できるかもしれないといった技術が出てくるかもしれないとか。例えばMRI画像についても、顔の特徴を抽出することは簡単にできてしまうため、それによってその人が誰だということを、特定できないとは言い切れないところもあり、その辺を注意いただき使うようにという記載はある。
★ 言われるとおりで、頂いたデータを正当に倫理的に問題のないように使うかどうかは、やはり倫理委員会で申請、承認されないといけないと思う。このプロトコルであれば問題はないということを審議しているということでいいと思うが。
★ データを見るには研究内容も登録するのか。
説明者: 理研の研究内容は登録しない。研究者としての倫理を同意するだけで。
★ 少し研究内容がざっくりとしており、具体的に何というのがよく分からないような気もするが、解析技術を開発するところに主眼があるのか。
説明者: この米国のコネクトームプロジェクトそのものもざっくりとしたことになっているが、解析技術を確立するということも一つの柱になっている。それから、個人の情報と関連付けて、脳情報から個人の情報が推定できないかどうかということを大きくうたっている。我々も、基本的には解析技術の開発と個人情報との関連付けというものを対象としたい。
★ 委員長が言われた問題点は、インフォームド・コンセント・ドキュメントであるが、これはアメリカのワシントン大学で協力者が出した同意書だと思うが、そこに、この提供者の個人のデータが全世界で使われるということを既に承諾しているということがあり、それをきちんとした研究目的で使うと、そういう意味での倫理委員会の承認だと思う。
★ これはすごいお金を掛けて、ワシントン大学、ミネソタ大学、セントルイス大学などが集めて、それをボランタリーに世界中に公開し、提供してくれているわけか。それはすごく利他的な感じがするのだが、この3大学にとって、それを世界中に公開してやるということのメリットは何なのか。
説明者: サイエンスは、みんなのものである、サイエンスそのものが人類の宝であるという共通の認識。オープンサイエンスという一つの考え方があるが、こういう技術開発そのものもオープンテクニック、オープンソースといったもの、解析のプログラムそのものも全てオープンで誰でも使える、お金も要らないというようなことである。
★ 成果が上がったときに、共著として名前は要求してこないのか。条件にはなっていないか。
説明者: そうである。
委員長: 特許は取れるのか。
説明者: 特許については、詳細は分からないが、少なくとも解析のプログラムについては、全て著作権程度のものしかない。
委員長: このデータを使って得られた成果が、もし知的財産権が発生した場合に、理研の特許として出せるのか、それとも共著にするのか、あるいは出さないのかというのは書いていないのか。
説明者: 詳細なところまでは書いてはいないが、理研の特許として出すつもりはない。基本的にはこれによって得られた成果はオープンにするつもりである。
★ 最近、こういうのが少し出だした。
説明者: 出てきている。いろいろなデータが全部オープンになってきている。
★ 薬の開発などとは真逆な方向に。
★ それはそうである。企業に対抗して国でということになってくると、オープンにして特許を取らない方向でというか。
★ IT技術などと似ている考え方である。全部オープンソースにして、みんな自由な開発で発展をと。
説明者: こういう考え方によって、膨大なデータが集まり、ビッグデータになる。今度はビッグデータを解析するのが一つの研究対象になり、AI技術も日本で注目されているが、そういうデータサイエンティストとAI技術は、これから研究の一つの分野になっていくだろうと思う。
★ 日本でもこういうプロジェクトはあるのか。
説明者: 残念なことにない。こういう大規模な研究は必要だと思うが、一つには、MRIの技術を開発するという一つの大きな柱がある。日本は、MRIの技術開発の点では遅れており、先行が非常に少ないということもある。応用研究だけではなかなかできない仕事であり、技術開発と応用研究が一体となる研究によって、世界にインパクトを与えられるようなデータが初めて取れるのではないかと思う。日本でも一部の疾患、例えばアルツハイマー病の脳画像のデータ収集、大規模の研究というのが進んでおり、パーキンソン病のデータ収集を海外と連携してオープンにしようという動きはあるが、規模的にはこの1000人レベルの規模というのは、日本では行われてはいない。イギリスでは10万人規模で、MRIを収集して健康情報の収集と病気の予測という観点から、MRI情報をふんだんに使っていこうという研究が既に始まったところである。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 承認ということでよろしいか。

 

7. その他
 CLSTセンター長より、昨年11月にリサーチコンプレックスが採択され、理研が中核機関となり、大学、企業等と連携しプロジェクトを進める上で、健康計測に関わる人の計測が入ってくることから、融合連携イノベーション推進棟でも様々な計測を行っていくことになるため、今後、審査いただくことになる旨の説明があった。

以上

 

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