研究計画

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2017/04/27 / Kobe1 2013-03(3) / 公開

研究課題名

ヒト脳脊髄液におけるペプチド定量系の開発および新規精神疾患診断マーカーの探索

 

試料・情報の利用目的(他機関への提供方法)/研究の意義及び目的

 多くの精神疾患では、原因の解明が十分に進んでおらず、疾患を客観的に判断するための生物学的指標が存在していません。そのため問診などにより得られる情報に基づき診断が行われて治療が進められることが主流となっておりますが、そのことが治療の遅れなどに繋がることがあり、問題となっています。したがって、精神疾患を早期に精度良く診断し、的確な治療を選択するために役立つ診断マーカーが求められています。

 精神疾患はさまざまありますが(ナルコレプシー、特発性過眠症、特発性不眠症、レストレスレッグス症候群、慢性疲労症候群、概日リズム睡眠障害、発達障害に伴う睡眠障害、躁鬱病、鬱病、統合失調症、Klein-Levin症候群、特発性過眠症、レム睡眠行動障害など)、その原因の一つとして脳の異常が挙げられます。さらに、脳脊髄液は脈絡叢(みゃくらくそう)で生産され、脳と直に接触している唯一の体液です。したがって、脳脊髄液中には、脳の異常に起因する精神疾患を診断するために、有用な診断マーカーが存在し発見されることが期待されます。

 実際、ナルコレプシーと呼ばれる睡眠障害の一種では、1998年に桜井教授らにより発見されたオレキシンと呼ばれるペプチドが、脳脊髄液中で減少することより、診断マーカーとして利用できることがわかっています。しかしナルコレプシー以外の睡眠障害や、他の精神疾患では、このような診断マーカーは存在しておりません。

 以上のような状況を踏まえ、精神疾患における早期で精度の高い診断方法の開発を目指し、ヒト脳脊髄液中から、新規の精神疾患診断マーカーとなるタンパク・ペプチドの探索を行い、臨床での応用に繋げられる定量方法を開発することを研究の目的とします。

 また、近年、精神疾患の原因の一つに、脳脊髄液中へ抗体が侵入する例も報告されており、抗体がマーカーとして同定された場合には、診断法の開発を目的として、その抗原の探索を行います。 一方、ヒト脳脊髄液の採取は、患者にとって比較的苦痛が大きい為、より非侵襲的な診断法の開発を目指し、血液においても診断マーカーの探索と定量方法の開発を行います。同時に血液からゲノムを抽出し、ゲノム解析を行うことによって、精神疾患と関連する遺伝子を探索します。

試料・情報の利用方法(他機関への提供方法)/研究方法

 秋田大学医学部精神科において、対象とする疾患の患者および健常者から、ヒト脳脊髄液と血液を採取し、理化学研究所に提供していただき、サンプル処理および解析を実施します。また、秋田大学が過去に採取したサンプル、もしくは、全国の他の医療機関から集めたサンプルのストックのうち、対象とする疾患と合致する検体についても、提供していただきます。また、秋田大学で提供の困難な疾患のサンプルについては、他の医療機関と共同研究を行うことにより、サンプルを入手したいと思っています。

 採取した脳脊髄液または血液から、蛋白質・ペプチドを抽出し液体クロマトグラフィー質量分析器(LC-MS)および生化学的手法を用いて測定・解析します。

 また、採取した血液から、ゲノムを抽出し理化学研究所の次世代シーケンサーを用いて、全ゲノムの解析を実施します。

得られた結果から、健常者グループと各疾患グループにおける蛋白質、ペプチドまたは遺伝子のプロファイルを比較することによって、統計的有意差の見られる蛋白質、ペプチドまたは遺伝子の同定を行うことにより、診断マーカーの探索を行います。

試料・情報の利用方法/入手するヒト由来試料等

種類:脳脊髄液、血液
採取機関:秋田大学医学部精神科(取得時期:平成12年~現在)

利用する者の範囲/共同研究機関名・利用目的

機関名:秋田大学
利用目的・役割・分担:ヒト由来試料の採取

利用する者の範囲/共同研究機関以外の外部への提供・利用目的

なし

試料・情報の管理責任者氏名等/研究実施責任者所属・氏名・職名

生命システム研究センター合成生物学研究グループ・上田 泰己・グループディレクター

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