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No60

第60回 神戸事業所 研究倫理第一委員会 議事要旨

1. 日時 平成29年7月3日(月)13:30~16:55
2. 場所 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター A棟2階 大会議室
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
竹下 賢 委員 (関西大学 名誉教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
松崎 文雄 委員 (CDB非対称細胞分裂研究チーム)

(説明者)

辻 孝 (多細胞システム形成研究センター 器官誘導研究チーム チームリーダー)
水野 敬 (ライフサイエンス技術基盤研究センター
    健康・病態科学研究チーム 上級研究員)
六車 恵子 (多細胞システム形成研究センター 非対称細胞分裂研究チーム 専門職研究員)
森永 千佳子 (多細胞システム形成研究センター
      網膜再生医療研究開発プロジェクト 研究員)
清水 義宏 (生命システム研究センター 一細胞質量分析研究チーム 上級研究員)

(オブザーバー)

深井 宏 (神戸事業所長)

(事務局)

片山 敦 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
堀江 仁一郎 (神戸事業所 安全管理室)
吉田 道生 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)ヒトES細胞使用計画変更について
(2)改正指針確認状況
(3)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規・変更)
(4)その他

5. 報告事項について
 

1) ヒトES細胞使用計画変更について
事務局より、前回委員会以降に実施したヒトES細胞使用計画変更(研究者の削除)について、研究機関の長の承認後、文部科学大臣宛の届出手続きを行なった旨の報告があった。
2) 改正指針確認状況について
 事務局より、個人情報保護法の改正を受け、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針及びヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の改正が行われたことによる個人情報及び要配慮個人情報の取扱いの有無、インフォームド・コンセントの再確認、試料・情報の海外提供に係る説明文書等の確認及び公開等が必要となる計画に関する確認等の実施状況について説明があった。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 対応が必要な課題はどれくらいか。
事務局: 一覧のとおりであるが、例えば個人識別符号、要配慮個人情報がある場合、提供元のIC文書について確認するとともに、この計画の内容について、指針に定める項目に関し理研としても公開等が必要になる。
委員長: 公開が必要だったのか。それは5/29までに実施したのか。
事務局: 公開については具体的な期日の定めはないが、どういった項目で、HP上のどこに載せるか等を詰めているところである。
委員長: 委員会として現時点で何か変更されたものを我々が審査しないといけないというのはなかったという理解でいいのか。
事務局: そうである。
委員長: 記録義務、記録の保管義務が出たが。
事務局: これまでゲノム指針に該当する計画については、実地調査でも見ていただいているような入手等の記録が全部ある。しかし、ヒト由来試料に関しては、ラボノートなどには記録されているが、保管の記録としては、義務付けを明確にはしていなかった。これについては指針上の必要な項目について記録が必要ということで、周知を実施している。
委員長: 何か様式を作ったのか。
事務局: 理研全体で検討しているが、少なくとも指針上の項目について記録してくださいという形で出している。

 

6. 審議事項について
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規/前回から審査継続)

受付番号: KOBE-IRB-17-11
  「毛髪診断技術の確立に向けた毛髪の性状解析研究」
研究実施責任者: CDB器官誘導研究チーム 辻 孝

【概要】
 研究実施責任者の辻チームリーダー及び代表機関責任者より、前回委員会において審査継続となった本研究計画の内容及び確認事項等について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、前回委員会における指摘事項、コメント等への対応状況について、説明資料を基に研究実施責任者より説明が行われ、委員による確認ならびに議論がなされ、説明文書の誤字修正及び共同研究契約書に規定する試料の取扱いに関し、ゲノム情報を明記することを条件とした上で承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

事務局: 事務局から補足で、理研ベンチャー認定支援制度について、研究成果の迅速な実用化と普及、理研から自立した一民間企業としての成長、社会に新しい価値を提供ということで、ベンチャー企業という形で理研が認定し、支援していくという制度であり、株式会社Oについては、5月25日に理研の認定を受けており、それを基に、ICに正式な窓口となる住所、連絡先を記載いただいたという形になる。
委員長: 理研ベンチャーになると、どういう支援が理研から来るのか。建物を優先的に使わせてもらえるとかそういうものか。
代表機関説明者: 理研の内部に居室を構えることができるということは言われている。また、理研ベンチャーの認定ロゴがあるため、社会的に評価をしてもらえるという形で、会社としてはメリットがあるということである。
★ 最近、臍帯血の民間バンクが破綻し、そこから流出した臍帯血を使った治療を医療機関が実施したという事件が起きた。少し気になるのが、我々が審査している中にヒトの材料がたくさん入っており、共同研究でベンチャー企業などが関係している。そういうところにも、試料、情報が渡っているわけであり、そこが破綻したときに、その材料や試料はどのように担保するのだろうかというのが少し気になった。そこで足をすくわれて研究が滞るなどということがあってはいけないと思うため、これは何かの仕掛けを作っておかないと無理かなと少し思う。
 例えば破綻したといったときに、そこで預けていた材料などは全部、理研が回収できるような何か仕掛けでもあれば、最低、流出はしない。研究は遅延するかもしれないが、そのことの瑕疵で研究ができなくなるということは防げると考える。
委員長: 重要な点だと思うが、理研ベンチャーが持っているものは、理研が持つといったあたりのことはご存じか。
代表機関説明者: 理研との話の中では、そういうところまでの具体的な取り決めというのはない。
委員長: ベンチャーはいろいろあり、その中でヒト由来試料を扱っているベンチャーは、必ずしも多いわけではないのではないか。ベンチャーの仕組みの中に、それがあるかどうかは分からない。
説明者: 現時点では、理研の中で具体的な対応は今後の課題になっていると思う。
事務局: 理研ベンチャーに認定されていなくても、共同研究契約という縛りが一応入る。
説明者: 研究試料等の取扱いのところ、必要な研究試料及び材料を、両者合意の上相互に提供することができる。秘密保持の義務を負っているものとする。同意なしに受領した試料を第三者に提供してはならない。本研究終了後、遅滞なく試料の名称、数量等を甲または乙に報告する。また、提供当事者の指示に従って相手方に返却または廃棄するものとする。これらがサンプルの取扱いになっている。また、この契約の解除に関するところで、本研究の遂行が困難となった場合、中止の申し出で相手方が同意した場合、解散、コンソーシアムに重要な変更がある場合、これらについては研究を中止し、本契約を解約すると。そのときには、先ほどの両者が互いにそのことを前提に、指示に従って相手方に返却または廃棄するものとすると読めると思う。
★ かなり書かれているが、やはりこの規定をもう少し明確化した方がいいのかもしれない。相手側の機関が破綻してしまったら、なくなってしまう。破綻したというのは、義務を負わせたところで、それを履行することができないような義務なのか。理研側が守って、何かあるときは、回収できるようなルールにでもしておかないと。
代表機関説明者: コンソーシアムの事務局として、それに答える一つの内容を書いているのが、補足資料で、今回の共同研究契約書とともに結ばせていただくコンソーシアム協定書になる。ここに代表法人という項目があり、代表法人についての破産手続開始、民事再生手続等の事象が起こった場合は、コンソーシアムの代表法人として当然義務を負えないため、代表法人以外の幹事法人、他の法人が判断したときは、他の企業に変わることは既に明言されている。
★ コンソーシアムの破綻には何か対応できるようにされているのか。
代表機関説明者: 代表法人の破綻である。その場合は、代表法人という責任が負えないため、コンソーシアムとしての仕組みは、他の企業がそれを代替するという形にこの協定書で書かせていただいている。
★ 仕組みは考えられてはいたわけか。
代表機関説明者: そうである。協定書上では書かせていただいている。
委員長: あとは、共同研究契約書の別途合意書というところの中身がきちんとしていればいいのではないか。コンソーシアムの中で責任を持たないといけなくなるため、ヒト由来試料はどこか流出しないようにするとか、責任を持って管理・廃棄をするとしておけば、その内容そのものが自然に別法人に受け入れられるということになる。
代表機関説明者: そうである。
委員長: 共同研究契約の項目は、試料を対象としているが、一番肝心なのは情報だと思うが、それに関してはどうなっているのか。ゲノム情報もこの流れ図を見ると、外注したものが代表機関のデータベースに捕捉されるわけである。それに関しては、おそらく試料は廃棄され、実際にはデータとして保管されるのではないかと思うが。
代表機関説明者: そうである。データは言われるように保管する形になるため、共同研究契約書の中でその部分が不足しているのであれば、それを追記していく必要があるということか。
委員長: 一般論としてはビッグデータの時代になっているのだが、そこのところにみんな追い付いていない。
説明者: 研究試料等に関して、情報・データも含めた形で追加するようにする。
委員長: ここははっきりと「試料及び情報」など、明確に書かれたらいいのではないか。ヒト由来試料及び情報等。
事務局: 具体的に書いて、以下、等というのはあるが、この内容について共同研究契約書のひな型はオール理研の様式だと思うため、定義の部分をまず事務局の方で確認させていただきたいと思う。
委員長: 両方で確認してもらえるか。
説明者: 了解した。
委員長: 情報の方は、廃棄、譲渡しないなどかなり大変だと思うため、広くコンソーシアムで共有してしまった場合に、本当に全事業が終わったとして、きちんと廃棄されていることを全法人で確認しないといけないのではないか。かなりのものが個人情報になる。
説明者: 言われるとおりである。次の補足資料の「共同研究契約書(案)」ということで、実際にこのコンソーシアムと理研が共同研究を進むための契約を進めているのかという点について、現在、産連本部と代表法人との間で今、契約手続きを進行中である。
委員長: 目的、分担、実施場所、担当者、実施期間、31年3月31日。期間が短いがいいのか。その段階で延長するのか。
説明者: 研究フェーズ②が終了するところまでということになっている。
委員長: 我々としては、しっかりと共同研究契約書を結んでやるということを確認したかった。
説明者: 次がコンソーシアムにおける倫理審査体制として、代表法人から外部の受託機関である倫理審査委員会で審議していただき、承認ということで結果が得られている。
代表機関説明者: 基本的に臨床研究も含めた形で審査していただき、ゲノムも含めて我々の方でプレゼンした。ただ、その時点での審査をしていただいたという形で、今回審査していただいたことで、修正があれば、その修正を再度、修正の倫理審査にかけるつもりでいる。
委員長: どういうところの審査をしている等の情報はあるか。
代表機関説明者: 大手の製薬会社はほとんど使われているようなところで、このグループ自体の会社が、治験からスタートし、治験のいろいろな支援を一連でされているグループ会社である。 ホームページ上でも、実際にその審査された内容、企業の会社は開示されており、基本的に大手、よく知られた製薬会社や一般の大企業が使われているような審査になっている。
委員長: 厚労省が臨床研究の審査委員会を認定し始めているが、そこにここも入っているのか。
代表機関説明者: 認定は受けていない。
委員長: しっかりしたところであるということは分かった。
説明者: 次がアンケート項目が記載してある。これは、まずは研究フェーズ①のフィージビリティスタディの間で利用するアンケートとして現段階で考えているものである。
委員長: かなりの数である。毛髪だけではなく、食事とか運動とか暮らし、仕事。この委員会は、あまりこういう分野の専門家はおらず、公衆衛生、疫学といったところで使うようなものになっている気がするが、これは誰が考えたのか。
説明者: 基本的に毛髪診断コンソーシアムの参加企業からの希望、こういうことを聞いてみたいというのを募ったものである。
委員長: もともと毛髪とか頭皮とか研究しているため、情報としては集めていたものもきっとあるのではないか。
説明者: それもある。
 次にインフォームド・コンセント中の対象者の明記ということで、ICの資料に今回の研究では、成人の方を対象としているということを明記した。
 IC中への試料採取方法、危険性等の明記については、毛髪及び唾液の採取方法については、苦痛を伴う等の侵襲性はなく、感染等の危険のない安全な方法であるということを追記した。 
ゲノム解析の返し方については、本研究の目的で解析する遺伝子の変化以外は、十分な精度で解析できないことが考えられ、医療機関が診断等のために行う解析ではないため、原則としては遺伝子解析の結果を返すことができない旨を明記した。
情報の保護、匿名化等の説明図、コンソーシアム参加機関の役割、情報の行き場、倫理審査のやり方ということで情報の保護に関する安全管理措置として、個人情報の委員会の運用のガイドラインに従って組織的安全管理、人的安全管理、物理的安全管理、それから技術的安全管理のこの四つに分けて記載のとおり安全管理措置を行うということを考えている。
 コンソーシアム参加機関の役割等を整理・提示については、協定書の中で、実際にそれぞれの役割が分かるように明記している。参加機関の役割に関しては、ワーキンググループとしてカルテ作成、形態解析、組成分析、デバイス開発、データ解析、以上五つのワーキンググループに分かれて活動する予定であり、それぞれの役割、義務、責任等に関しては協定書の中に詳細を記載してある。
研究の同意、研究後の事業活動におけるデータ取扱い等の同意ということで、今回特に配慮した点は、研究から事業活動までを含んでいるということを実際に協力者の方々にご理解いただくために、説明文書等に十分な記載をした。また、企業における利用の明確化の記載も追加した。
 負担軽減金の有無の明記については、謝礼についてということで、「この研究に参加していただくことによる謝礼はありません」と記載を明記した。
 説明・同意の取り方として、電子的方法以外の同意文書取得ということで、「同意書は、本紙1部と共にその復写を1部作成し、本紙は毛髪診断コンソーシアム事務局の個人情報管理責任者の管理の下で保管」として、紙媒体で同意を取るということでご理解いただければと思っている。
 その他ということで、募集ポスター等については、補足資料のとおりである。また、ウェブにおける登録画面に関し、コンソーシアムの概要、モニター内容の簡易説明、氏名・生年月日等の入力、それからインフォームド・コンセントをしていただき、メール送信した旨を通知するページが出て、ログインするということで考えている。
委員長: 委員のコメントがある。
事務局: 説明文書について、同意項目に「提供する検体等が本研究に使用されるため、個人を特定する情報を付随させない形で、長期保存されることに同意します」ということで、ここで長期保存を聞いているが、説明文書の「研究終了後の検体の取扱いについて」で、ここに齟齬があるのではないかというご意見である。研究終了後の検体の取扱いについては、「本研究に用いた検体が、全く関係のない研究に利用されることはありません」ということで、この研究あるいは事業活動を含めた研究以外に利用されることはないということをここでは説明しており、同意された方について、この研究の中で長期保管するという形での同意になっているため、そこは明確に分かれており、委員会で確認したという形になると思うが、よろしいか。
委員長: この研究の目的のために長期保存するということだと思うが。
説明者: そうである。
委員長: 委員がはっきりさせたかったという点であったがほかにあるか。
事務局: 前回の説明時に、PC、ウェブ上で同意をチェックするという形を説明いただいたが、今回の研究については、まず侵襲を伴わない研究であり、介入も伴わない。介入というのは、研究目的で、いろいろな人の事象に影響を与えるような要因、例えば行動とか医療における予防とかいう形の中で、その程度を制御するような行為は行わないため、介入は伴わないことになる。 ただし、人体から取得された試料を用いる研究には該当することから、インフォームド・コンセントを受ける場合に、文書での説明は必ずしも個別の対面で行う必要はない、ウェブ上での説明文書という形で構わないが、自由意思に基づく文書による同意は、現段階においては成りすましの防止等の課題があるため、電子的方式、磁気的方式その他の知覚によって認識できない方式によることは想定していない、ガイダンス上は認めていないというような形になる。
 今回の対応いただいた内容としては、試料を返却、送付いただく際に、同意書については紙ベースで送っていただくというような対応を取っていただけると聞いている。
委員長: 紙ベースで送っていただくというときに、紙に書いてスキャンして電子メールで送ったら、指針の中に入るのか、入らないのかという議論に時々なるが、どのみち試料を郵送する際に入れていただくのか
事務局: そうである。
委員長: 順番にいろいろ聞いてきたことで、理解も深まったと思うがいかがか。
 私の方から前提としての確認で、まず今回は最初のフェーズ1で区切り、出してきていただいている。もう一つは、その説明文書の中にあるが、研究のフェーズと事業のフェーズというのは、なかなか切り離しができないため、このことについて説明をしっかりし、そこも含めて同意を取りたいのであると。その二つがセットになっているところに、さらにそれの長期的使用というのがあり、それもオプションで入っているが、この本体の研究と事業が一体化しており、それに対する同意を、完全イエスかノーかということで問いたいと。そのために、いろいろな説明を加えていただいたということになる。
★ 前回に比べ、いろいろなポイントについて整理されてすっきりしてきたように思う。
★ 参加企業の研究分担の中に一部の会社の役割が入っていない点と、この四つの助言法人がどのような助言をできるのか、広告代理店も入っているため、少し気になったが。
説明者: 一企業に関しては、ごく最近に加わったため記載漏れであり、組成分析のところに入っていただく予定である。助言法人については、毛髪診断そのものが新しいコンセプトでもあるため、一般の方々にご理解いただくための例えば広報的な役割とか、地方自治体等も、健康維持のためのいろいろな活動をしておられるため、高齢者の方々も含めて、健康維持のためにどのように診断を持っていったらいいのかということなどの助言をしていただくことを前提としている。
★ 今後、かなり一般的に期待されているため、企業の方も、それに応えるようにやっていくということがあると思う。期待というか希望というか、それが大きくなって、それに対応するために、何か対応がまずかったりするということは、今は全然ないが。
説明者: いろいろな意味で民間企業も入っているため、企業としての要請が過分に過ぎないように、まずは一つ研究としてしっかりしたものを作るというのが、我々のミッションだと考えており、そこはしっかり進めていきたいと思う。
委員長: その次のフェーズに入るときに、どのように広報されるか、発信されるかということは聞かせていただいた方がいいだろう。変更申請ということであったが、基本的には一度聞かせていただけるという理解でいいのか。
説明者: そのつもりでいる。恐らくこのフィージビリティスタディの間に、アンケートとか、それからどういうところに絞っていくのかというのが少しはっきりしてくるため、その段階で一度ご説明が必要であればさせていただく。
委員長: 今の委員のコメントは非常に重要で、かつ事業が一緒であるため、宣伝もしないといけないと思うが、できないことを約束してしまうとまずいため、倫理としても重要なところであり、本当にいいバランスを考えないといけない。あくまで研究的事業といって、何もかもどんどんできないという内容をどうやって入れるかである。
説明者: そうである。特に、本当に科学的エビデンスとしてつながっている分析情報を提案し、具体的な今のヘルスケア業界の中をきちんと科学的根拠のあるものにしたいというのが一つの願いでもあるため、その辺りをしっかり進めたいと思う。
委員長: 参考として、大きな意味では医学系の研究のコミュニティにいる人間としては、やはり反省としては利用側の問題があり、科学的なデータが、歪められた形で発表されていたということがあるため、それをやってしまうと大変なことになる。大手の、実際に物を作っている会社がたくさん入っているため、それによってたくさんのものが売れたとなると、それは消費者に対する詐欺であり、研究で宣伝そのものになってしまうといけないと思う。そういうことをやる気になっておられること自体は、社会的に評価されていいと思うが。
★ 共同研究契約書で、研究の目的には個人情報やデータに関して、多分遺伝情報も中に含まれていると思うが、研究材料等の中にやはり遺伝情報を含めるのではなく、別途書くべきかなと思うが。
委員長: 情報(ゲノム情報を含む)と書いてしまっていただいた方が分かりやすい。
★ 結局残るのが情報であり、それがその後利用されるときに一番有用だと思うので、そこのところをしっかりしておけば、あとは心配ないかと思うので。
委員長: 多分これから、こういうのも含めて、社会の中でゲノム情報というのは変に怖いものではないが、例えば遺伝病の方にとっては大きな問題で、それは実際差別につながるものかもしれないという、オールオアナッシングではない、みんなが使っている、みんなが持っている、そしてそれを使って研究開発も、製品開発もやるようなものがゲノム情報である。一方で、どこにでもあるだけではなく、一部の人にとっては非常に厳しい差別を生むような特殊でセンシティブなものであり、当たり前であるということとセンシティブなものであるという、この両方を社会が理解していかないといけないと思う。そういう意味では、ゲノム情報を使うということは、怖がらずに言葉にしていかないといけないと思う。
説明者: 了解した。
委員長: 私の方から確認の質問で、まず1点は、このコンソーシアムに非常にたくさんの企業体が入ってくるが、有名なところでもあり、しっかりしているのは当然ということになるが、全体の運営というのは非常に大変だと思うため、運営の運営体というのがどういうものなのか。もう1点は、事業ではあるが、試料提供者、研究参加者に利益がない、謝礼も出ない。しかし、この事業によって、このコンソーシアムの企業が製品開発をし、それが大々的に売れることが5年後に起こるかもしれない。そのとき、「あれは私が研究に参加したから、例えばX会社は年間10億円儲けている」ということになる可能性がある。やはり何かそこは少し配慮が要るのかなと思うがいかがか。
説明者: 1点目のコンソーシアムの運営は、理化学研究所と、毛髪診断コンソーシアムとしては、研究代表を理研の私が務め、この構成している法人の中の代表法人をO社が務める。この中で幹事法人と呼ばれるものは3社が幹事法人として2年後以降も引き続きデータの維持・保管を進めていくという方針になっている。それ以外の企業に関しては、定期的な全体会議、ワーキンググループの会議等々を繰り返し、全体の意思疎通、進捗等を把握し、データの維持・管理に努めていく。
委員長: 倫理指針では、研究参加者に研修の受講を義務付けているが、これはどこまでの範囲を見ないといけないのか。
事務局: 研究従事者、実施者に対する研修、教育については、コンソの方で、倫理教育というか、指針の話を含めた形で、何がしかの講習というのは予定されているのか。
解析担当機関説明者: 安全管理措置の委員会の中に書かせていただいているが、実際の情報セキュリティに関する部分であるとか、倫理規定に関する部分であるとかは、年に1回、今回のコンソーシアムに参加している企業に勉強会を催して、そこに主催していただくという対応を取ろうと考えている。
委員長: 了解した。試料・情報を実際に取り扱う方々は、倫理指針としての研修を受けていただけるということでお願いしたい。
説明者: 二つ目の質問は、現段階としては報酬等を予定していないため、基本的に研究活動にご協力いただくという方向で動いている。例えば大規模でサンプルを集めたり、将来事業活動ということになると、将来その点に関して、何らかの謝礼が発生する場合がある。そういう形で懸念の点に対して、少しあらかじめ手を打っておくという考え方も正直ある。その場合には研究フェーズ2の段階でまたご相談させていただく。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 前回は非常に危惧したが、組織的、内容的、倫理的、情報安全管理に関しても全て作ってきたという感じであるがよろしいか。幾つか指摘があったところは、修正していただいた上で、まず第1フェーズを見据えて、条件付き承認ということでよろしいか。次のフェーズでもう一度上がってくると思うため、本格的な大規模展開、事業化に関してはそこで確認ができる。理研としてもきちんと動いてもらう必要があり、動くとそれはそれで社会的にはいいことになるとは思うが。これを分析したところから本当に何ができるようになるのかというのは、サイエンティストの立場から見てどうか。
★ 診断にはおそらく使えると思うが、それもこの質問事項にあったように、女性はパーマをかけている人が多いため、結構毛髪は傷んでいるであろうし、その辺をいかにそういう状況から、たくさん試料を集めて有用な情報を得るかということを目指しているのだと思う。普通の皮膚と違い、1本抜いてもあまり惜しくないかなということもあり、そういう意味ではコストパフォーマンスのいい情報を得ることに将来はなるのかなと思うが、現段階ではやはり未知数である。

2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)

受付番号: KOBE-IRB-17-14
  「器官発生プログラムを再現した毛包再生医療の実用化にむけた基盤技術の研究開発」
研究実施責任者: CDB器官誘導研究チーム 辻 孝

【概要】
 研究実施責任者の辻チームリーダーより、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれ、承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: クリニックから情報が行くのか。
説明者: その予定である。
委員長: 共同研究機関のここだけに入りたいということか。ゲノムの情報ではなく、かつ個人が特定されない情報が行くということか。
説明者: そうである。
★ 動物への移植試験があるが、これは最終的にやる研究機関はどこなのか。大学との共同研究で先生が理研でやるのか。
説明者: 動物実験等に関しては、理化学研究所とK大学で一部の動物実験を行う。
★ K大学の医学部か。
説明者: そうである。K大学医学部の方でも一部のサンプルに関しては、動物への植毛試験、皮膚移植を行う。
★ 共同研究でたくさん動物実験をやるときに、倫理的な問題として、適切にその動物実験が行われるというのは、何かその仕組みがあるのか。例えば理研でやるとしたら、理研で動物実験の規程があり、それをきちんとやることは間違いないと思うが、共同研究のところでも同等ぐらいのことを行える体制等の確認はどうしているのか。
説明者: 共同研究機関内で動物実験の申請書を出し、教育訓練を受け、それぞれの機関ごとの規程に従って実施するということになっている。
★ 動物実験の質、倫理的な質について、理研とK大学の同等性を何かで確認する方法を持っているのか。
説明者: 今のところはないと思う。
委員長: それは、日本全体の問題として提起していくしかなく、基本的には各機関の動物実験から見るしかないというのが現場の立場ではないか。
★ 今回はしっかりやられることから、そういうことを何か作ったのかなと思った。国際的なAAALAC Internationalという認証機関ではそれを求める。そういう仕組みを今回は作られたのかと思っただけである。
委員長: ぜひ覚えておいていただいて、理研のようなところにおられる方々が声を挙げて、国がしっかりお金を出し、全部のレベルを上げつつ標準化していくように。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 問題ないのではないかと思うため、変更に関しては承認ということでよろしいか。

 

3)ヒト由来情報を用いる研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-17-19
  「寝環境と疲労、学習意欲に関するアンケート調査」
研究実施責任者: CLST健康・病態科学チーム 水野 敬

 

4)ヒト由来情報を用いる研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-17-13
  「小児・思春期の飲料摂取による抗疲労効果の検証」
研究実施責任者: CLST健康・病態科学チーム 水野 敬

【概要】
 研究実施責任者の水野上級研究員より、本研究計画(2課題)の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれ、KOBE-IRB-17-19について承認とされた。また、KOBE-IRB-17-13については、謝金の考え方等について審議が行われ、金額について検討することを条件として承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

<KOBE-IRB-17-19>
委員長: 細かいことで、研究実施場所の追加も一部ある。
説明者: 研究実施場所の追加で、IIB棟の2階にも臨床試験室等を設け、そちらの方でもデータを扱いたいということで、実施場所の追加もさせていただいた。

<KOBE-IRB-17-13>
★ 増やすというのは1回やってみたけれど、少しデザインを変えて、すでに10人は実施したが、あと30人やりたいという話なのか。
委員長: 30人セットで解析したい、研究データとしてセットにしたいということか。
説明者: そういうことである。
委員長: 1日増えるということが、謝金1日7000円で2万1000円だったのが、2万8000円になるのか。
説明者: そういうことになる。
委員長: これは小学生か。
説明者: 小学校4年生から中学校3年生。
委員長: 親は付いてくるのか。その親子にその額が。
説明者: そうである。交通費もその中でまかなっていただくことになる。一生懸命やっていただくと、それなりに疲労もする。
委員長: 単純に3分の4倍していいのかなという気もするが、何か検討はされていないのか。
説明者: 拘束時間が、1日目は疲労負荷がないため、1日目の金額の減額が検討できる。
委員長: 前回も、一般的にこういう研究分野での状況を聞き、変ではないという答えを頂いたと思うが。
説明者: 実際にO大の臨床研究で、この年齢のお子さんを対象にした研究では、その金額で実施した。いろいろと調べたが、こういったお子さんを対象とした研究がなかなか無く、O大の規定に準じた形で、今回もセットさせていただいた。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 謝金については、親子で行って真剣にやるにしても、ものすごくストレスがかかる話でもなく、この金額がもらえるということが、何か少し。
★ 例えば図書券がもらえるというのであればまだ分かるが、価値観が変になってしまうのではないかと。
委員長: 医学研究に対してということで。
★ 本当に倫理的な問題だと思うのだが。
事務局: 1日目は説明だけで半分程度の時間であるが、検討いただく形にするか。
委員長: 基本的には承認ということで、再検討して返してもらい、聞くことにするか。承認とすると、7000円のまま承認したことになるのか。
事務局: そうである。承認するが、できれば検討いただきたいというのがコメントになる。
★ 神戸市の財団を使ってヘルスケア開発市民サポーターとしてボランティアを募ってやっているということで、いろいろな例を持っているのではないか。
委員長: アンケートは無料である。
事務局: 最初の計画は、アンケート項目に応えるだけで謝礼はなしである。
★ こちらは、ストレスがかかり、パソコン上でやり、しかも言われたとおりの時間で飲料を飲んで、またタスクをしないといけないため、アンケートに答えるだけとは違うわけか。
委員長: 1日目の金額について、神戸で行われているさまざまな調査研究における対応についても、再度どのような状況なのかをお教えいただきたい、検討いただきたいということで。
事務局: その条件は、前回委員会の条件になっており、一応、周りで実施されている状況は確認していただいた上で承認しているため、そこにまた戻ってということになるが。
委員長: 了解した。では、1日目の金額だけ少し検討された方がいいと考えるということで。

5)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-17-17
  「高品質な分化細胞・組織を用いた神経系及び視覚系難病のin vitroのモデル化と治療法の開発」
研究実施責任者: CDB非対称細胞分裂研究チーム 六車 恵子

6)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-17-18
  「神経系難病患者由来iPS細胞の樹立・分化ならびにその解析」
研究実施責任者: CDB非対称細胞分裂研究チーム 六車 恵子

【概要】
 研究実施責任者の六車専門職研究員より、本研究計画(2課題)の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれ、いずれの課題も承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 民間の企業に材料を渡して調べてもらうということで、そこがつぶれたらどうなるか。このたび臍帯血が流出してしまうという事件が起きたが、そういうところに何か工夫しておかないと駄目かなと思った。今回の変更で委託するこの二つの企業はめったなことでつぶれることはないとは思うが、民間企業であり、どのようにされるのか。
説明者: 私どもで取れる対策としては、渡した細胞については回収するということが、どこまで可能かどうかということは担保できないため何とも申し上げられない。ただ、バックアップとして、こちらに持っているため、例えばよそで何かそれを基にして解析したような結果が出てきた場合には、何らかのクレームをつけることは可能だと思う。もちろん照合ということはできないが、非常に希少な疾患であり、何らかの形で対応できるというのは一つ考えられる。また、基本的に患者の細胞そのものを提供機関に渡すということは、おそらくない。例えば血清などは病原性のチェックでゼロということではないので。
★ 検査機関であり、普通に臨床的にお願いして出してしまっていると思う。
説明者: そうである。
★ 常識的に今までも、一般論としてはやられているところで、それをただ利用しようというだけであり、特殊な場合ではないと思っているが、今回、そういう事件がたまたま起こったため、そういうときどうなるのかなと思った。
説明者: 契約を交わすに当たって大事にしていることは、これまでの実績、それも直近の実績を非常に重視している。何検体をどのような形で扱っていて、どういう形で報告するということは、非常に細かく限定した形で契約させていただいている。
★ 例えば何かでサーティフィケートを持っている機関しか付き合わないといったような仕掛けはあるのか
★ こちらとして、条件はこれぐらいの品質保証をできるということ。解析に対し、これぐらいのグレードをちゃんと返してくださいと。それに対し、どういう報告をするかということも、二重三重にきちんと封をするとか、持ってくる人間は一切その生データを扱わないとか、そういった形の保証はできるが、会社そのものの担保というのはこちらでは何ともしがたい。
委員長: ベンチャーではないため、つぶれる前にやはり社会的存在として、自分たちからいろいろ話があると期待すると思うが。そういうこともあるということを、知っていただく機会にしていただくということで。
説明者: 了解した。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 委員からの話は正しいご指摘で。どんどん増えているため、やはりみんな気にしないといけない。
★ 一般論としては、もう臨床材料が山のように行っているわけであり、もしかしてつぶれたら、それを何か悪用しようとする人が出てくれば、いくらでもできるような体制なのかなと思う。
委員長: 例を挙げると、検査機関はどちらかというと、毎回機関に情報等が残らない形で返しているのではないか。
★ 処分していると思う。
委員長: 臍帯血のようなものをストックしているところ、二次的に使ったときに意味があるようなものをストックしているところの方が問題で。結構心配は心配で、たくさん入っているうちに、どこかの担当者がいい加減なことをしていたら大変だと思うが。
 変更自体は承認ということで行きたいと思うがよろしいか。

7)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)

受付番号: KOBE-IRB-17-16
  「網膜変性患者等のiPS細胞由来網膜細胞の解析、並びに同細胞を用いた網膜変性疾患治療法の研究」
研究実施責任者: CDB網膜再生医療研究開発プロジェクト 高橋 政代

【概要】
 研究実施者の森永研究員より、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわた。審議では、本研究計画の目的の範囲等について議論され、試料の作製場所の確認及び研究目的の記載内容を検討すること関しコメント付した上で承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 追加する共同研究機関は海外のプライマリーの細胞を使用するのか。
説明者: ドナーから血液を頂き、iPSを樹立したそうである。
委員長: 海外の試料をそのまま日本に持ってきてか。
説明者: 海外で作っている。
委員長: 支社があるのか。
説明者: そこは確認不足かもしれないが、研究計画等、事務局には出している。共同研究先の倫理委員会を通ったというものを提出済みである。
委員長: 入り口はまず海外の方の細胞から来ており、CiRAのものではなく、それをこの共同研究で使うという話か。
説明者: そうである。
委員長: iPSをどこで使ったかという情報が今ないわけか。
説明者: そうである。変更箇所としてはそのくらいで、同意説明文書も指針対応の部分で幾つか修正している。
委員長: 「個人情報を切り離した」というところが表現を変えている。それから、国内外の学会や学術情報及びデータベース上で公表されることがあるという、海外に出るということを明示的に書いたということ。
説明者: 指針に対応したつもりである。
★ 情報管理者の研究員というのは非常勤なのか。
説明者: 常勤である。
★ 管理者という人は、常勤の人だけにするとか、何か規定があるのか。
事務局: 分担管理者については、個人情報管理者である事業所長の責任体制の下で、分担管理者を定めるという形で規程上はなっているが、その方についての細かい身分的なものはなく、適正な方を定める。
委員長: 常勤でないといけないというのは、指針上はないと思う。多分非常勤であろうが勤務する限りは責任があり、雇用契約があるため、やはり情報の取扱いに関しては、しっかり責任があると思う。
★ 非常勤でもいいのではないかと。
委員長: この人は駄目、この人はいいという線は簡単に引けないと思う。どちらかというと、その人がしっかりした人であるかどうかという中身の問題になってくる。
説明者: 今回、常勤で、遺伝子解析の方を主でやっており、この研究自体からは外れているが、対応表等を管理してもらうにはちょうどいいということで。
★ 健常者5名が8名に修正されているが。
説明者: 当初は理研のボランティアの方5名を想定していたが、プラス海外のドナーの方1名が入ったこと、あとはCiRAのドナーの方も入れた方がいいかということで。
委員長: 計画書の将来的に広く医療として提供することを目的にという追加されている部分で、CiRAからiPS細胞ストック等によりマスターセルバンク、ワーキングセルバンクを製造し、医療用RPE細胞を製造して「臨床研究に応用していくことを予定しています」という文章で、このままだと臨床応用にこの細胞を使うように見えるが。
説明者: 将来的には。ただし、この研究計画の中ではそこまでではなく、臨床応用に向けてのいろいろな研究開発をしていきたいというところで、新たに本当にそれを臨床に使うときは、TR委員会でも以前審査していただいているが、あのような形になるかと思っている。
委員長: この同じ細胞になるのか。
説明者: そうである。CiRAの細胞になる。
委員長: 「将来的に」というのが、どこにかかっているのかというのが、これだと、「将来的に」が、「臨床応用研究に応用していく」にかかっているようにも見え、そうすると、ここで扱った細胞を、そのまま臨床応用に使うように見えるが、今の説明は、もう一度それをもらい、同じやり方でこの研究の治験を基に、ちゃんとした細胞を作るということになるのか。
説明者: そうである。CPCでそのための治験用の細胞というのを作っていくことになるのかなと。
★ 実際には細胞株ができていて、株の一部を使い、残りはどこかにストックされており、それをやがて臨床に使うかもしれないよという意図か。
説明者: そういうことである。それがセルバンクを作るという意味である。
委員長: それをこの研究の中でやっていくように予定していると書いてあるため読めるのだが、この「予定しています」は、研究の中でやることか。
説明者: 本当に臨床に使うのはまた別の研究計画だと思うが、ワーキングセルバンクを作るところまでは、この中に入ると。
委員長: 将来的に広く医療として提供することを目的に、企業との共同研究の下、ワーキングセルバンクを、将来、医療用RPE細胞を製造することに役立つ、用いるマスターセルバンク、ワーキングセルバンクを作製することを予定しているのか。
説明者: そうである。
委員長: 少し変えていただいた方がいいのではないか。マスターセルバンク、ワーキングセルバンクを作ることがこの研究の目的なのか。
説明者: そうである。この範囲では。
委員長: 臨床応用することが、この目的ではない。ちょっと整理いただきたいと思う。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 指針改正への対応をしていただき、海外から細胞が来るということも聞かせていただいた。先ほどの表現を少し整理していただきたい。それから、海外から来るiPS細胞というのは、どこで樹立されたものかということをご説明いただきたい。
事務局: コメントでよろしいか。
委員長: それで承認ということにしたいと思うがよろしいか。

8)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)

受付番号: KOBE-IRB-17-20
  「ヒト由来試料を用いた微量分析システムの開発」
研究実施責任者: QBiC一細胞質量分析研究チーム 清水 義宏

【概要】
 研究実施責任者の清水上級研究員より、本研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、研究の目的及び方法等について議論され、科学的妥当性等についての判断に至る説明が明確ではないということで、審査継続とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 専門的な技術でもあり、倫理面だけではなく、研究そのもののやり方などについてもお聞きいただいた方がいいと思う。期待としては、こういうものが世界中、そして日本で先に発展して使われるようになるという、非常に世界的にも重要な可能性を持つものであるがいかがか。
事務局: 本日欠席の委員から質問が幾つか来ている。まず最初が、課題名に「がん診断」や「がん」という言葉が入っていないのはなぜか、研究の課題として入らなくていいのかという質問になる。
説明者: ヒト由来試料全般で幹細胞を含むという形で、細胞ではないものも含まれるため、ヒト由来試料とした方が適切かと思った。
委員長: 具体的にはがん診断ということで、がんの診断法の開発に向けたといったことを入れられないか。
説明者; 入れても問題はない。がんの診断に向けたヒト由来試料。
委員長: まだ入れてくださいという意見ではないため、その必要性等についてご検討いただき、委員会の中で確認いただければ。
★ 将来的に広がる可能性等はないのか。
説明者: 基本的には診断に向けた技術開発を行っていきたいと考えている。
委員長: 診断に向けたというのが、多分診断法の開発ではないのか。この範囲の中で薬事承認まで行くわけではないため、その基礎研究なのか。
説明者: そうである。一応基本的に大きなくくりで言うと、細胞を使い、どういう細胞かということを調べる技術の一環として、診断としても使えるのではないかという基礎研究である。
委員長: こういう議論の仕方というのは、サイエンティストの立場から見るのか、目の前で苦しんでおられる患者の方から見るのかで、いろいろな表現が極端に変わる。委員の指摘というのは、両者が入った方がいいのではないかという話で、サイエンティストの立場だけから見るのでは、よい表現になっていないのではないかと。がん診断の開発を目指したといったことでいけるのではないか。
★ これは、こういう微量のものが、例えばこういうパターンが出たらこういうがんというように、ある程度1対1で対応できるような結果が出てくるのか。
説明者: できればいいと。というのは、本研究では代謝物を100ぐらい見て、定量もできることを目指している。例えば化合物Aがどれだけあり、化合物Bがどれだけありという、そのセットをいろいろな細胞でみて総合的に評価し、細胞が何かということが分かるという形で、具体的ながん由来のCTCかというのを診断しようとしている。
★ 例えば成熟したがん細胞と、それからがん細胞に向かって変異していくような途中の段階の、まだがん細胞とはいえないが、明らかに正常細胞とは違い、変異しているような細胞のパターンもこれで分かるのか。
説明者: 分かる可能性もある。
★ 説明同意文書にはがんと書いてある。
説明者: 共同研究であり、H大学とGセンターのプロジェクトの一環として共同研究が入っており、これらの機関では、我々との共同研究以外の研究もやっているため、大きなくくりでサンプルを採取しているうちの一部を頂くという形になっている。
★ 「対象と人数」というところで、成人60名、それは頭頚部がん等患者であり、がんだと思うが、その下はがんではないのか。
説明者: がんではない。
★ 未成年で固形腫瘍患者200名。がんでもない人も問題にするということが現実的に出てきている部分ではないのか。この200名という人はがんと全然関係のない、違う基準で調べていくわけか。二つの種類を同じようなやり方でやるため、二つの種類のものが発見できると。
説明者: 同じような解析をするが、患者によって血液を循環している少数の細胞に含まれる成分が異なれば、例えばある解析結果を持つものは、こういう患者からの血液だろうといった。
★ ということは、解析に一定のものがあり、その解析をした結果、この成人と未成年、60名と200名というのが、別々のことをやらずに、同じ結果で2種類のものが出てくるということか。
説明者: 基本的にはそういう形である。
委員長: それは比較するのが目的ではなく、たまたま両方調べたいのか。
説明者: そうである。
★ 両方の患者がその方法で発見できるのか。
説明者: 比較する対照は、がん患者ではない人と比較して、違うといったことを。
委員長: 書いていないが、コントロールとして解析するのが、何人かいるのか。
説明者(2): 細かいところを少し補足させていただくと、まず、小児固形腫瘍患者はがんである。小児がんと呼ばれる、非常にレアな子どもなのにがんになってしまうというケースで、固形なので、組織にそういうがんができてしまっている。末期の患者になってくると、がん細胞が組織から転移し、その転移するときに、血液に侵潤するがん細胞がいわゆる血中循環がん細胞、CTCと呼ばれるもので、これが患者になるとまず増えてくる。患者でなければ、基本的にはない、そういうものになる。そういう違いがあるため、比較対象として健常者にはほとんどいないため、CTCの解析は、あまりそういう比較ができない。どちらかというと、がんの種類、例えば胃がんであったり喉頭がんであったり、いろいろながんによって抗がん剤の効きやすさが違ってきたりする。そういったがん、それぞれの特異性、特性を調べ、最終的に抗がん剤などのテーラーメード医療につなげていくようなところまで考え、こういう計画を出させていただいている状況である。
委員長: 確たる理由と、比較対象がなくて大丈夫ということがもう一つ分からない。がんばかり調べても、がんの特徴を記述できるが、何が駄目なのかというのが分からない。
説明者(2): まず、がん細胞の組織死がいるという状況が、普通にがんの患者か、そうではないかというところで違う。それで、健常者ではないということを見分けるというよりは、がん患者にまずいるということ自体で、がん患者であるということがある程度判断でき、そのがんのCTCの解析により、どういう抗がん剤が効くかとか、どういうがんかというところが分かってくると、がん同士の比較にはなるが、最終的に、より効果の高い診療に持っていけるという目的でやっている研究である。
委員長: その結果は、医療機関の方に戻っていき、それでその患者にどういう抗がん剤が投与されているか、どう効いているか、そういう情報をマッチさせられるということか。
説明者(2): まずは、がん細胞の種類である。例えば胃がんであれば、こういう薬が効くとかというのは、既に症例データとして上の方持っている。CTCの解析により、どういうがん細胞かというのがまず分かるようになれば、実際にがんがここにあるというのを開き、通常のバイオプシーで、手術して侵襲的な診断をしなくてもいいという形に最終的になるのではないかと考えている。
★ 今の問題は、何をコントロールとするかであるが、それは研究方法のところに書いてあり、血液を取った中にCirculating Tumor Cells、目的とする末梢循環腫瘍細胞以外に、普通のリンパ球とかたくさん入っているわけであり、それを正常な細胞として、専門用語で言うとコントロール細胞として扱うと書いてある。
★ これは頭頸部がんであり、胃がんの話も出たが、上皮細胞である。血液細胞ではない。そうすると、例えばそういう固形腫瘍の人のCTCというのは上皮性のがん細胞だと思うため、コントロールにノーマルの上皮細胞でないといけないのかなと思ったりするが、それはどうなのか。普通の末梢のリンパ球で、オリジンの細胞ではないものをコントロールとして、上皮性のがん化した細胞と比べるというのは何か違うような気もするが。
説明者: もちろんコントロールとしていろいろな細胞を見るというのは一つの手であるが、基本的にはプロファイルで細胞腫を見分けることができることを目指している。例えばリンパとCTCのプロファイルが分かれれば、取りあえず違うものだと見分けることができることになると思う。
★ それでは駄目だと思う。やはり細胞腫、オリジンが違えば違って当たり前なので。
説明者: そのプロファイルがある傾向を示すかどうかというところまで見ることができると思うため、それで何とかなる気がするが。
★ しかし、それががんとどう関係があるかというのは。
説明者: もちろんそうであり、がんの患者から採取したCTCを使う必要があるというのはそこだと思うが。
★ そうではなく、委員が言われたように、正常な細胞と、同じ種類の異常な細胞とを比較しているのではなく、もともと細胞腫が違うのであれば、中身の代謝産物とかも違ってくるのが当然なので、どうしてこれががんの特徴なのかと言えるのかが、根拠がないのではないかという質問である。私も同じように感じた。血液リンパ球というのは。そういうのを問題にしているわけではないのであれば別にいいが。
説明者(2): 今回リンパ球をコントロールと書いた理由の一つとして、CTCは非常に少ない。血液の中、10億、100億という血球の中で、数個という非常に少ないものである。表面に特定の膜タンパクが出ているようなものを抗体でラベル化し、FACSで分けてくるという操作をしてもらうことになっている。そのときに、偽陽性としてリンパ球が少し混じってきてしまうということで、最終的に顕微鏡の下で殻があるものがCTCであり、リンパ球には核がないということで、万が一混入したときに、診断としてリンパ球が実際に将来的に応用がうまくいったとして、CTCを分離するときに、そういうものが混入していたときに、リンパ球が万が一、CTCだと考えられて解析されたときに、それはCTCではなかったとはじけるようなシステムを作るために、今回リンパ球を一つのコントロールとしている状況である。もちろん、言われるように、CTCがどの細胞を由来してどういう変化をしているかというサイエンティフィックな裏付けを取っていくというのは大切だと思う。しかし、今の段階の目標としては、それぞれのがん患者のCTCでクラシフィケーションができるかという、まず大ざっぱな違いが見えるかというのを見た上で、さらにその違いから、どこのバイオマーカーが出ているというところが分かれば、先ほど言われた上皮系の細胞、オリジンとなるような細胞との比較も展開していけるのではないかと考えている。
委員長: そのために60名は60名中の、200名は200名中の陽性を見たいということか。
説明者(2): そうである。
委員長: よく聞くのは、このリキッドバイオプシーでシングルセル質量分析まで行かなくても、たくさん集めておき、今サーキュレートしているがん細胞が転移能力の高いものか低いものかを見たいというのはよくあるのではないか。同じ60人、200人のがんの中でもいろいろな多様性があり、どういうプロファイルであればこういうがんで、こういう薬が効きやすいというのを、最終的に診断のprecision medicineというように持っていきたい、そういう話ではないのか。
説明者(2): どのバイオマーカーで何を測ればどういうことが分かるかというのも、実際のところはまだ分からない状態というのも事実である。実際には、例えば胃がんの患者であれば、胃がんの細胞が由来と思われるが、それがある程度進んでいれば、そうではないかもしれない。その辺のまずファーストトライアルという形で、プロファイリングを行い、どれくらいそれが由来のがんの違いでクラシフィケーションできるかといったところが見えてくれば、次のステップに行けるのではないか。
委員長: この委員会では、よくこういう形の質問で、先ほどの関連みたいなところがあるが、メソッドがあるからやってみたいというのは倫理的には許されない。この患者を相手にこれだけのサンプルを集め、このメソッドを使うとこういうことが分かるので、そのために貴重なヒト由来のサンプルを使う、その患者さんの情報を使うとかいう形である。そのときに、先行研究として現状こうなっているので、次のステップとして、これをやることで価値があり、だから私たちは、ここはこういう問いを立てたということを、ある程度、専門外の人も含めた委員会で説明していただく。しかし、それが少し分かりにくい状態になっている気がするのが。
説明者: これまで、いろいろ培養細胞や植物細胞で、細胞のプロファイルが分かるという前提があり、それと同じような手法を用いて、腫瘍細胞のプロファイルをきちんと同定できるかどうか、同定できるということは、患者の血液を調べれば、質量分析を用いた解析によって、患者の状態を知ることができることにつながるのではないかと考えているが。
委員長: その状態というのが、どういう患者の病気に対する治療の、どういう側面に対するベネフィットなのかというのが。
説明者: 最終的には、がん患者だけではない正常と思わしき人であっても、血液から診断ができるようになるというベネフィットはあるかなと思うが。プロファイルを知ることによって、こういうCTCが紛れ込んでいるといった可能性はあるのではないかと思う。
★ 今回の研究で、頂こうと思っている試料は何なのか。がん細胞は。
説明者: 取らない。
★ 血液しか取らないのか。
説明者: そうである。
★ 血液の中にCTCが混ざっている、それがおそらくがんと関係するのではないか。CTCの中に何らかのマーカーか何かがあり、がんと関係しているのではないか。それを分析すれば、がんが診断できるのではないかという狙いがあるのか。
説明者: そうである。
委員長: がんの診断の中身がよく分からない。がんであるということの診断なのか、がんの中のいろいろな違いの診断なのか、プロファイルが分かるというのは、その分かることの意味が今一つ分からない。
説明者(2): 先方で患者に説明する資料の方で、先方の研究ともリンクしてくるが、遺伝子解析をされているリキッドバイオプシーの中には、遊離遺伝子などもあり、その遺伝子を使って治療効果の研究をしたいというのが、まず先方のメインとされている研究である。それに加え、使っていない、先方では解析できないCTCのプロファイルをさらに見ることにより、遺伝子情報だけではなく、実際がんがどういう動態でがん化しているか、特定の代謝経路のここがブロックされておかしくなっている、そのためこういう抗がん剤が効く。そういった予測が立てられることを目標に、患者に血液などをくださいという同意書を書いていただいている。
★ それは、260と書いてあるもの、成人の方のことか、両者共にということか。
説明者(2): どちらも共にである。
★ H大とGセンターか。
説明者(2): Gセンターである。H大学の方も確かゲノムDNAを取るという研究計画になっている。もちろん言われたように、CTC単体でプロファイリングを行って、特定のこれが絶対にというのが決まるかどうかということは分からないが、そういったいろいろなものを複合的に見ていくことによって、新しい診断法が確立できる可能性が十分あると思っている。
★ CTCの定義も当然考えられた研究だと思うが、当然、血液の中には有核細胞で、がんとは関係ない細胞で何か流れているものをどうやって見分けるのか。取ってきたものの中のプロファイルを見たときに、この細胞がCTCであるというのは、何かもう分かる方法はあるのか。
説明者: もともとCTCとして分離している。
★ 他の細胞とCTCとは、もう見分ける方法は確立しているのか。
説明者: そうである。
★ だから、がん細胞を取ってこなくても、CTCと分かるため、そのプロファイルを見ればがんだと分かり、特に遊離して流れているものはこんなものだというのは分かるはずであり、それを見ればいろいろなことが分かるということか。
説明者: そうである。
★ CTCを抗体か何かで標識すると言われていたが、その抗体の性状というのは分かっているのか。こういうがん細胞にがんタンパクが表面に付いていたら、そのタンパクをキャッチするために、抗体を付けて何かで光らせ、FACS解析するとかという形か。そうであれば、がんの種類によって、細胞表面に発現されているタンパクの種類が違うことはないのか。
説明者: あり得ると思う。
★ そうすると、いろいろながんの種類を扱ったときに、発光させる抗体を全部変えていかないといけないのでは。
説明者: そこは大丈夫である。特異的な発現を示すタンパクで。
★ がんタンパクは、全てのがん細胞に共通のものを光らせるということなのか。
説明者: そうである。
★ そのようながんタンパクがあるのか。
説明者: ある。
説明者(2): 現在、CTCの各種を絶対的に判別する方法はなく、特定のタンパク質をラベル化する方法が一般的で、それで捕捉したものは、全てCTCであるというのは先行研究で分かっている。ただし、全部のCTCをそのように測定できる状態にはなっていないのではないかと言われているが、それが誰もまだ分かっていない状況である。
★ ある特定のマーカーの付いたCTCと定義されるその細胞について、これから分析を行うということか。
説明者: そういうことである。
★ それ以外のいろいろなものがあるかもしれないが、それは今回関係ない。特定のものと取れるもの。次の質問が、そういう表面マーカーはいろいろなのがあると思うが、今回は多種類を使うのか、それともある一つのものでやるのか、もう決まっているのか。
説明者(2): 今回はまず一つ特定の抗体で光らせるということでやると聞いている。
★ その抗体はこの頭頚部がんの患者においては割と発現率がいいのか。
説明者(2): そのように聞いている。
★ それでこういうがん細胞を選んだということか。
説明者(2): そうである。
委員長: このやり取り全体を見るに、大きな医学研究、がん研究の一部を技術的に委託しているようにも見えるが。それとも、理研のグループとしては、がん研究として捉えているのか。それとも、自分たちはとにかくCTCの質量分析をすればいいと捉えているのか、どちらなのか。医学研究の一翼を担っており、最終的に治療法開発の基礎部分を一緒にこれからやっていこうとされているのか。
説明者: もちろんである。
委員長: あるときは植物の人と組み、あるときは動物の人と組み、あるときはこのがんの大学などに、とにかく分析さえしてデータを返すという感じではないということか。
説明者: もちろんそういうことではない。
委員長: そういうことではないとすれば、やはり二つの種類のがん細胞を使うことの意味と、それを使って、それぞれにどういうがん研究としての問いを立ててやっていくのかをもう少し整理して、説明できてほしい。例えば、小児の方は悪性度等の研究をすると書いてあり、成人の方は、実際のがんを見ないで細胞だけで調べられないかということで、説明文を見ると少し目的が違うように見えるが。このGセンターの方は非常に大きく、研究の目的については、「血液中のがん細胞の遺伝子を調べることが、それぞれの患者さんの治療において有効なのかどうか、どのようにすれば適切な検査・解釈が可能となるのかを検討することを目的としています。また、がん細胞の代謝物を研究します」。これは非常に広い。H大学の方は研究の目的で、「これらの腫瘍の発生、進展に関わる染色体変化、遺伝子変化を探求する」。それから、その後、「小児固形腫瘍の成因を解明する」。そしてさらに、「各々の腫瘍の良悪性、また悪性度を判別し、その結果に沿った治療法を作り上げる」。これも、ものすごく広いと言えば広い。その中で、一細胞の質量分析をやることがどの部分につながるかというのは、なかなか理解できていない。
説明者: 新しい診断法を作りたいということなのであるが。
★ 今理解している段階だと、Gセンター及びH大学では、血液中に遊離しているがん細胞のゲノムを調べる。そういう情報がまず別にあり、こちらでは、同じ対応する患者の血液中のがん細胞の代謝状態や、DNA以外、遺伝情報以外の細胞質の状態を調べる。それで、それらと疾患状態とを関連付けて、それを主成分分析など、その関連付けるいろいろな統計解析をした上で、患者の例えばゲノム情報なり他の情報と、細胞質のここで得られた情報とがどういう相関があるか、いろいろなバリエーションが出てくる中で、何と何が相関があるかというのを知って診断につなげたいというのが理解できたところであるが。
委員長: 我々は、想定する理解と事実が正しいかということを一生懸命理解しようとしているが、このままではらちが明かない。
★ おそらくこれはDNA情報と関連付けるのではないか。
説明者: 将来的には。基本的には、我々のチームでは代謝物だけで何とかなればいいというのを目指している。
★ 代謝物というのは、遊離DNAのことか。
説明者: 違う。細胞の小分子である。
委員長: それを一緒に合わせてではないのか。
説明者: もちろん合せられれば合わせたい。
委員長: しかし、最初は合わせて、このマーカーが頼りになるということを、別に何か頼りになるものがあり、そこに合っているというのを出さないといけないのではないのか。
説明者: そうである。
委員長: 合っているということを説明しようとすると、先ほど委員が言われた形の説明になるのではないか。
説明者: そうである。
★ おそらくバリエーションは分かるのではないか。主成分分析をすると、細胞質の状態のバリエーションが分かるところまでが、ここの研究の範囲内なのか。
委員長: そうであれば、それは分析技術の部分を委託されているに過ぎない。
説明者: 委託ではないのだが。
委員長: 全体の分析は、H大がやるなり、Gセンターがやるなり一緒にやり、あなたの持っているこのバリエーションのこの部分は意味があると言ってもらわないといけない。患者の状態は、当然それはマッチさせていって分析するわけでないか。
説明者: そうである。
委員長: そのマッチさせる作業の部分が全然見えない、ここに書いておらず、「疾患状態を関連付け」と書いてあるが、そこにゲノムやいろいろなものが入るように見えるのだが。
★ おそらくゲノム情報だけでは、例えばSNPが幾つかあってよく分からないと。こういうがんの分からないものが、たくさんあるはずであり、細胞質の状態をこの方法で見ると、何か一定の傾向があるとか、こういうグループに分かれるとか、そういうことが分かると、最終的にいいなということなのだと思う。まずは細胞質の状態を見るこの方法で、何らかのグループ分けとかができるかどうかをトライしたい、そういうことなのか。
説明者: そういうことである。ゲノム情報と照合することを現時点では考えていない。
委員長: 疾患状態とは関連付けるという話か。
説明者: 疾患状態の情報は頂く。
★ それと関係づけたいということか。
説明者: そうである。
委員長: 疾患状態と一言で言われた場合に、何なのかが分からない。転移、悪性度が高いという話なのか、それとも副作用が出やすいのか、いろいろながんの疾患状態があると思うが、それも分からない。
★ それらを網羅的にやりたいのか、そうではないのか。例えば抗がん剤に抵抗性があるような患者がいたときに、プロファイルを見て分かれば、今後はプロファイルを見れば、これはもう初めから抗がん剤が効かないというようなことは分かりそうなので、そこをしたいということか。
説明者: そうである。いろいろな情報を得たいということである。そういうことができればいいという形のプロファイルを取りたいということである。
委員長: 診療側の情報の何が来るのか、どこから来るのか書いていない。情報が全部来るのか、ずっと追い掛けていくのか。副作用情報などというと、また付随する臨床情報もあるが、そういうのも全部もらうのか、その辺のことは書いているのか。
説明者: そこまで多様な病変・病状を分けるところは、かなり先の話だと思うため、現段階では「がん患者」というくくりでしか見ていないと思う。
★ 一人の患者から1回しか採血しないのか。
説明者: そうである。
★ 研究のやり方としては、例えばがんはだんだん進行していくため、進行とCTCとの関連を見ようと思うと、1人の患者がずっと悪化していくところを見ていき、ああなれば悪くなる、こうなれば治るとか、そういう研究もあるが、今回はその話ではないということか。
説明者: それはかなり先の話だと思うため、まずはそのプロファイルを見て、どうなるかというのをしっかり見ていきたいと考えている。
委員長: かなりやりとりしているため、今日はここで切らせていただき、少し審査して意見を出させていただきたい。
説明者: 了解した。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: がんのサンプルを持ってきて、それを測り、全て同じパターンないしはバリエーションが出ても何も言えないのではないか。
★ バリエーションがあるというのは多分分かると思うが。
委員長: それの意味は分からないのでは。
★ 何かに関連付けないと分からない。しかし、実際には得られたデータと疾患状態を関連付け情報分析をすると。
委員長: どういう疾患状態と、どう関連付けるかを説明してもらえるかと思い臨んだが。
★ そこまでまだよく考えていないようである。
委員長: 具体的に言うと、疾患状態、すなわち臨床情報はどういう情報をもらうということが、計画書に書かれているか。
★ 見た限りではない。
委員長: 計画書には書かれていない。説明同意文書の方は大きなプロジェクトそのものの説明であり、ここからは我々は読み取れない。理研のグループにどういう臨床情報が来るかが全く分からない。
事務局: 入手するヒト由来試料等のその種類のところで、付随する診療情報として、「年齢、性別、疾患名、加療情報など」と書かれている。それに対応するのが、「共同研究先」の実施内容として、「研究方法」のところに、基本的には患者1人につき「全期間最大数回の採血」を行うと書いてあり、「手術・薬物療法などの治療前後の比較のため」ということで、治療する前、治療した後、どういう治療をしたかというところの情報もおそらく来ると思われる。
★ そういう説明はなかったのではないか。
委員長: どのような臨床情報を手にし、ゲノム情報含めてどのような分析をするのかを、研究の全体像を説明していただきたい。その中におけるこの細胞の質量分析の役割を説明していただきたいと。また、2種類のがんを使うことの意義について、それぞれ、あるいは一緒に使うことに意味があるのかどうか、それさえ分からないため、説明していただきたい。
事務局: いろいろながん由来のCTCをもらい、このがんの患者のCTCを調べたら、こういうプロファイルであり、関連付けていきたいというところだと思う。
委員長: これだけの患者由来の試料を用いることについて、十分に研究の必要性を説明することができているとは思えない。表現はともかく、十分に委員会として、研究の意義、必要性が納得できるところまで行かなかった。再度、この研究の全体像、さっき言ったことを説明し直していただきたい。継続審査というか、審査を継続と私はしたいと思うのだが。
★ その意見に賛成である。こんなにいろいろな広い小児固形腫瘍というので200名、頭頸部がんで60名とかでいろいろやっても、確たるものというのはほとんど出てこなくなってしまう。
委員長: どんなタンパク質があるかといったプロファイルであれば出る。
★ やるのであれば、これをずっとやるか、症例を増やすか、それから腫瘍を狭めるか。これだけ特定の腫瘍だけやるとか、何かしない限り、これは無駄になる可能性が高く、なかなかヒトの材料を使うという倫理的な観点から、この研究がいいとは軽々には言いにくいなという感じがする。
事務局: まずは、倫理的なところまで行く前の段階のところで、科学的妥当性の判断をするに必要な研究の全体像と、一細胞質量分析のその中の役割と、実際に取り扱うがんに関しての情報といった、その意義的なところの説明を含めた計画書に直してもらっての継続というような形で。
委員長: 研究の倫理性であり、意味のない研究をやってはいけないため。
★ 本人がやはり何をやろうとしているのか、自分自身できちんと把握できていないという状態であり、説明がまだできていない。
★ 確かに目的にはそう書いてあり、共同研究先のことはちゃんと手術後、手術前、薬物療法前後、複数回取るとか、きちんと書いてあるのですが、そういう理解に説明者本人が至っていない。
事務局: もともとこれは、少し前から計画を立てていたのだと思うが、一細胞分析は他の先生が中心にやられており、それを研究責任者の方は引き継いだ形での計画に多分なっているため、そういう意味で、説明がうまくできない部分があったかと思うが。
★ 継続審議で、もう1回きちんと説明してもらうことでよろしいか。
委員長: しっかりとお願いしたい。

7. その他
 

 事務局より、次回委員会の日程調整を早めに開始したい旨ならびに、審査継続の課題については、科学的妥当性等についての説明資料等を委員に適宜情報共有の上、意見をいただき、次回委員会において審議いただきたい旨の説明があった。

 

以上

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