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No61

第61回 神戸事業所 研究倫理第一委員会 議事要旨

1. 日時 平成29年9月1日(金)16:00~18:40
2. 場所 理化学研究所 多細胞システム形成研究センター A棟7階 会議室
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
松崎 文雄 委員(CDB非対称細胞分裂研究チーム)

(説明者)

清水 義宏 (生命システム研究センター
     一細胞質量分析研究チーム 上級研究員)
川井 隆之 (生命システム研究センター
              集積バイオデバイス研究ユニット 基礎科学特別研究員)
神田 元紀 (生命システム研究センター
     合成生物学研究グループ 基礎科学特別研究員)

(オブザーバー)

深井 宏 (神戸事業所長)

(事務局)

片山 敦 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
堀江 仁一郎 (神戸事業所 安全管理室)
吉田 道生 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)変更申請(センター長等の変更、所属長の変更)承認の報告について
(2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
(3)その他

5. 報告事項について
 

事務局より、研究計画1課題について、人を対象とする研究に関する倫理規程細則に基づき、所属長等の変更に係る承認手続きを実施した旨の報告があった。

6. 審議事項について
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規/前回から審査継続)

受付番号: KOBE-IRB-17-20※
   「微量分析システムを用いたがん診断技術の開発」
(※前回課題名:「ヒト由来試料を用いた微量分析システムの開発」)
研究実施責任者: QBiC一細胞質量分析研究チーム 清水 義宏

【概要】
 研究実施責任者の清水チームリーダー及び研究実施者の川井基礎科学特別研究員より、前回委員会において審査継続となった本研究計画の内容及び確認事項等について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、前回委員会における指摘事項、コメント等への対応状況について、説明資料を基に研究実施責任者より説明が行われ、委員による確認ならびに議論がなされ、改正後の説明同意文書の入手及び提示を条件とした上で承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: H大学の説明文書を読むと、血液中のCTCを調べて、それでがんの研究、やがては診断ということがあまり書いていないが。採血をしてその採血されたものから細胞が採られ、それが理研に行くのか。
説明者2: そうである。
委員長: 「これらの材料」というのは少し雑な印象であるが。
説明者2: 今回はCTCをターゲットにした申請をさせていただいているが、もちろん非侵襲性を持つという意味合いでは、血液以外でも尿の一部ということも書かれている。結局、目的としては、非侵襲的な診断技術を確立したいというのが先方の意向であり、それに対して我々の最も貢献していくべきところは、今回の下の申請に当たるCTCということであり、共同研究機関の方がより広くそれをカバーしており、我々は、細かいのはCTCに包括する形で申請させていただいた。 ゆくゆくは、今回の申請ではないが、脳などの中の、例えば一般的にはCTCではなくて、エクソソームとか呼ばれる別の最近はやりのものであるが、小胞の中に入っているDNAや代謝物も、対象にしたいということは伺っている。それが多分、こういう形でのICになっているのではないかとは思うが、我々としては、その中のCTCにフォーカスして今回はやっていくべきかと考え、申請を出させていただいている。
委員長: その非侵襲的なもので得られている血液や尿というのは、普通の人の感覚で言うと、そこにがん細胞があるとは思わないため、それも分析すると書いてあるのだが。
説明者2: ICの中には、血液、細胞内液の一部を理化学研究所に送付してということで。
委員長: 今言われたその非侵襲的な方法でがんの診断をしたい、そのための研究なのだということが、なかなか読み取れない。よくある、血液で、いわゆるがんと異なる正常組織を研究するのはあるのだが、下手をするとそれに読める。
説明者2: 腫瘍の細胞内の主要関連分子の発現などの解析ということで、腫瘍の細胞の解析と読めるような気がするが。
委員長: 読めるが、血液を何のために使うかということが分からない。理研にとっては、その中にある腫瘍細胞の研究をしたいのだが、そこが一番研究側から見たときには重要なところであるが、それが伝わる文章には全くなっていないのではないかと。いろいろ分析し、その中にはがん細胞もあり、血液細胞もあると書いてあるが、本当に新しいことをやろうとしているというその側面がなかなか読めない。そこまで説明要らないかもしれないが、非侵襲的に手術したものを使わなくても、がんのことがいろいろ分かるようになる研究・手法を開発したい。だから血液も採り、尿も提供していただきたいということを、できればはっきり書いた方がいいのではないかと思う。
説明者: 例えば「研究の目的」には書いていないか。本研究の結果によって各々の腫瘍の。
委員長: 「本研究の結果によって、各々の腫瘍の成因、悪性度を分別する指標が」というここでか。一般にがんの研究と言うと、がんそのものの研究をするし、もしかしたら血液がコントロールになるということは、知っている人はいるかもしれない。しかし、少なくとも理研の研究に関しては、そして尿を使う研究に関しては、かなり発想の違うことをやろうとしており、そこが読み取れないのが残念であり、研究倫理から言っても、なぜ自分の血液が採られるのか、尿が採られるのかは、分かるようにしつつも、やはり具体的に伝えた方がいいと思う。
説明者: 了解した。
★ 前回、がんの診断の目的でというところが議論になったわけであるが、そのときは確かにそれをしたいのではないかと思ったが。気にしたのは、本音はがんであるが、がんと言いたくないため、わざと言わなかったということはなかったか。
説明者: 大丈夫である。
★ この中に、材料を頂く方、試料を頂く方の中に、本人はがんだと思っていない人が入っていたとすると、これががんの診断のためだと言われてしまうと、あらぬ心配をさせてはいけないというのがあり、診断一般にしていたのかと思ったが、大丈夫か。
説明者: そういうことではない。
★ 文章の表現で、「みいだされば」というのが全部平仮名になっているのが少しおかしい。その下の「ごきょうだい」が平仮名になっており、これは兄・弟という漢字を当てるのに抵抗があって平仮名にしているのかなと思うが、その場合は兄弟姉妹にするとか。「ご両親」と「お父様とお母様」となっており、この辺の国語というか、文章の表現で、これをもし患者のご両親などにご覧いただく場合、少し恥ずかしいかなと。
説明者: 「ごきょうだい」は、やはり兄と弟と書きたくないからかと思うが。
★ 何かここだけ稚拙な感じがし、他は結構難しい言い回し、表現をしており、違和感がある。 もう一つが、「質問してください」と、質問することを義務化しているというか。これは別に質問してくださいという項目立てにせず、この文章だけでいいと思う。ここも単に文章の表現であって、研究の内容ではないのだが、違和感がある。
委員長: 確認していただいたらいいかもしれない。項目立てで、確実にそのことを伝え、質問をできるというのを伝えないと駄目だと、先方の倫理委員会から言われているのかもしれない。
★ 他のフォーマットなどを見せていただき、講義で使わせていただいたことがあるが、すごくよくできており、できればあれを全体で共有し、インフォームド・コンセントを作っていくようにすれば、こういう細かいことを言う必要もないのかと思ったりもするが。
委員長: そこはなかなかいつも迷うところであり、スタンダードなものが日本中で使われるといいというのは、みんなそう思うが、実際には現場の既にあるものなど、いろいろな事情の違いがあり、そこになかなか向かわない。ただし、理研の中では、ある大きなナショナルプロジェクトのものがあるため、それをみんなで参考として使い、積極的に共同研究者にも少し渡せる形にして渡すとか。
事務局: 共同研究先との研究のスタートの時期の違いにもよっていたと思うが、理研が主体でやることについて共同研究先の方で協力してもらっている場合には、理研がICについても作れる。そうすると、理研での大体のこういう項目がないと委員会で通りませんというところも説明できるため、ある程度一元的な管理ができる。しかし、相手機関が先にスタートしていたり、理研でやることよりも大きな枠で計画を持ち、そのICを取って、その中の既提供試料を使わせていただく、あるいは一部変更して理研で何かの解析をするという場合には、元の方のICが既に承認されているものでスタートしているというところがあるため、なかなか難しいところではある。相手機関との関係にもよるが、今回の場合だとCTCなどに関して協力し、情報共有しながらやっていくという中で、理研の委員会ではこういう意見があったという旨を伝え、参考にしていただくという形は取れるかと思う。
★ 作っている方たちというのは、やはりすごく苦労してこの文言、文章表現されていると思うが、それがかなり軽減されると思う。逆にこういうフォーマットがあると見せてあげ、これに合わせるべきとかそういうことではなく、こういうものがあり、これに合せると楽にでき、被験者の方たちにも非常に分かりやすく伝わるという言い方でされるといかがかと感じた。
★ 説明同意文書で、Gセンターの方は、2014年となっているが、理研の議論も反映し、少し修整していただけるということなのか。
説明者: そうである。
★ 少し気になったことが幾つかあるが、まず、「この研究は多施設共同研究です」とあるが、この多施設共同研究のこの役割分担が、この1文だけでは分からないため、ここは付け足していただいた方がいいのではないかと思っている。
説明者: 了解した。
★ 関連して、Gセンターの研究倫理審査委員会にかかったという話であるが、理研の倫理審査委員会は一体何をしているのかというか、どこにも説明同意文書が出てこないということになるのか。多施設の中に理研が入っており、理研の倫理委員会ではかかっているかどうか分からないということになるのではないかと思うが。
委員長: 書く方が丁寧は丁寧。
★ 通例で、どうなっているかによるが、若干気になったところである。それと、やはり理研が関わるということで、この利益相反のところだが、理研はAMEDからお金を頂いているということであるが、その部分をこの形だと書く必要があるのではないかと思う。共同研究機関に名前が出ており、研究費もその部分も書く方がいいのかと。
委員長: 多施設共同研究の場合に、本当に小さなことだけやる共同研究のところを全部説明文書に入れないといけないかどうかは、いろいろやり方があるように思うが。大きな意味では、どういう組織でやっているかは、やはり書いた方がいい。少なくとも、理研というのがちゃんと名前として入ってくる。
事務局: 別ページにそれぞれの共同研究機関の役割的なところが書いてある。
委員長: そこが共同研究先であるということが分かるようにするといいかなと思う。倫理委員会の方だが、例えば20の多施設共同研究のときに、○○倫理委員会で審査されているということを、全部書くかというと、それはそうではなく、倫理委員会で審査しているということが書いてある。一方、これは共同研究であるということが書いてあると思う。そこはその中を取り、Gセンターおよび共同研究施設の倫理審査委員会で審査されているという程度でいいのではないかと思う。
★ 理研では診断技術を開発しているというところが、Gセンターの方ではあまり見えない。大体話は分かっているが、やはり多施設共同研究で何をしているかをもう少し書いた方がいいと思った。
委員長: 中身は何をするか書いていないため、それはうまくどこかに入れた方がいい。
★ H大の方は、例えば利益相反の話で、費用負担に関する事項については、利益相反に当たるようなことが若干書いてあるとは思うのですが、特に広大のものは若干内容が少ないのかなと。
 共同研究については理研が何をするか等も書いてあると思うが、Gセンター方も少し足りないような気もし、H大の方も若干、特に利益相反等の部分について、足りないという感じがした。できれば、H大の方も共同機関についての一覧のような形で、理研の先生方の名前も含めてあった方がいいのかなと思い、若干簡単になっているように拝見した。
委員長: 広大と話ができる状況にあるか。先方は、多分大きな研究としていろいろな研究にこれを使っているのではないか。
説明者: そういう状況はある。その際にお伝えはする。
委員長: これは事務局が後で教えていただいたらいいと思うが、指針があり、我々が当てはまるのは医学系研究指針と呼んでいる「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」である。そのガイダンスというもので、インフォームド・コンセントを受ける場合にどういうことを入れないといけないかというのがはっきりある。それでみると、利益相反に関する状況とはっきり言葉がある。つまり、そういう観点で見ると、利益相反はないといった言葉に、こちらは変えた方がいいかもしれない。これは平成27年で、どうもこれはそれより前なのではないかという印象がある。
★ 書いていないが、いつごろ作られたのか。H大の方はそのままであるが、アップデートされていないのか。
説明者2: 多分アップデートはしてなのだと思うが、研究期間が13年からということで書かれているため、いろいろな情報が入り乱れている可能性はある。
委員長: 了解した。
事務局: 恐らく今年の5月末の医学系指針の改正の前に、この計画自体は承認を受けており、その際のICを参考で頂いていると思う。指針の改正で理研として対応しなければいけないこととして、資料をもらう前に、医学系指針の改正に対応したICになっているかどうかを確認するという義務が生じている。いずれにしても、5月30日以降、6月以降のICというのは必ずあると思う。
委員長: H大学として。
事務局: それを入手・確認していただくことが早いのではないかと思う。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 前回よりははるかに理解と説明と両方進んでいると思う。少し問題なのは、共同研究先が二つあり、そちらの方の説明文書が必ずしも今回の研究、新しい研究に合ったものになっていないということと、もともとその研究として、H大の方は特に古いのではないかということ。一般的にはこの委員会が、H大やGセンターのような大きな組織が既に審査していることに関して、口出しをするのはなかなか難しい。しかし、共同研究機関の責任として「ちゃんとやってください」ということは言えるため、変えられるものであれば変えてもらった方がいいと思う、その打診の状況を帰してもらう、相談してもらう。何となく印象としては、全然変えられないわけではなくて、ちょっと対応できそうな感じがある。事務局が言うように、今年の5月の時点での対応が、非常にはっきりと責任のあるものになっているはずであるため、その段階でどう変わったかはを聞くことは可能なはずである。
事務局:  まずは指針改正に対応したICを入手し、その上で内容の対応を確認させていただき、情報を渡すような形に。
委員長: 一度、私に上げていただき、相談して、必要なら回すという条件付き承認で。
★ コメントだけ述べておくと、この倫理の問題というのは、だんだんきっちりやらなければ駄目だという話になってきており、指針なども変わっている。理研は事務局がそういうのをずっとチェックしており、研究者が何か申請書を出しても、これはもう古いというようなことで、と新しいものになるのだと思う。しかし、例えばH大などでは、研究者自体は最新のものを常に見るなどという準備はできていないかもしれない。そういうのをどうしたものかというのは、倫理的なことはきっちりしなければ駄目だというのは間違いないため、やはりやるべきだとは思うが、べきだということと、本当にみんなができるかというのは、すごく気になる。
委員長: 今回の指針改正は非常に大きな話題になり、関係するのが法律であることから、事務局が言った、H大も対応しているはずだというのは、これはやっていないと、ほぼニアリーイコール法律違反のような状況であるため、やっているのではないか。大学もだいぶ変わってきている。ここ 1、2年だけでも、人を付け、それで医学部はいわゆるトランスレーショナルなセンターをつくり、そこはもっと介入型の臨床研究をするため、かなり体制はできてきた。H大であれば、小さな私立大学とは違うということで、少し見てみたいと思う。
★ もう一点、その反対側を言いたかったのは、研究者というのは、昔はそういうトレーニングを受けていないわけである。「Nature」や「Science」などは一生懸命読んでいるが、倫理的な文書などを読むトレーニングは全然されていない。しかし、今や研究をしたい人は、それも併せてリファレンスの中に入れて読んでいただいてからでないと駄目だという雰囲気になってきているのだと思う。動物実験もそうだが、昔は動物実験というのは、やり方だけ知っていればよかったが、今や倫理的な側面もそういう文書が世の中に出ていれば、それを見た上でやりなさいと。また、チェック項目もだんだん出てきている。今は最低限、動物実験をやる人は全部これらをチェックして計画を立てなさい、といった時代になってきている。
委員長: そうである。彼らも別に嫌がらず、今回、かなり理解されているかと思う。

 

2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査

受付番号: KOBE-IRB-17-26
  「ヒト血液中における抗原情報の包括的な解析(ワクチン接種)」
研究実施責任者: QBiC合成生物学研究グループ 上田 泰己

 

3)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査

受付番号: KOBE-IRB-17-27
  「包括的抗原スクリーニングによるヒト疾患の免疫学的解析」
研究実施責任者: QBiC合成生物学研究グループ 上田 泰己

【概要】
 研究実施者の神田基礎科学特別研究員より、本研究計画(2課題)の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、対象者と人数、説明同意文書の記載項目等について議論がなされ、KOBE-IRB-17-26については指針が求める説明事項に係る本委員会審査での論点を共同研究機関に伝えるとともに検討を依頼すること、また、KOBE-IRB-17-27については対象と人数に関し、研究の実施予定に合わせた記載に修正することを条件とした上で承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 新しい方法だということで、大きな枠組みとしての、対象が異なる二つの種類の研究を、同じ手法を使ってやりたいと。
説明者: そうである。
★ こういう研究を行うと、特定の疾患に自分が罹患したことを、あまり知られたくないものも網羅的にやるため、これだと分かってしまうことがあるのではないか。そういうのは、どのように扱うというか、どんな考え方でその患者さんを守ってあげるのか。
説明者: 全てのデータは我々の方では匿名化し、統計学的に結果を出すものであるため、この患者が、実はこれにもかかっているというのは、データとしては分かるが、まず、我々からお知らせすることはない。また、これは非常に基礎研究の部分であり、その精度、確度というのも、まだまだ分からない。
委員長: 感染症のものがあるのではないか。それはいろいろ社会的にはあると思うが。
説明者: 我々は、これはある程度早めに仕上げ、早期発見・診断といったところに使いたいと思う。
委員長: それはかなり大事な話で、結果の開示になるが。開示しない。それで、説明文書に何も書いていない。
事務局: 解析の結果についてということで、原則として個人の解析結果はお伝えしない。
委員長: お伝えすることはできないと、利益・不利益に入っている。こういう特に臨床的な解析結果の取り扱いに関して、一般的に言うと、研究だと、まず質の保証があり、取り違えということがある。これは各個人と連結されたまま来るのか。向こうに対応表があって。
説明者: ある。
委員長: 途中で入れ替わっているかもしれない。
説明者: 可能性としてはある。
委員長: 例えば病院等でやる臨床の検査とは、かけているお金が違うため、責任を取れないということもあり、それで結果を返さないというのがほとんどである。バンクは、特にそういうことでやっていると思う。
★ そここそ最も注意する必要があり、新たな方法で網羅的にやるというときに、倫理的には、最も気を付けなければ駄目なところかもしれない。
委員長: そうである。遺伝子の研究の方は、それは偶発的所見と言い、非常に問題になってきている。「返せ」という声が少数あるときに、大きく言うと簡単には返せないというのがあり、喧々諤々状態が何年も続いているという。しかし、今言われたことは非常に重要で、研究だからこそ、新しい発見を求めて網羅的に見るので、そうすると、知らない抗体が、ある病気に出ていることを発見したいと思って見ているのに、感染症になったことがあるという、ごくごくみんなが知っているものが見えてきてしまうというのがある。分かってきたときに、何も書いていないと、「いつ言ってくれるのですか。これも分かるはずでしょう」と言われることがあるため、ある段階で積極的に「いろいろなことが分かる可能性があるが、言わない。なぜならこうである」とか、言わないといけないかもしれない。
★ これは難しいかもしれない。感染症法というのがあるため、それを見つけた人、プロフェッショナルな人たちは、プロフェッションとして、それが分かってしまったときには、届け出なければ駄目である。例えばエキノコックスという条虫症という、キタキツネが持っているものがあり、人がかかる。そのことが分かったら、獣医は届け出なければ駄目だという法律になっている。
委員長: 最近どんどん連結するようになっているため、ますますややこしくなってきている。
★ そこは逆にこの研究を守るために、「これは診断方法の開発ではあるけれども、今回やっているのは診断ではない」というのを、どこかに書いてエグゼンプションしておかないと、誰かが法律違反だとか言われたら、逆に苦しいかもしれない。感染症法にそういう規定があることはご存じか。
説明者: 承知している。
★ 例えば出血熱みたいなものに偶然当たってしまっていて、そんなものは日本にないはずなのに、その抗体を持っている人がいたと。
説明者: その前段階では、出血熱の人が持っている抗体はこれだという研究が多分あるはずであり、その研究の後には、そういうことは多分起こってくるのだとは思う。はっきりした場合には。その前段階で、どこまでどうかというのは、私自身も議論の余地があるなと思っている。
★ 倫理的にどうしたらいいかというよりも先に、これは素晴らしい研究だから、これをどうして守ってあげようかというのは何となく、法律がそうなっていると考えざるを得ないかもしれない。
委員長: ロジカルに言うと、お伝えすることはできませんと書いてある。
★ やはり研究の目的のところにしっかり書いておいたらいいのではないか。これは基礎研究であり、ここで分かった事実がいわゆる疾病・診断の直接診断したことではないといったことは要るのではないか。
委員長: いきなり「この研究が・・・有益な情報をもたらす可能性は低い」と言わずに、まずこの研究は診断法の研究である。従ってそれは患者皆さんの今の診断をするためのものではないというようなことを。
★ それがいいのではないか。感染症法の規定は、プロフェッションに対して義務付けているだけであり、それ以外の人がたまたま知っても届ける必要もない。
委員長: それはよく言われており、研究者には義務があるのかないのかという議論で、基本的には臨床的義務はないということになっている。
★ ない。だから、それが明らかになるようにしておく。慎重に倫理的に配慮し、この研究は行われているということを明確に説明できるようにしておくといいかもしれない。そのインフォームド・コンセントの取り方のとき、あるいは守秘義務はあると、いろいろ書いているのはなぜかというのは、研究の目的がこれだからですよと分かるようにしておくというのは、大事なことかもしれない。
事務局: 「あなたの費用負担」の欄に、「研究のために実施する血液の分析結果は個別にはお伝えできません(例えば、診断書に必要な麻しんの抗体検査結果を研究の測定結果で流用できません)」というふうに、一部その意味を踏まえて書かれているのだとは思うが。
委員長: 読み取ればそうだが、それはやはり正面から、あるいは別に作る。
★ 18歳、19歳というのは未成年であるが、病気によっては未成年のものもあるのだろうと思うが、未成年で特にやる理由はあるのか。
説明者: できれば、若ければ若い方がいいと思っている。理由としては、病気にかかっている確率というのが、年齢が上がるとともに上がるためであり、偽陽性を減らすために若い方がいいと思っている。
委員長: これは大学でやるため、大学の学生が多いかもしれない。
説明者: そうである。実習前の予防接種等々があり、それを考えると19歳等を抜くというのは、あまり現実的ではないと思う。
委員長: 両親の代諾は。
説明者: 代諾はもちろん取る。取りますと書いてある。
★ 同意説明書にはないため、取らないと思っていたが、取るのか。
委員長: 保護者が研究に同意していることを確認すると書いてあるため、確認するのだろう。
★ 特にワクチン接種というのは、親に聞かなければ分からないのではないか。
委員長: それに当たる同意書の欄はない。
★ 研究として必然性があり、未成年からも取った方がいいということで、それで18歳なので本当に微妙だとは思うが、原則、代諾者から同意が取れるのであれば問題ないと思う。
事務局: 指針上は16歳もしくは中学卒業以上であれば、本人の意思を確認できるため、本人から取り、ただし、公開し、親もその内容を確認することができるような体制を取れば、代諾はなくてもいいが、この計画の場合は親、ご家族の方も一応、確認・同意を得ておくという形になっている。
委員長: 大学が組織として責任を持ってやろうと思うと、慎重になり、しっかり書面で親から代諾を取るというのをやっているところがあるみたいだが。
★ そこまで侵襲性は高くないと思うが。
事務局: 大学から資料を頂いているが、その中では、本人と、あと代諾者の場合は参加者氏名を記載するという形で。
委員長: 本人が署名していれば、本人だけなのか。確認というのは書面と書いていないから、それはどうするのか。本人に口頭で言わせるのか。
説明者: 取りましたかと。
委員長: 取ったか、ご両親は同意されているかとか、ちょっと曖昧である。
説明者: 我々の中でも、どう取るかという議論はしてはいなかった。
委員長: 少し議論していただき、クリアにしていただいたらいいのではないか。それはやはり研究チームとして検討していただく。いろいろな倫理的な配慮が必要かもしれないため、そういうことを総合的に考慮した際に、両親の同意をどういうレベルで確認するかを再度検討していただければ。
★ 研究目的、研究方法のところが少し分かりにくいかなという気もするが、そのままでもいいかと思う。研究方法が血液を採るという方法しか書いておらず、これだけでは、何をする、何をされるのかという説明に十分なっているのかなというのが少し気になった。
委員長: あまり手の内を書いてしまいたくないというのが、もしかしたらあるのか。
説明者: 論文化前であり難しいということと、この説明というのは非常に分かりやすくした。書面になると、そこまで書くと、やはり誤解の方が大きいと思い、ある程度硬い文面でまとめた。
★ 何かこういうことが新しく始まっているからというところぐらいしか分からず、取りあえず血液を採られるぐらいしか。具体的には「例えば」と書かれ、これが研究の目的なのかどうか、内容なのかがどうかよく分からず、具体例としてこういうことを実際にするのかどうかが分かりにくいかなと。
説明者: 目的でもあり、内容でもあるということである。
委員長: 目的と方法の整理はあってもいいかもしれない。目的は、ワクチン接種したときに、どれぐらい抗体ができるかを調べる方法を開発するということ。
説明者: そうである。まず、それがメインで入ってくる。
★ あと1点、連結可能、連結不可能という言葉は、これ自体はまだ生きて使えるということか。
事務局: 使えないとは言わないが、ただし、基本、5月30日以降は、そういうものに対応して書き直すのが一般的であるが、既に動いているものについて、その修正を指針上で求めているわけではない。
委員長: これは今作っている、まだ動いていないのでは。
説明者: 今作っているものである。
委員長: 事務局とやり取りし、いい言葉に変えたらいいと思う。
事務局: 個人を識別できない情報、直ちに識別できない情報など、新しい定義があるため、そのあたりをお伝えするような形にする。
委員長: 「あなたから頂いた資料」というのは、これはこの「資料」でいいのか。
事務局: 物と情報を両方合わせた形で、「資料」をあえて使われていると思う。
★ 「その他」で、これもやはり理研の方が公費を使われるのか。
説明者: 理研の基盤的な研究費も使う。
委員長: あった方がいいのではないか。
事務局: ただ、このICは、T大の計画書に対してのICの中で、その計画については、T大の交付金を使うという話なので。
★ その場合は、理研のお金が出ているということは、書く必要はないということか。
委員長: これは我々に共同研究に関する説明文として出ているのではないか。
★ 共同研究として名前が出ている。
委員長: 共同研究としてのお金の出所を書くべきで、利益相反についても書いていただいた方がいいと思う。
事務局: 理研のお金がT大に行くのであれば。
★ そうではなく、この研究を行うのに、理研側は理研のお金を使ってやるわけではないか。そうすると、この人たちは何のお金を使ってやっているのかというのは書いておいた方がいいのではないかということ。
事務局: 他の計画との整合性を考えたが、共同研究は、多くの計画でやっているが、相手先などの予算の項目まで全ては入っていなかったかと思った。あくまでも、これはT大側での研究では、これを使います。ただ、共同研究で、理研は理研の方で外部資金なり交付金を使い研究するというのが今までのここで動いている計画の一般的な動き方である。ここで必ずしも理研は何の予算を使っているという部分が要るのかと。利益相反については、本計画についてはT大の予算と、あと共同研究機関の共同研究費を使うといった、そういう形は理研の方でもやっている。
委員長: 了解した。確認になるかもしれないが、調べてみて一般的な理研のやり方として。
事務局: 了解した。
委員長: 理研の場合はこういうケースが多いのでは。
事務局: そうである。
委員長: 相手方が病院で、こちら側に物がくる共同研究というときに、どこまで向こう側で説明すべきなのかということ。
★ 被験者が18~65歳ということだが、若い方の方がいいというお話があったが、年代的には大体どういう割合で考えているのか。
説明者: 今回のものに関しては、年代というのは特に考えていない。理由としては、解析自体は大規模に思われるため、集めたものを全部解析するという方法でやっていく。それが出た結果に対し、年代別に並べ替えたりして、どういう問題が出ているか、どういう年代での何か差があるか、といったものを解析する。
★ サンプルを250人分集められるということだが、4週間空いて2回ということなので、やはり2回目に来られない方とかもあると思うが、250人集まるまで繰り返しされるという感じか。
説明者: 基本的にはそうである。ただし、ワクチンの接種というのは、かなりシーズンが決まっているため、達しなかったときには打ち切るという可能性はもちろんある。
委員長: 「この研究に参加することで生じる実体験は2回の採血のみ」、「この研究に参加していただいた際に必要なのは」など、普通の日本語の方がいいのではないかと思うが。臨床的な情報というのはアンケートだけか。
説明者: アンケートだけである。
委員長: 後から他の情報が行くとは思えないような状況の中でやるわけか。
説明者: そうである。
委員長: もう一つは、バンクの方の940人、疾患名が47でこれは全部書いてあるのか。その内訳はどういうふうになるのか。
説明者: まず最初は10疾患から始める。今10疾患選んでいるというところである。
委員長: その10疾患は何件ずつぐらいか。
説明者: 10疾患に対して94を課題。94掛ける10である。
委員長: 940なのか。「対象とする疾患名」は47全部書いてあるが、この940人の中では、それは47ではなく、10なのか。
説明者: 10疾患であるが、かぶっていたりするため。
委員長: それはちゃんと書いていただかないと。バンクのサンプルは既に提供されているから、自由に使っていいというものではなく、それぞれ貴重なサンプルであるため、どういう疾患は、なぜそれを使うのかというのを書いていただかないと。
説明者: 了解した。
委員長: それはあった方がいい。バンクの推進委員会では、血清とかサンプル、DNAが使われないということで議論があるため、血清を使ったらすごくいいと思う。
説明者: 了解した。質問だが、この10疾患が終わり、結果が出た直後から、残りの37についても数を増やして申請しようと思っているが。
委員長: そのときに変更申請されればいいと思う。少なくとも、940とはっきり書いておられ、これで940になるのであれな、940は変更していただかないといけない。あるいは、決まっているなら940プラスいくつということを書いておかれるかである。ただし、少しロジックはあった方がいい。
★ それは微妙で、研究者の意図としては、どんどんやっていきたいし、やがて資金も得られれば、どんどんやろうかと思っているわけではないか。これからいろいろなところに申請し、資金を調達に走るわけで、そうすると、そこに倫理的な大問題でも起これば、あまり拡大したものは書くなよというのはありだが。研究者の倫理観としては、当初ここまでや行い、引き続きこちらの方に拡大しようとしているといったスコープみたいなものを書けば、それでいいような気もする。何かそういう研究の段階を。
委員長: 「約」とかいう言葉を使い、例えば940が第1段階で、第2段階は「約○○」と書き、それぞれなぜやるのかということを書ければ書いていただいて。
★ 計画書の段階で、ある程度こんな段取りで研究していくというのが分かるのは、いいことだと思う。何も分からず、ここまでとあまり厳戒するより、概ね研究というのはだんだん拡大していくわけである。
事務局: 今の点は、「対象と人数」のところに、今940と書いているところを、例えば940から、最大でやる人数を書いてもらっておき、その説明として、まず940については何の目的で行って、その後こういう理由でこれをやるというのを計画書上で追記した形でよろしいか。
委員長: いいのではないか。対象と人数のところに、文章として入れていただければ。
事務局: 了解した。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: パッケージとしては大変世界最先端かもしれないが、流れとしてはシンプルで、しかも情報としてはそんなに複雑な情報を取るわけではないため、倫理的にはそれほど問題がないのではないか。ただ、血液10mLといっても、必要ないのであれば採らない方がいいため、そこはしっかり説明していただいてやっていただくということで、説明文書についての修正をワクチンの方についてしていただく。それと、先ほどのバンクの方の計画内容の説明をしていただくということか。
★ これはT大の倫理委員会はまだ通していないということか。
事務局: 通っており、承認も受けている。
委員長: 本日はいろいろ意見を言っていただき、チームが考えるというのは意味があるのではないか。では条件付き承認とし、私のほうで確認するということにしたい。

7. その他
 

1)医学系研究指針等の改正に伴う試料・情報の利用目的・方法等に関する公開情報について
 事務局より、医学系研究指針等の改正に伴う研究計画に係る公開及びオプトアウトに関する公開状況等神戸地区における対応について、報告があった。

2)個人情報保護法と研究倫理指針の改正について
 委員長より、個人情報保護法の改正点ならびにこれに伴うヒトを対象とする医学系研究に関する倫理指針及びヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の改正点等についての説明があり、意見交換が行なわれた。

説明後の意見交換等は以下のとおり

★ アメリカはどうなっているのか。
委員長: アメリカにはこういった法律がなく、それぞれの組織で守っている。
★ 自主的にやっているみたいなことか。
委員長: そうである。いろいろな取り決めをし、EUはアメリカにデータを出せないことになるが、どうしているかというと、以前は、「アメリカの国として、この企業とこの企業とこういう組織はちゃんとできているから、そういうところには国として保証するから、出せるようにしてください」と言って、国と国との取り決めとして、EUとセーフハーバーアグリーメントをしてやっていた。それがEU側が、「それでは本当に守られているかどうか保証がない」と言って、まだ今いろいろともめている。
★ アメリカに何か民間団体で「ここはきちんとしたところです」と認証するような仕掛けがあるのではないか。私はISOの委員をやっており、そこに情報が来るが、ISOで個人情報保護法の新しいISOを作るという提案がどこかからなされ、今、投票している。
委員長: ISOというのは、アメリカもちゃんと認める前提で。
★ 入っている。
委員長: ISOで認められたところは、このレベルがあるということで、守られるかもしれない。しかし、国としては、例えばベンチャー企業には、きっと傘をかけていないのではないか。
★ 今やっているのは医療機器に関係するところの分野であるが、不具合情報をどうするかということがすごく大事であり、医療機器は数が少ないため、被害が起こっても、そんなに大規模にはならないことから、であれば患者の利益を優先し、先にまず、許可をといった流れである。その代わり、不具合等が起こったら、すぐその情報を共有して、次の改善に取り組むようにといった大きな流れがある。情報を出さないと、交換することが前提で話が進んでいる。患者の情報などは、入ってくるが、それを個人が特定できるように出すかどうかはまた別の話であるが。
委員長: 例えば日本では、一番分かりやすいのだとがん登録というのがあり、それは本人の同意なく、その情報を国として集めると決め、それは個人情報保護法に書いてあり、法律では「抜いていく」という言い方をするのだが、抜いていく場合には、この個人情報保護は当てはまらないと言っている。ビッグデータをいろいろ集めたいことから、医学の世界で、もう少しそういうものが要るのではないかという議論はしているが、では何をどう作ったらいいかはまだもめている。
★ WHOなどには出てこないのか。
委員長: WHOはあまり出てこない。確かにISOは関係するかもしれない。他の委員はゲノムデータの話はもう理解されていたか。
★ それよりも、個人情報の中にゲノムデータが入っいり、それがヨーロッパで既にこういう法律になっていることにすごく驚いた。日本よりずっと遺伝子治療などが進んでいるとは聞いていたが、そのことを受けて、何か一個人として、どういうことに気を付けないといけないのかとか、説明を聞いていて、個人的にはそちらの方に気持ちが行ってしまったが。
委員長: 重たいものになってきていると。
★ 氏名とか住所は、既に個人情報がとっくに漏れてしまっていることなどは分かっている。既に漏れているとは普通考えられるが、ヨーロッパで今どういう状況になっているのかとか、それで日本の私たちは、これからどういうことに気を付ければいいか。今、DNAのキットを送ったら簡単にやってくれる。本当にお茶の間で見てそのまま、その辺の人たちがどんどんできるようなそういうことになっており、それが確かにこの間の臍帯血で、会社がもし倒産してどうなるのかという、すごく恐ろしい事件もあった。DNAをそんな簡単に調べてもらっていいのかなというのは、考えたりしていたのだが。
委員長: 一般的に言うと、やはりアメリカほどヨーロッパでは検査はやっていない。商売としてむちゃくちゃ進んでいるという感じではない。
★ 日本は、DNAの検査というものは進んでいるのではないか。検査の事業者でそういった検査を依頼する人たちと、テレビショッピングを見て依頼する人たちは、全然層が違い、ごく普通のおばさん、おじさんたちが、そういうことを試そうとしている時代になっており、安易にデータが流れていっていることが。
委員長: 今回の法律改正はそれに対して意味があると私は思う。個情法は民間事業者がちゃんと対象になっており、独個法は独法、国の機関。理研、大学は独個法で。個情法の定義自体は民間も含めて当てはまり、不正な目的に用いられて売り飛ばしたりすると、個人情報の取り扱いの法律で罰がかかるので。
★ こういう法律ができたということは確かにいいことだと思うが、どういう不利益、データが売り飛ばされたとき、どういう脅威があるのか、みんな知りたいと思う。
委員長: データを売り飛ばしたら、それは不法なデータを売り飛ばしただけで、その人はお金を得ているため、それ自体で目的と違うことをやっており、それが犯罪。しかし、その段階では、本人に対する不利益になっていない。
★ ただ、名簿などであれば、詐欺に利用されたりといったことが現実に起こっているではないか。この場合は、ヨーロッパでそれだけ慎重になっているというのは、具体的に何かそういう事件みたいなものがたくさん起こっていて、その怖さみたいなのが、一般の人は全然分かっていないと思う。そこが保護されなければいけないような重大な問題であるということなので、それがちょっと怖い。
委員長: 実際に、遺伝情報による差別がどういう場面でどれぐらい起こるかというのは、厚労省の研究でオンライン調査を実施した結果、数千人のうちの3%が差別を受けた経験があると答えた。ただし、それは本当に遺伝情報と言われる意味のATGCを使ったのか、それとも遺伝病であるということで差別を受けたのかが一緒になっていると思っており、なかなか分からない。
★ 気になっているのは、このBiometric data、この「認証」という言葉であるが、これは例えば何かに認証用に使えるということなのか。
委員長: そうである。
★ (児玉) はい。それもそうなのですけれど、その次の7~8枚目のところで、もうこの認証することができるようにしたと書いていて、これが認証用に使われると、何か情報を取られるというか、認証というのは恐らくログインなどに使えるということですよね。
委員長: 顔認識、パスポート、指紋の辺は、認証できるものであるが、DNAは現状では相手がない、つまりデータベースがないため、簡単にはできないはずである。
★ しかし、何か匿名の全ゲノムデータと、ネット上にあった情報をマッチングできるという研究が出てきた場合は。
委員長: そこの部分がどんどん公開情報が増えてきているため、他のものと一緒だろうということになってきたが、認証システム自体は、遺伝子に関してはそんなにできていない。
★ 何か認証みたいなものが始まっているのか。
委員長: いや。いろいろなやり取りの中で、DNAの話だけ違うではないか、個人識別符号にするべきではないのではないかと。研究でDNA情報を取得しているのは、認証のために取得しているのではないと言っている。
★ 識別と認証という言葉の使い方が。
委員長: ヨーロッパの話で言っておくと、例外として、学術に使ってよろしい、本人がOKしていればよろしい、公衆衛生のような社会的に非常に重要なソーシャルインタレストがある場合には、同意なく使ってよろしいという。
★ 日本人とヨーロッパの人たちは、人権とか個人とかいう意識が相当違う。日本人というのは何となく群れを成してやっていた方が安心しているような、長いそういう習慣があった。それに対して、やはりヨーロッパの人などは、ものすごく個人的な独立を意識し、直接的な被害があるかどうかよりも先に、そういうことをされるのが何となく嫌なのである。
委員長: 嫌だけれど、例えば難病の研究にはちゃんと提供するといったアクション自体も一方ではあるのではないか。
★ そこは教育の程度の違いというのがものすごくあるような気がする。
★ 日本人の場合は、どちらかと言えば、自分の病気、将来どういう病気になるかとか、がんになる確率がどれぐらいあるか。そういうことが気になり、DNAを調べてもらったりしている人が多いが、それ以外に個人情報としてどう悪用されることがあるのかと思うが、全く見当がつかない。
★ 何となく思っているのは差別ではないか。
委員長: 家族性の病気というのがあるが、それを表に言いたいかどうかというのは難しいところである。
★ 不利益としてはそういうことが例えば分かって結婚に反対されるといったこと。
委員長: 保険の問題もある。遺伝の情報をみんなが自分で持つようになったときに、保険会社がそれを聞く権利を持つようにするのか、しないのか。
★ アメリカでそういうのが緩いのは、何かで取った情報は、法律があり、それを目的以外に使うと罪になるというのが基本的にあるため、意外と緩やかでもいいのかもしれない。ある目的を持ってやったものを、他の目的に悪用するというところに明確に法律の規定があるが、日本にそれに類する法律がないようですごく困ってしまう。
委員長: 半年くらい前に国会で、「アメリカには差別禁止法があるのに、日本はどうなっているのか」と、議員で質問した人がいる。確か厚労省の労働担当の人が、そういった個人のいろいろな状況によって、雇用の差別をすると違反であるという内容があり、それに相当するので、わが国においては、そこは手当てできていると思うと答えていた。別の話題としては、来年、臨床研究法というのができて施行されるため、全体として、この間の臍帯血の話もそうであるが、やはり法律が要るという話が急速に広がってきている。
★ 日本は何かあると、わが国独自の法律を作りたがる傾向があるが、こういう問題というのは、何も日本だけではなく、世界でみんな同じことが起こっているため、作るときに初めから国際整合性を考えて作っておけば楽なのに、余計なことをすると、後から大変になる。
委員長: この新しい医学系の話、生命科学系の話は、世界中、混とんとしているなという印象がある。レギュレーション側で、どこへどう入れたらいいか分からないため、試行錯誤している。
★ なるべく1回の審議数を少なくし、そのたびにこういった意見交換をやれるようにしてほしい。
委員長: 委員会の頻度を上げるということで対応できるなら、いいかなと思う。

 

以上

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