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No66

第66回 神戸事業所 研究倫理第一委員会 議事要旨

1. 平成30年10月24日(水)14:59~18:34
2. 場所 理化学研究所 神戸地区 MIR&Dセンタービル 2階 大会議室
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
野崎 亜紀子 委員 (京都薬科大学基礎科学系一般教育分野 教授)
林 知里 委員 (大阪市立大学医学部 准教授)
北島 智也 委員 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)
濱田 博司 委員 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム チームリーダー)

(説明者)

前田 忠郎 (生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 客員研究員)
藤井 慶輔 (革新知能統合研究センター 構造的学習チーム 研究員)
岩根 敦子 (生命機能科学研究センター 細胞場構造研究ユニット ユニットリーダー)
辻 孝 (生命機能科学研究センター 器官誘導研究チーム チームリーダー)

(オブザーバー)

深井 宏(神戸事業所長)

(事務局)

吉識 肇 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
堀江 仁一郎 (神戸事業所 安全管理室)
吉田 道生 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)委員紹介
(2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規、変更)
(3)その他

5. 委員紹介
 

生物学、医学等に関する専門家として新たに林委員の紹介があった。

6. 審議事項
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2018-025 「ヒトiPS細胞由来網膜細胞の臨床応用のための製造及び品質管理方法の検討」
研究実施責任者:BDR 網膜再生医療研究開発プロジェクト 髙橋 政代

【概要】
説明者の前田研究員より、本研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答が行われた。審議では、計画申請書面で委託先について詳細を記載するよう指示をされ、計画申請書を修正の上で承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: ゲノム解析を行うと書いてあるが、これはメチロームということか?

説明者: そうである。メチル化されている場所だけになる。メチル化されているパターンをゲノムワイドで見ていく。

委員長: (今回は)向こうの倫理審査はなく、それから契約もない。

事務局: 一応、委託に近い形で行くと思う。

説明者: 委託のための書類のやりとりは、もちろん行う。

委員長: サンプルが外部へ出てシークエンスが行われるのですけれども、(委託先の個人情報の取扱いについて)確認することがゲノム指針にあるはずで。これはメチロームだから要らないかもしれないが。一次情報は出てくるのか。

説明者: 一次情報はある程度出てくると思う。

委員長: では、こちらに返ってきて、向こうもそれを持ったままになるのか。

説明者: いや、全部を。

委員長: 完全委託?

説明者: そうである。完全委託である。

委員長: 分かった。

★ **大学はなぜこういう解析だけをやるのか。「自分はそこが得意なので、ぜひ協力します」ということなのか、あるいはそれにプラスアルファで何らかの益があるというか。

説明者: 両方の側面があると思う。この研究は**大学の○○先生の研究室にお願いしようと思っているが、○○先生はその研究分野で非常にご高名な方で、その得意分野はやはり他の研究に役立てていこうというところで、**大学で先端技術支援基盤プラットフォームをつくり、それで外部委託として引き受けて支援していくと。

委員長: 技術もいろいろ持っているし、信頼できるところだとは思う。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

★ 様式の問題かもしれないが、これだけを読むと、どこに頼むかは全然分からない。

委員長: あと、先ほど言った解析後の情報が全て戻ってくるというのは大事なことで、それも・・・。

事務局: その辺が確かにおっしゃるとおり読みにくい。

委員長: 本当にミニマムで言えば、もう一個だけ箱があって、そこにこの委託に関してはこういうものであるということが研究者の言葉で書いてあって、研究者はそれに合わせた書類を自分で持っていると。

事務局: そこは検討する。

★ もう一つ気になったのは、例えば倫理委員会でこれを審議したときに、ある倫理委員が「本当に大丈夫かな」と思ったら、その委託先なり依頼先なりに「あなたのところは、どうやっているのですか」と聞こうと思ったら聞けるぐらいまで情報がなければ、本当は駄目なのかもしれない。

委員長: それは当然で、入れてもらう。事務局も、上がってきたら委託のところを確認して、この議論になるということで、これから箱にしっかり書いてもらうと。

事務局: 承知した。

委員長: ○○研究室というのは、メチロームとかでもう全国に知られた研究室なので。では、その辺を修正していただいて、事務局レベルでの書類確認で承認ということでよろしいか。では、修正の上で承認ということで。

 

2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2018-030 「ヒト移動運動における協調構造に関する力学特性のデータ駆動的発見」
研究実施責任者:AIP 構造的学習チーム 藤井 慶輔

【概要】
研究実施責任者の藤井研究員より、新規研究計画の内容について説明があり、質疑応答が行われた。審議では、個人識別符号の取扱いについて議論がなされた。実験計画書にネットワーク接続をしていないパソコンでデータの解析や保管を行うことを追記するよう指示をされた。他は特に問題がないとされ、承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ この研究成果がうまく完成すると、患者さんからデータを取って、「この人は左の膝の関節は前十字靭帯不全断裂している可能性がある」とか、そういうことが分かってくるかもしれない研究であるということか。

説明者: そこまで詳しくは分からないかもしれないが、それに近いことを動きから評価できるようになるという位置付けにはなる。

委員長: どこの大学にもこういう研究分野が今は広がっているのか。

説明者: こういう研究自体は、例えば医学系のリハビリテーション分野でよくやられている。

委員長: 今、そういう分析の方法、いろいろな手法をみんなが模索している状態で、今回は力学、筋活動量などを入れて記述したいということか。

説明者: そうである。

★ これは年齢や性別に分けて考えるのも面白いかなと思ったのだが、そういった情報は今回は入っていないのか。

説明者: 今回は、データとしては取得していない。

★ (本研究は)基礎研究になるのかなと思って見ていたが、意外と開発に近いところをされている方も多いので、どの位置なのだろうかと。

説明者: 今回の研究に関しては基礎研究で、新しい解析手法を開発して、それを検証するという位置付けになる。ただ、最近は義肢や装具などはすごく開発が進んでいるので、その辺の研究者と共同でやれば、そのような発展も可能であると考えている。

委員長: モーションキャプチャーデータが個人識別符号に該当するということだが、これは何でもそうなのか。誰かのモーションをキャプチャーすると・・・。

説明者: 特に歩行がなる。テロリストの識別、発見に使われているなど、その人らしさを結構表す。

委員長: 皆さんの分野ではそういう理解で、確実に個人情報として扱っているのか。昨年に個人情報保護法が改正されて、そこから個人識別符号だということでやっているのか。

説明者: そうである。

委員長: では、その保護や取り扱いに関しては?

説明者: 基本的にデータは匿名化してIDで管理する。ただし、歩行のモーションキャプチャーデータは座標データなのだが、それを再現してしまうと個人らしさが出てしまうので、個人識別符号に当たるということで、モーションキャプチャーデータが個人情報、個人識別符号に該当して、その管理を厳重に行うという考えである。もちろん、コンピュータにはパスワードをかけてロックしたり、外部記録装置に記録する場合は鍵付きのキャビネットに保管したりする。

委員長: インターネットには直接つながらないのか。

説明者: そうである。

委員長: 解析のときもつながっていないのか。

説明者: そうである。

委員長: これ(計画書)は保管のことしか書いていないが、研究途中がどうなっているか。もし別にインターネットにつながずに研究ができるのだったら、書いておいていただいた方がありがたい。

説明者: 承知した。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 基礎研究ということで、先ほどの研究中のデータの扱いについて確認していただき、可能なら補足で書いていただくことで、あとは問題ないと思う。よろしいか。では、事務レベルの修正の上で承認ということにしたいと思う。

 

3)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2018-032 「ヒト腎生検組織糸球体の電子顕微鏡3D微細構造モデル構築による検討」
研究実施責任者:BDR 細胞場構造研究ユニット 岩根 敦子

【概要】
研究実施責任者の岩根ユニットリーダーより、新規研究計画の内容について説明があり、質疑応答が行われた。審議ではオプトアウトなどについて議論があり、共同研究先の院内掲示でのオプトアウトとした理由が分からないとの意見があった。また、当該研究の実施において、動物実験を経ずにヒト由来試料を使用する必要性について記述するよう修正を求められ、審査継続とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 今回は動物実験など、そういうものはもう十分されているのか。

説明者: (実験動物の)腎臓に関しては、私は一度もまだやっていない。

★ ご自身はやっていなくても、他の方が例えばマウスを使ってやられているのでは?

説明者: そうである。腎臓で電子顕微鏡所見が診断基準になるというのは、従来の方法としてもう確立している方法である。

★ 今回、3Dでやろうというところは新規なのか。

説明者: そうである。

★ 恐らく慢性腎疾患のモデルになるようなモデル生物があるとは思うのだが、やはりヒトの疾患の病態というのは必ず違いがあるはずなので、ヒトでやることで初めて分かることが恐らくあるのではないかと思う。そういうことをやはりここにちゃんと記載していた方がいいと思う。

委員長: モデル動物が完全にはヒトの病態を再現できていないということは、ある種、ほとんどの場合あるので、それを一言書かれるだけでも説得力が出る。

説明者: 承知した。

委員長: 基本的にやはりヒトの試料を扱うことに関してはハードルがあるということで、この委員会があるわけですから、それは考慮されるといいのではないかと思う。他に質問はないか。

★ 気になったのだが、今回のヒト試料は残余であるということであるが、もう少し患者さんが分かるように、患者さんが安心するような書き方を・・・。どれだけ素晴らしい研究に組織が提供されるのかということ、そして組織が提供されるといっても、腎生検でほんのごくごくわずか採取されたものだから、そんなに腎臓の大きな部分を切り取ってというものではないということなど、研究に参加することに対して患者さんがもっと安心できるような書き方をしていただかないと。

委員長: あとは利益と不利益という点をよく入れるので、余分に採るわけではないので不利益はないし、しかも参加しなくても治療には影響しないということ、その辺は入れていただくのがいいと思う。

★ であるが、そもそもICを取らないと書いてあるが。「インフォームド・コンセントの取得は行わない」とあって、オプトアウトとして掲示をするということか。

説明者: そのように聞いている。

委員長: どこでオプトアウトと分かるのか。

★ 9ページの一番下の備考欄に「HPとポスターを院内に掲示しオプトアウトを行う」と書かれているので、それなのかなと。

★ 3/9ページの「インフォームド・コンセント」のところで、同意を得る主体が理研以外の機関となっていて、それで9/9ページの備考欄には「インフォームド・コンセントの取得は行わない」となっているので、そうすると、3/9ページの備考のところに、同意を得る主体が理研でもなく、理研以外の機関でもなく、インフォームド・コンセントを行わないという記載がなければいけないのではないか。

★ インフォームド・コンセントの一つの形態としてオプトアウトという手法があると理解することもあるかと思うので、そういう意味合いだと思う。インフォームド・コンセントで、いわゆるコンセントの形態であるから、面と向かって「はい、そうです」「はい、受けます」「受けません」といったコンセントの在り方と、ノーと言うという意思表示の在り方、コンセントの位置付けなので、特段これ自体が矛盾しているとは思わない。

委員長: なるほど。理研以外の機関が担当し、それをオプトアウトでカバーする。他に質問がなければ、これで質疑応答は終了する。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

★ 今回の場合は動物実験を先にちゃんとやってきてくださいというのも一つのやり方であるし、もう一つは単に形式的に「共同研究契約を結んでいる」というのではなくて、もう少し共同研究の仕組みを読み取れるような研究計画書の在り方というか、研究の在り方を今後、サジェスチョンしていくことが必要なのかなと思いながら伺っていた。

委員長: そのあたりはどう思われるか。私は(動物実験が)要らないなら要らないというか、ヒトでしかできないという説明が欲しいと思った。ヒトの病態を研究しないと駄目だと。それをちゃんと説明してもらうだけでも、だいぶ違う。

★ 何も不要な動物実験までわざわざやってこいなどと言う必要は全くない。しかし、慢性腎不全というのは、経験から申し上げると、いろいろな条件設定を突然ヒトの材料でやるなど、とても信じられない。電顕で切るときも、実は慢性腎不全になってしまうと、腎の糸球体は硬くなる。少し軟らかいエポに埋めると、うまく切れないので、もう少し硬めにしてからやった方がいいとか、そういう議論が普通にある。ですから、その条件設定のようなものが必ずどこかで要るのであって、それを突然、貴重なヒトから頂いた材料でやるというのは、あまり釈然としない。

委員長: ちょっと判断を迷うところもあるが、せっかくの機会をつかんでおられるということもあり、技術自体はあまりいろいろな条件を設定するという感じではないようなので、最小限の動物での実験を、モデル動物を使うかどうかはともかく、考慮してはどうかという点と、なぜすぐにヒトでかなり本格的にやらなければいけないのかという説明をやはりもう少し詳しくしていただきたい。
 もう一つは、先ほど委員がおっしゃったように、これは科学として必要だという説明しかないので、そこはもう少し患者さんに配慮して、文章を変えては。

★ (オプトアウト用文書に)「確定診断に至らない症例も少なからず存在します」と。「本研究によって糸球体の3D微細構造モデル作製を行う事により、尿蛋白漏出機構の主座である糸球体の基底膜を詳細に観察し得れば、病態の解明や治療法への応用などが期待されるため、この研究を計画しました」ということで、この研究の臨床的なメリットは、ここに書かれてはいると思う。

★ 一般の方には分かりにくいと思う。この文書についてはポスターのように表示されるということだが、どれだけの方がこれを読んで理解できるのかという疑問はある。

★ 少なくとも腎臓内科としては、腎生検をすることについては必ずICを取るわけでは?

委員長: それは診療の中のICなので、研究として取っていない可能性が確かにある。だが、これは別に個人情報、ゲノムの情報を分析するわけでもなく、終わってしまえば捨ててしまうし、形態的なことを調べるだけなので。

★ 最近は病院でバイオプシーを採るときは、それがどのような形で臨床研究等に応用させてもらうかどうかは分からないので、大抵は「採った検体を場合によっては研究に使わせていただくことに同意を頂けますか」というものを一緒に作っておいて、組織を採るときに出す。そのときに同意を頂いてオーケーという形にはなっている。

委員長: そうであれば、インフォームド・コンセントには一般的な医学研究への包括的な同意が取れているという説明が普通は入ってくる。今回の研究に関しては、オプトアウトだけすると書いてあるから、われわれは混乱している。結局のところ、これから新規に試料を採取するのか。これから検査を受ける方の試料を使うのか。

事務局: これは恐らく承認後に、普通の臨床の中で採る。臨床の時点ではどれが3Dに向いているものなのかは判断がつかずに、結果が出てきて、それを・・・。

★ 確定診断が付かないと、回せない。いろいろな腎臓の病気の人があるので、バイオプシーをする人の中で、病理組織学的に慢性腎炎の診断名が付く人に対してお願いしていくという形になる。

委員長: そうであれば、患者さんとコンタクトできるのではないのか。やはり基本はオプトインで、インフォームド・コンセントをちゃんと説明して取っていただきたい。基本は同意を得られるときには同意を得るべきであるから、掲示だけでオプトアウトの機会を出しているというのでは、ちょっと。

事務局: 要は、共同研究先で何とかしていただかないと、という整理になるか。

委員長: そうである。オプトインができるように見て取れるということである。何かわれわれが理解できない事情があって、コンタクトが全く取れないとか、何かは分からないが、とにかく元々書かれているとおり掲示でやらないといけないということが納得できれば、このまま通す可能性もある。

事務局: 承知した。

委員長: (審査結果は)継続でよろしいか。対応が早ければ、メールベースでの審議で通すことも可能なので、次(の開催)まで持ち越しかどうかは分からないが。

 

4)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)
受付番号:K2018-033 「疾患特有の毛髪診断技術の確立に向けた毛髪の性状解析研究」  
研究実施責任者:BDR 器官誘導研究チーム 辻 孝

【概要】
研究実施責任者の辻チームリーダーより、新規研究計画の内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行われた。審議では、目的とする疾患数、解析に有効な試料数の確保の観点から、当該医療機関を共同研究医療機関とした理由などについて更なる説明が必要であるとされた。また、研究計画申請書に、ヒトの疾患と毛髪の性状との関連性について参考文献を明示し、対象と人数等について正しく記載することとされ、審査継続とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

説明者: 前回の倫理委員会で指摘事項を頂いた。疾患患者さんを対象とするということで、新規課題として切り分けるようご指示いただいたので、今回の委員会で新規課題としてお諮りする。

委員長: マウスなどの動物ではなかなか難しいと書かれていて、それでヒトの毛髪で研究したいということなのだが、研究は全然ないのか。

説明者: 動物を使った研究は、調べた限りではない。さらに病態として、例えばヒトの糖尿病とマウスの糖尿病は(病態の)全てが相関するわけではないので、やはりヒトの疾患はヒトで見るしかないだろうというのが私どもの考えである。

★ 診断が確定している患者20名を対象とすると(計画書に)書いておられるのだが、対象疾患が糖尿病や生活習慣病、がん等ということで、これは20名でこの全ての疾患を網羅するという形か。

説明者: 現在、考えているのは、1疾患について20名である。

★ そうすると、全部で100名ぐらいになるわけか。

説明者: そうである。分かりにくい記載であるので、ここは書き改めさせていただく。

★ 髪の毛の長さによって、1cmで1年前の情報が分かるという説明だったが、例えば長い髪の方で10cmほどあれば、もっと前の情報も得られるということになるのか。

説明者: そうである。例えば病気を発症した患者さんであれば、もう間違いなく病気だというのが根元の根元の1cmぐらいの状態であり、それと発症前と想定される12cm先の1年前の情報を同時に比較することによって、その人の健康状態がどう逸脱したのかを見ることが可能なので、そういう見方もする。

★ 分析可能な長さというと、最低1cmぐらいなのか。

説明者: 1cmを基準に考えているので、1cmが基本最少量だと思っている。

★ 1cmごとに切っていく?

説明者: 根元の1cmとその方が健康だったころの部分を比較できるようなことも考えている。

委員長: 五つの疾患についてどのような臨床情報をもらうかは、はっきり決まっているのか。

説明者: この5疾患に関して医師がそれぞれの疾患を判断するに至る具体的なマーカーに関しては、医療機関と相談の上、情報入手を進めていきたいと考えている。

★ この病院のホームページを見ると、診療科の中に乳がんの対象になるような診療科が見当たらない。

説明者: 大きい病院ではないので、その分、科目が一致しないように見えるかもしれないが、少なくとも私どもがそこの院長とお話ししている限りでは、乳がんの患者さんたちを対象にしている科がある。

委員長: 外科か。

説明者: 内科、外科、循環器科、整形外科、脳神経外科などがある。添付の資料の26ページ。

★ 見ているホームページには、外科の中で整形外科と脳神経外科が特別に書いてあるが、外科とは書いていない。

説明者: 特に重点的に力を入れているのが脳神経外科なので、ホームページ上は多分、この院長が重点的に進めている領域なのだと思う。病院によって、大きい病院だったら、科でそれぞれの疾患をイメージできるぐらい診療科目数が多い病院もあるが、例えば地域の病院だったりすると、診療科目数としてはこの程度ではないかなと思う。この規模であれば。

委員長: 他に何かあるか。

★ 申請書の「ヒト由来試料・情報提供者/被験者について」の後ろから2行目で、「毛髪が継時的に健康状態を記録する媒体であると考えることから、健常人・疾患発症前・発症後の3種類の検体は同一の人物から一度に採取される可能性もある」とあるが、これはどういうことか。

説明者: 例えば病院に診察に行ったときに、「あなたは糖尿病を完全に発症しているから、入院してください」と言われる状態の方がおられる。その方の根元のところは、もう発症している状態ということになる。これが例えば6カ月前の時点では、血糖値の値が正常範囲内に収まっていたとすると、6カ月前はまだ健全な状態だったと想定される。健康な状態・発症前・発症時を1本の髪の毛から位置を変えることで採れる可能性があるという意味である。

★ 大変興味深いと思うが、やはり診断というのが鍵になるのかと思う。毛髪をもらって後ろにさかのぼって解析するということで、たくさんの情報が確かに得られると思うが、発症前というか、健康診断となると、やはりその先の縦断的なということが思い浮かんでしまう。

説明者: 考えているのは、第一段階としてこれぐらいの人数の規模で、まずは疾患と毛髪から得られる情報がリンクするのかを見極めるというのがステップ1である。

委員長: そう書かれた方がストレートなのではないか。発症していないといっても、その情報はしっかり分かるのか。

説明者: 発症している方と健常者、あるいは罹患が疑われる、ちょうどボーダーラインあたりにいる方も比較対照になる可能性はあろうかと思う。

委員長: 本来はしっかりと時間をかけて、健康な人から始めてコホートとして追い掛けて、それで発症した状態の者をつかまえてというのが、一番詳しくやる研究で。健康の状態を見ることができると書いているから、今のような質問が出ている12cmの髪の毛を採って、上の部分が健康だといっても、そのときの同じ程度の診療情報があるか。

説明者: ないケースもある。

委員長: そこがデザインとして理解できない。

説明者: その人の健常状態はもちろん存在するので、その人の健常状態、それから発症状態が一人のヒトで比較できる可能性がある。それから、病気を発症した方々の群と健康な方々の群を比較することによって、明らかにこちら側の発症した方々で特有な疾患マーカーが見つからないかと。そのために健常者とある特定の疾患を発症している方々、完全にブラックな方々というか、もう発症している方々を比較するということを、ここの中では意図している。

委員長: 主として、それをやるということか

説明者: そうである。

委員長: よろしいか。では、これで質疑を終わり、審議に入る。

【審議】
説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 健常者と病気の方を単純に比較するということをまずやればいいのに。

★ 発症といっても、病院に来て診断が付いて初めて発症になるので、5年前からしっかりと病気があるのに来ていなかったりしたら、5cm先の情報も根元の情報と変わらないので。何か全体的にアバウトである。

委員長: 全体にアバウトで、なぜこの病院なのかというのが。

★ やはり病院の得意なところというのは、診療科・部門紹介がちゃんとホームページにあって、五つの疾患の中で糖尿病、高血圧、腎不全は大丈夫だが、乳がんと急性白血病というのはどこにも書いていない。この病院と一緒にやるのだったら、この病院で集められる患者さん、得意とする疾患をやはり選ばないと。

委員長: この病院が適切な共同研究先であるかどうかについて私たちは疑義があって、その理由はがんの診療を十分やっているように見えないことである。この五つの疾患を研究対象にするに当たってこの病院が適切であるということについて、もう一度、説明を頂きたいと。

★ あるいは、この疾患名を変えても構わないと思う。この病院が得意とするような他の疾患に。

★ 気になるのは、(研究対象の)疾患はかなり不安を駆り立てるようなものでもある。それが一般企業を含んだコンソーシアムの中で扱われていくということが、どこか患者さんが利用されてしまいかねないという思いが何となく出てくる。

委員長: ただ、どの病気で当たるかは分からないから、いろいろやりたいのではないか。

★ 良く言うと、試験的なことであるから、相関があるかどうかも分からないけれども、取りあえずやってみて、もし相関が分かったとなったら、意義があるかなとは思う。でも、Nが20ではあまりに少ないのではないかとは思う。

★ ただ、当たり研究ということもあるから。これで傾向が見えたところで大規模研究に移るとか、それを基に研究費を獲得して大規模をやりたいとか、それは20例がとんでもなく少ないということはないと思う。

委員長: (ここで)議論していたことを全て聞くとする。この病院でいいのかという質問をした上で、この病院でやるなら、この病院が得意とする疾患領域に絞るべきではないかという質問をして、それから20名で本当に出るのかということ。
 将来、10年後ぐらいに髪の毛が(疾患の診断に)すごく使えるということが分かって、何をわれわれはブレーキを掛けていたのだという話になるのかもしれないし、分からない。(申請者へ)質問をして、それで情報を頂いて、皆さんにその内容を回覧して、書面審議で、修正の上で継続審議に。

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