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No67

第67回 神戸事業所 研究倫理第一委員会 議事要旨

1. 平成31年1月17日(木)15:00~16:54
2. 場所 理化学研究所 神戸地区 発生再生研究棟A 2階 大会議室
3. 出席委員等
 
(委員)

加藤 和人 委員長 (大阪大学大学院医学研究科 教授)
上野 弘子 委員 (広報メディア研究所 代表)
黒澤 努 委員 (鹿児島大学共同獣医学部 客員教授)
永井 朝子 委員 (公益財団法人尼崎健康医療財団 市民健康開発センターハーティ21 所長)
野崎 亜紀子 委員 (京都薬科大学基礎科学系一般教育分野 教授)
林 知里 委員 (大阪市立大学医学部 准教授)
北島 智也 委員 (生命機能科学研究センター 染色体分配研究チーム チームリーダー)
濱田 博司 委員 (生命機能科学研究センター 個体パターニング研究チーム チームリーダー)

(説明者)

前田 亜希子 (生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 上級研究員)
小出 直史 (生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 研究員)
万代 道子 (生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 副プロジェクトリーダー)
増田 智浩 (生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 研究員)
吉田 晶子 (生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 研究員)

(オブザーバー)

深井 宏(神戸事業所長)

(事務局)

吉識 肇 (神戸事業所 安全管理室長)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
堀江 仁一郎 (神戸事業所 安全管理室)
吉田 道生 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
(2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規)(継続審議)
(3)その他

5. 審議事項
 

1)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2018-042 「iPS細胞由来網膜色素上皮細胞の免疫原性解析」
研究実施責任者:BDR 網膜再生医療研究開発プロジェクト 杉田 直

【概要】
説明者の小出研究員と前田研究員より、研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では特に問題はないとされ承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: 最初の審査を覚えておられる方と覚えておられない方といなかった方がおられると思うが、これは臨床研究で結構重要な役割を担う方法になってきているというのが私の理解で、このようなシャーレの中の検査で意味のあることが測れるということで、私は感動しつつ見ている。

説明者: 元々の免疫反応をモニタリングする試験は例えば臓器移植などではよくやられていて、血液と血液を混ぜるのだが、血液と移植した細胞そのものや移植した臓器そのものを混ぜて反応を見るという系はなくて、今回は移植したそのものと患者さんの血液を混ぜるので、とても感度が高い。しかも定期的にモニタリングが可能なので、非常に有用だということで、今は研究段階だが、事業化することも含めて幾つか考えている。

委員長: よろしいか。何か質問は。

★ 遺伝子としては今、2種類が挙がっているが、ハイスループットにやるという計画なのか、それとも幾つかの候補があって10個以内に限られるとか、そういう数の大まかなサイズというか。

説明者: DRXTとS17というのは細胞の株の名前で、遺伝子の名前ではない。それに対して幾つかの特定の遺伝子はもう決まっていて、その遺伝子をつぶして免疫反応が起きるか、起きないかを見ている。ですから、スクリーニングをするという印象というよりは、もう決め打ちでやるというイメージである。

委員長: 新しい細胞を使うと。○○は元々の共同研究先なのか。

説明者: 元々(共同研究先として)入っていて、細胞(の種類)を追加した。

委員長: ゲノム編集したものか。

説明者: したものとしていないものの両方を頂くことになっている。

委員長: 了解した。将来的には、ゲノム編集した拒絶反応の少ない細胞で臨床研究したいということか。

説明者: そうである。

★ これは当初から遺伝子編集をすることも想定された研究計画だったのか。

説明者: いえ、元々は細胞と血液を混ぜることで免疫のモニタリングができるかどうかという試験を作るための計画だったが、昨今やっているRPEの他家移植で、免疫反応を遺伝子編集によって幾つか抑えられるのではないかという知見が出てきたため、実際に検証するための試験をここで組みたいということで、遺伝子編集については今回、付加的に乗せたようなイメージである。

委員長: ゲノム編集をするということではなかったことのように思われるが、細胞の拒否反応があるか、ないかを調べる研究であるという意味では、細かいレベルの追加だと思う。

【審議】 説明者退席後、審査が行われた。

委員長: いかがか。特に問題ないと私は考えるが。

★ 一つだけ、発言させていただく。これはヒト由来の材料だから、審議しなければならないというのは指針等で決まっているからやるのかもしれないが、これだけiPS細胞が一般化してきて、いろいろなところが持って、いろいろな株が出てきて、これはin vitroの話だが、各研究者がシャーレの中だけで「あんなふうにしたい」「こんなふうにしたい」というのをこの倫理委員会が全て審議する時期はもうそろそろ終わったのではないかと思うが、どうなのか。

★ おっしゃるとおりで、恐らく近々、その体制は変わっていくのかなとは思うが、ただ、例えばCiRAからもらっているHLAホモドナー由来のQHというのは、恐らくストック・プロジェクトの中のiPS細胞だと思う。このあたりはまだ何というか、あちらの体制も何か変わるとか、いろいろな動きがある中なので、iPS細胞の中にも既知というか、もう出回っているというか、みんなで共有できるようなタイプのものとそうではないタイプのものがあるのだろうと思うので、これはどこかの段階で整理するという日本の状況になるのではないかと考えている。

委員長: ありがとうございます。良い感じの解釈で、私も同感である。特に疾患iPSというものがあって、それは本当に患者さんが見えている形で使われる場合もあるから、それをたくさん使っていったからといって市販のものと一緒でいいのかというのは、ゆっくり考えた方がいいかと思う。ゲノム解析をして、では、その解析データをばんと出してしまっていいのかという議論も、やはり整理していかないといけない。
 そういうことで、この研究自体は問題なく承認ということにしたいと思う。

 

2)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:K2018-038 「iPS細胞由来網膜細胞移植による網膜変性疾患治療法の研究」
研究実施責任者:BDR 網膜再生医療研究開発プロジェクト 高橋 政代

【概要】
説明者の万代副プロジェクトリーダーより、研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、申請書と追加された共同研究先の同意文書との記載内容に矛盾があると指摘があった。申請書の記載内容を正しく修正し、未成年者試料について適正な形で取得されていることを確認することを求められ、条件付き承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: これはなぜ台湾の2株だけ、2人だけなのか。

説明者: 希少疾患なので、日本でもこの遺伝子に関しては本当に2人とかしか樹立していなくて、今回の追加も2株だけである。

委員長: その日本のものは入っていないのか。診断が確定している患者2名だけで、成人1名、未成年1名。これは両方、今回の追加のようなのだが。

説明者: 追加に日本のものは入っていない。同じ原因遺伝子の疾患で、私たちも機能解析を進めていたが、お互いの情報を共有して、それぞれに持っていた機能解析の方法を使って研究をしようということになった。

委員長: 台湾の方は何名を予定しているのか。

説明者: 2名である。

委員長: ここには日本の患者さんが入っていないのだが。

★ ここでは新しく追加したところしか書いていないのか。

説明者: そうである。

委員長: これはもしかして書類の作成ミスか。今まで例えば4名やっていたとする。4名に対して、台湾の2名も一緒にやろうということでトータル6名だったら、流れの中でこれが追加だと分かるが、それが全然なくて、突然、台湾だけのように読めるので、ますますその下の健常者10名で視細胞を作るという話と全く違うことを二つやるように思えてしまう。これは、昔は一つだった課題を分けたものかと。きちんと答えていただきたいが、同じ研究の枠組みの中で日本の方のiPSも使っているのか。同じ病気の方。

説明者: 同じ疾患のiPSは使っている。既にそれは別の研究計画に入っている。

委員長: 高橋先生はとにかく眼の病気の研究をしているわけで、その中でいろいろな事情でプロトコルが複数に分けられているが、この研究はAの何番、この研究はBの何番というふうには見ていないのではないか。

説明者: 今回はそうなってしまっている。

委員長: しかし、やはりここではこの研究の中で何をやっているかを説明できないと。

★ この疾患iPSを使った研究も、この研究プロジェクトの中に入っているのか。そうだったら、前のものを入れておかないと、ということになる。この書類では本疾患由来が台湾の2名の方だけになってしまっているので。

事務局: この前に新規として1つの計画書から3つに分けた経緯があるが、ここでは疾患患者については検討されていない。

委員長: 上の文章には、「網膜変性患者由来iPS細胞は、臨床的に網膜変性疾患と診断されていること、又は網膜色素変性患者の遺伝子診断において原因遺伝子が判明したことを基準に選択された患者よりインフォームドコンセントを得て提供された組織等より作製する」と書いてある。しかし、診断が確定する患者がゼロというか、書いていないということで、この時点で矛盾している。

★ そうである。この時点で、ちょっとまずい。

事務局: 分けたときに、引っ張ってくるのを忘れたのだと思う。

委員長: では、多分、ここに追加前の数字はゼロではないはず。確認していただければいい。他にご質問は。

★ 年齢について質問するが、ここ(申請書)には未成年で16歳という記述があって、翻訳された15ページの研究の対象の選定基準Cの20歳以上というのとはまた別の枠組みで選ばれた未成年ということか。15ページの研究の対象の選択基準の20歳以上というのを見ると、16歳は含まれないのかなと思ったのだが。

説明者: 一応、責任者の了解で採ったということで台湾から連絡を受けているが、確かにここに書いてあることとは矛盾する。

委員長: 未成年はやはり実際に対象にするか、しないかというのは非常に注意して、必要でないのであれば、対象にしないのが普通なので、するときには注意していただかないといけない。

★ 今回は若年の方が1名入っているということになっている。今言われたように、未成年は基本的にあまり入らないというか、そういう形だと委員長もおっしゃたが、ただ、研究の背景の、あちらのIC文書の内容を見ると、比較的若年の方に発症の多い病気だと書かれているし、もし本当に必要であるならば、そういったことをきちんとお書きになることがやはり重要なのではないかと思う。
 それに加えて、元々の台湾の方のIC文書(原語版)の訳されていない部分なのだが、かなりしっかり考えられて、若年、いわゆる未成年者である場合にはこうしてくださいということを書いておられる。7歳以上12歳未満の場合はとか。

説明者: 説明ではきちんと手順を踏んで得られた細胞と聞いてはいたが、訳文には確かに反映されていない。

★ そうなると、プロトコル全体の建て付けをどのように考えて進んで、変更にまで至っているのかということを明らかにというか、説明していただけると、納得できるのかなという気もしている。

説明者: この株をいきなり作って持ってきて、ここで研究を始めましょうというわけではなくて、もうこの株で向こうでは倫理委員会を経て承認を得た上で2年間ぐらい既に研究もされていて、その最後の追加の研究のところで、こちらの解析を使いたいとのことで、この2株を持ってきて研究させてもらえないかというのが、事の始まりである。

委員長: それは分かるが、書類上、はっきり矛盾していることがあるので、困っている。あまり疑ってかかるものではないと思うが、もしこれが共同研究先でいい加減に審査をして、なし崩し的に未成年から試料を採っているのだと困るということで。

説明者: それはそうである。こちらの書類に反映されていなかったので、そこは再確認する。

委員長: 確認するしかない。未成年の細胞を提供してこられるという、そしてそれが倫理審査をしっかり通ったもので、倫理的に審査されてインフォームドコンセントもしっかり取られたものであるということが分かればいいと思う。

説明者: 分かった。

【審議】 説明者退席後、審査が行われた。

委員長: いかがか。高橋グループもやることが多くなってきていて大変だなと。高橋研で全体を見ている人はいるのか。

事務局: いるとは思うが、そこは確認しておく。

委員長: その点は確認と。それから二つ目の点も。これははっきりと20歳以上と書いてある。信頼できるはずの台湾の、これは大学か。

★ 大学の研究所である。これはどちらが本当のところなのだろうかということか。

委員長: 別のプロトコルで承認したものを持ってきているとか、そういうこともありえる。

事務局: プロトコルが最新版なのかも含めて確認する。

委員長: その内容次第で、内容が理解できて納得できるものであれば承認できるということで、条件付き承認だと思う。

 

3)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:2018-035 「網膜変性患者等のiPS細胞由来網膜細胞の解析、並びに同細胞を用いた網膜変性疾患治療法の研究」
研究実施責任者:BDR 網膜再生医療研究開発プロジェクト 高橋 政代

【概要】
 説明者の増田研究員より、研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、ゲノム解析データに係るヒト由来情報の記載が正しくないという指摘があり、これを修正することとされた。また、ゲノム解析を外部の機関へ委託することが分かるよう計画書に追記することを求められ、条件付き承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: ATAC-seqというのは**大学でやるのか。

説明者: いえ、シークエンスをこちらで全て読んで、読まれたシークエンスを**大学の方で解析してもらう形になる。

委員長: それはいわゆる一次のゲノム情報は出るのか。

説明者: そうである。一次のゲノム情報をこちらの方で外部の会社に依頼して、シークエンスを読んでもらい、その得られたシークエンスを筑波大学の方で解析してもらうという形になっている。

委員長: 委託するということはどこに書いてあるのか。

説明者: 記載が抜けていた。失礼した。

委員長: 細胞が行って、それで特殊なゲノム解析をしてもらうのか。

説明者: DNAライブラリを作成して、そのライブラリを企業に送って、シークエンスをそこで読んでいただく。

委員長: では、向こうに個人情報としてのゲノム情報が存在することになるのか。

説明者: ○○という会社にシークエンスを依頼して、それをこちらにまた戻してもらう。そして、戻してもらったものを今度は**大学に送って、その配列を解析してもらう。

委員長: 委託する場合、計画書の書く欄はどこか。

事務局: 9/16ページ、5のところである。

委員長: 今のところ、株式会社iPSポータルしかないので、ここに加えてもらわないといけない。

説明者: 分かった。

委員長: 他の委員の方から質問は。

★ これは外部の大学と共同研究しているとか、そういうところのデータの取り扱いというのは、実際はインターネットを全く介さずにやるのか。

説明者: ハードディスクに入れていただいて。

★ それを郵送か何かすることによって、全くインターネットと関係なくやれているのか。

説明者: そうである。

委員長: 他に何かあるか。

★ この計画書の中には委託先のことは後ろに1個追加と書いてあるが、その他に先端医療センター病院というのはここにはなくて、計画書の方に書いてある中では先端医療センター病院と、あとはNIHが何をすることになっているのかがよく分からない。

説明者: このNIHに関しては、申し訳ないが、私が関与していないので、改めて回答するという形になると思う。

委員長: 事務局は何か覚えてないか。

事務局: こちらは昔から入っているところで、今、共同研究機関としては外れているが、試料の提供は既に受けているので、その試料があることについては、もうここの文書から抜くことができない。先端医療センター病院もアイセンター病院に吸収されている。

委員長: NIHのこの細胞はもう来ているのか。

事務局: 来ていると聞いている。

委員長: 増田先生は認識していないのか。

説明者: はい、私は認識していない。

委員長: 先生を責めているのではないが、高橋研のプロトコルが複数になっていて、どれにどれが入っているかというのを皆さん認識しておいていただきたい。そうでないと非常にまずいのは、実はどこにも入っていなかった研究が行われてしまっていると大変なので。

説明者: 分かった。

委員長: 他に何か。

★ 3ページ目のATAC-sequencingのところの記載でcDNAライブラリと書いてあるが、それは恐らくおかしいと思う。cDNAというのはmRNAを逆転写した、complementary DNAだから。

説明者: では、表現を変えるようにする。

【審議】 説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 先ほどと同じ状況である。「NIHの細胞はどういう細胞か」と聞いて、「私は管轄外だ」と言われたら困るので、高橋研でお話をしていただき、これは書類を並べて、みんなで理解する時間を持ってもらうしかない
 あと、委託の話も抜けてしまっているのは困る。あまりこの委員会はゲノムについて微に入り細に入り言ってきていないのだが、やはりゲノムの情報の扱いは大事なので、皆さん認識していただかないといけない。
 それから、個人識別情報として新しく定義されて、連結不可能匿名化ということがなくなったので、先ほど言われたハードディスクでインターネットにつながないとか、その辺のことを分かっているのかなというのがあったのだが。

事務局: 書かれていたようにcDNAのシークエンシングという話だったので、この前、個人情報委員会の方に確認したときには、mRNAを鋳型にしたものは個人識別符号にならないという回答を受けている。ダイレクトなゲノムのPCRをしたのだったら、それはもうゲノム情報であるが。今、伺ったところだと、個人識別符号のようなので。

★ そのはずである。ゲノムを増幅したのがcDNAというのは、ちょっとびっくりしたが。

委員長: 構造がどういう構造になっているかを、何か薬剤というか、アタックして、採れてくるDNAがどのようなものかを解析すると、こういう遺伝子の周りは構造がすごく開いているとか、構造がぎゅっとなっているとか、そういうことが分かるようになってきていて、これは今、最もホットな分野の一つである。

★ 最近はやりのオープンクロマチン。

委員長: クロマチンというのはDNAそのもの、染色体だから、一次配列が出てくるわけである。

★ あまり意味のないところのゲノムを除いて、活性的に発現されている場所だけを採ってきているという感じである。

事務局: この計画の条件としては、先ほど足りなかったことをちゃんと追加するようにということで。

委員長: そうである。委託のところとcDNAではないところの書き直しという条件付き承認に。

 

4)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:2018-034 「網膜色素変性の遺伝子診断および自己免疫の検出」
研究実施責任者:BDR 網膜再生医療研究開発プロジェクト 高橋 政代

【概要】
説明者の前田研究員と吉田研究員より、研究計画の変更内容について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、未成年者から試料を採取することについて論議があった。研究計画に、未成年者が研究上必要なことが明確にわかるよう追記・修正することを求められ、条件付き承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 今回、対象と人数にもかなり大幅な変更があるかと思うが、特に未成年のところで、従来は16歳以上としていたところ、それから若干名とあったところがいずれも変更になるということなので、この16歳よりも若い方を被験者にする理由というか、今回新たにそのようにした理由は何かあるのか。

説明者: 16歳以下であっても、遺伝子による診断の確定が今後の予後の予測であったりとか、場合によっては進路、盲学校に進むかどうかということの目安になったりする例がこれまで何回かあり、やはり16歳ということで一律に区切るというよりは、先生たちと相談して必要な例について遺伝子の解析を進める方がいいのではないかという結論に至って、今回申請している。

★ ということは、予後や病状の進行を考える上で、なるべく早く診断した方がいいケースがあるということか。

説明者: そうである。医師としての立場からお話しさせていただくと、特に盲学校に行くかどうかというのが親御さんの関心事で、それで神戸アイセンター、理研の方で遺伝子診断をしているということが他の先生方にも知られているので、それで患者さんが来られることが実際にあるということになる。

★ 単に母集団を増やしたいというわけではなくて、積極的に早いうちに診断した方がいいというメリットがあるということでよろしいか。

説明者: そうである。

★ かなり重要なことだと思う。若年の方に参加していただくことが重要だと思うから、そういったことが分かるように、皆さんに周知できるような書き方なりがあればいいと思った次第である。

委員長: 対象と人数のところには書かれているが、意義のところにも、今回16歳以下が入ることに関して、少し追記があってもいい。

説明者: 分かった。

委員長: ちなみに、下は何歳以上なのか。

説明者: 下に関しては、実際にアイセンター病院で何歳以上の採血ができるかといった場合には、やはり小児の採血自体が難しいので、実際に考えているのは、盲学校に行くことを考える小学生以上ということになる。ただ、早期診断ということになると、眼科の網膜色素変性の中のさらに細分化されたところでLeber’s congenital amaurosis(レーバー先天性黒内障)という病気があって、それは症状が生後1年以内から見られるということがある。やる可能性があるものとしては、そのような感じで1歳ぐらいも入ってくるということは想定しなくてはいけないのかなと思う。

委員長: やはり倫理審査委員会としては、小児を対象に研究をするかどうかというのは非常に大きなところで、しかも小児にはいろいろな年齢層がある。いわゆるアセント、どこまで説明が理解できるか。要するに、研究というのは利益があるかないかが分からないことをやることになるので。

説明者: 今のことを訂正させていただく。私たちのプロトコルでは、ご本人が理解できて、それで納得いただけるというプロトコルなので、やはり小学生以上が対象になるのではないかと思う。

★ 説明文書でお聞きしたいのだが、「5.未成年者の遺伝子診断と結果開示について」というところがあって、これは赤になっていないので以前と変更ないと思うが、「原則、未成年者の遺伝子検査は行っておりませんが・・・」というのは、今回特に変更する予定はないということか。

説明者: 積極的に未成年者をどんどんリクルートするというよりは、そのように十分検討した上でという意味がある。説明文書には、私たちの姿勢としてはそれほどたくさんの未成年者をリクルートするという意味は特にないということで、このままになっている。

★ しかし、本人の理解度に応じて、この文書を用いて本人に説明するということか。未成年の方に。

説明者: 計画としては同じものを使う。

委員長: 本人の意思も確認するということなので、それで代諾をご両親に取るということであれば、小学生には大事なことだけを伝えると。そういうものは努力して作っておくといいのではないかと思う。

説明者: 分かった。

★ これは大変まれな疾患なのか。年齢制限すると研究対象がなかなか集まりにくいので、できるだけ広げたいという意図もあるのか。

説明者: 今回、急に16歳以下を入れたというのは、実際にこの検査をして、遺伝子で決めて、「この遺伝子だったら将来的にかなり悪くなることが予想されるということであれば、それを中学校から盲学校に行くべきかどうかの判断基準の一つにしたいので、何とか受けさせてほしい」という患者さんがいたので、それであれば、こちらの方で理化学研究所のプロトコルの審査に出す必要があってというお話になって。

★ そうすると、これは研究ということもあるが、臨床の疾患の診断のためにも必要なわけか。

説明者: そうである。

★ では、やはり年齢を下げることに対して、かなり前向きな意義があるのではないか。

説明者: そのように考えていただけると、非常にありがたい。

★ 1歳の方でも、先生がこの対象で検査を進めたいと思う例があると先ほどおっしゃっていたが。

説明者: 診断基準としてそういうものがあるが、それは日本の診断基準ではなくて海外での診断基準なので、将来的に日本もそのようになっていくことが予想される。ただ、やはり倫理的に問題があるかなと私たちも思うので、本人が検査というものを理解できる年齢を対象にした方がいいのかなと・・・。

委員長: 誤解されたら困るのだが、説明できない人を対象にしてはいけないと言っているわけではなくて、それぞれ何をするかを説明していただいて、それぞれに適切なことがやろうとしているかどうかを説明してほしいということである。

説明者: もしこの申請書のままでいくのであれば、逆に変更として小学校高学年以上とすれば問題ないと考えていいか。

委員長: ですから、本当に何が医学として必要かをやっていただきたいと思う。倫理が通らないからやらないといけないことを絞ったというのは絶対に避けていただきたい。

★ 恐らく必要な意義をもう少し明確に説明してくださいということだと思う。何も年齢制限のところをどう変えてくださいということではなくて、16歳以下の人に対しても行うことの意義をもう少しちゃんと分かるように、分かりやすくするということである 。
 例えば4ページの病気が疑われる患者さんのところの「遺伝子診断にて鑑別がつき、患者にとって予後予測につながり、有益と考えられる場合」というのも、早くやった方が診断がついて、その後の予後が良くなるということ、年齢のことなどもここに入れておいてくれると、分かりやすい。

委員長: 幼児でも利益がある場合があると書いていただければいい。

★ 誤解があるといけないのだが、倫理委員会の在り方というのは、先生の研究か何かで批判にさらされたときに「いやいや、倫理委員会はそこをよく考えて承認したのだ」という立場なので、倫理委員会に言われたからといって研究をあちらに変えたり、こちらに変えたりする必要はない。後からもめたときに出てきて、そのときに「どうして承認したのだ」と聞かれたら「こういう理由があったからだ。何か悪いか」と言うために倫理委員がいるわけなので、安心して、研究を狭める必要は全然ない。

説明者: よく分かった。

委員長: 高橋グループには日本中の期待があって、いろいろな方が来られる。それに対して説明文書を用意したり、倫理審査委員会で細かく説明したりすることがどうしても必要になると思う。それは使命だということで、われわれはその使命を応援するというか、ちゃんといくようにいろいろ考えるという立場でやっている。
 では、質疑はここまでとさせていただく。

【審議】 説明者退席後、審査が行われた。

委員長: 未成年者の部分は必要であるということをしっかり書いていただく。研究の意義および目的のところにも書いていただき、対象と人数のところも注釈的に、例えば幼児を対象にする可能性があるということ、なぜならこうであるということも追記していただく。もう一つは、小学生への説明文書を補足的でいいので用意していただく。

事務局: 今のアセット文書を用意するというところはマストになるか。一応、「理解度に応じて、口頭で丁寧に説明し」というところは、認識はされているようだが。

委員長: 小児の検査をするときというのは、(説明文書は)何もないのか。重たい病気で、小学生の検査をするとき。

★ 本人への説明よりは、やはり文書で残すのは親の説明への承諾である。あとは小児の発達段階によって口頭でどれだけ主治医が説明するかということになるかと思う。

委員長: 臨床の場合はそうである。これはほとんど検査なので、要らないか。では、マストではなくて。

事務局: 承知した。

委員長: 小児も含めていいということで、検査の現場で行うということなので、口頭の説明でもいいと。それで、いろいろ議論した結果、計画書にしっかり入れてくださいということで。条件付き承認で。

 

5)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(変更)
受付番号:2018-037 「行動解析と認知課題を用いた集団スポーツの精神科リハビリテーション効果の評価」
研究実施責任者:AIP 構造的学習チーム 藤井 慶輔

【概要】
事務局より、研究計画の変更内容について説明があり、審議が行なわれ、特に問題はないとされ承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

委員長: よろしいか。これは新しく加わるというよりは広がるだけなので、承認ということにさせていただく。

 

 

6)ヒト由来試料等を用いる研究計画に関わる審査(新規/前回から審査継続)
受付番号:K2018-032 「ヒト腎生検組織糸球体の電子顕微鏡3D微細構造モデル構築による検討」
研究実施責任者:BDR 細胞場構造研究ユニット 岩根 敦子

【概要】
事務局より、前回委員会において審査継続となった本研究計画内容及びコメント対応について説明があり、質疑応答の後、審議が行なわれた。審議では、特に問題はないとされ、承認とされた。

質疑応答等詳細は以下のとおり

事務局: これは前回、継続審査になった案件である。「共同研究機関において、診断のために採取した腎生検試料の本研究計画への使用に関する対象者への説明については院内掲示でのオプトアウトとしているが、診断後の対象者に対面で説明できる機会があると思われるので、説明方法をオプトアウトとした理由を教えていただきたい」という審査のコメントに対しては、「腎生検の段階では、組織の診断名が付いておらず、結果を確認してから共同研究に適する症例か否かを判断する。その時点では患者さんは紹介元に戻っているようで、かつ、診断名を通知する時期と研究に適する材料だと判断する時期にはずれがあるということで、同時にその判断ができるわけではないため、手続きが難しくなることから、ホームページ上で情報公開し、拒否の機会を提供することで対応する」という判断を共同研究先の委員会ではされたということである。
 もう一点、「当該研究の実施において動物実験を経ずにヒト試料で行う必要性について記述すること」というコメント対応としては、「また研究計画申請書について、動物実験を経ずにヒト試料で行う必要性の記載を追記した」ということになる。

委員長: やはりどうしても最初の患者さんとつながっているときには、そもそも研究に使うかどうか分からないのが実情のようだが、やることが試料として組織レベルの研究をするだけということでもあるので、オプトアウトでいいだろうと判断したが、皆さんはいかがか。

★ 医学の研究というのは必ず、何か技術的な発展はそちらの方からやりなさいという大原則はあるが、実際にこれは検査材料がもう出るわけで、それはやってはいけないという話ではないかもしれないと思う。

委員長: それでは、これも承認ということで進めさせていただく。

 

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