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No.28

第28回 神戸事業所 倫理審査第二委員会 議事要旨

 

1. 日時 令和3年9月8日(水)14:00~15:05
2. 場所 Zoomを用いたオンライン開催
3. 出席委員等
 
(委員)

玉木 彰 委員長 (神戸医療大学大学院医療科学研究科 教授)
武田 真莉子 委員 (神戸学院大学薬学部 教授)
辰野 久夫 委員 (辰野・尾崎・藤井法律事務所 弁護士)
中村 通子 委員 (朝日新聞岡山総局津山支局 支局長)
西口 修平 委員 (加納総合病院 名誉院長)
古屋敷 智之 委員 (神戸大学大学院医学研究科薬理学分野 教授)
片岡 洋祐 委員 (生命機能科学研究センター 細胞機能評価研究チーム チームリーダー)

   
(説明者)

渡辺 恭介 (生命機能科学研究センター 健康・病態科学研究チーム 研究員)
水野 敬 (生命機能科学研究センター 健康・病態科学研究チーム 上級研究員)
渡辺 恭良 (生命機能科学研究センター 健康・病態科学研究チーム チームリーダー)

   
(オブザーバー) 小川 壮 (神戸事業所長)
(事務局)

片山 敦 (神戸事業所 安全管理室長)
高橋 一樹 (神戸事業所 安全管理室)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)報告事項
(2)人を対象とした研究課題(新規)に関わる審査

5. 報告事項
 

倫理指針、規程等の改正、申請書様式の改定等について
事務局より、倫理指針改正等に伴い所内規程等の改正および申請書様式の改訂があったことについて説明があった。

6. 審議事項
 

1)人を対象とした研究課題(新規)<医学系指針>
受付番号:K2021-015
「機能性飲料摂取による抗疲労・健康増進効果の検証研究」
研究実施責任者:健康・病態科学研究チーム 渡辺 恭介

【概要】
説明者の渡辺研究員、水野研究員、渡辺チームリーダーより、本研究計画の項目に沿って説明があり、質疑応答の後、審議が行われた。質疑応答では、説明文書の内容に齟齬があるのではという指摘があり、被験者には口頭で詳細を説明するよう求められた。審議では、特に問題は無いとされ、承認すると判断された。
質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 個人情報の管理のことでお伺いしたい。最初にリクルートをされるのは第三者の研究機構で、そこで個人情報がまず取られるということだと思うが、その後に理研に来られてそこでも個人情報が発生すると思うが、匿名化はどのような手続きでなされて、誰がどこまで個人情報を取得していてということをもう一度ご説明いただいてよろしいか。

説明者1: 今回の試験に関しては、計測場所は一般社団法人の研究機構が準備する会場なので、理研の研究員やA株式会社の方が計測自体に関わることはない。被験者さんに対応するのは全て研究機構の方になる。個人情報はそこで持っていただき、対応表もそちらで管理していただいて、データ解析のところでは匿名化された状態でデータが来るため、個人情報は理研の方では持たない形で実施する予定にしている。

★ 理解した。

★ 研究計画には男女比は特に記載がないが、場合によっては20名全員が男性あるいは女性でも構わないのか。
それとご承知のように、来年の4月1日からは改正民法が施行されて、日本の成年年齢が18歳に引き下がる。この研究期間は2023年3月31日まであり、この途中で成人年齢が18歳になってしまうが、そのあたりは20歳以上にされるのか、あるいは思い切ってこの段階から18歳ということもあり得るのか。
 それから、これは全ての研究における倫理の問題なのかもしれないが、LGBTQの皆さんの認知が世界的に相当進んだと思う。そうすると、今後こういった試験をされるときに、この試験は男女の区別がないようだが、LGBTQを公表されている方を意識的に対象者に加えていくという配慮は必要ないのか、研究の観点からそういったことはあまり影響がないのであれば構わないのかもしれないが、そういったことがお聞きしていて気になった。

説明者1: 性別を指定していないのは、現時点では男女平等に10名ずつくらいで採れるかなと考えている。今のところ、性別で血流の評価が変わってくるかというところはまだしっかりと検証できていないため、今回の研究で見えてくるところがあるかなと思っている。
 LGBTQのところは、質問票でも性別を聞く項目があり、どのように対応していったらいいのかというところは、この倫理委員会でもいろいろなご意見を頂ければと考えているが、今回の研究計画に関しては、あまり性別のところが影響してくるとは考えていないため、もし参加者の方が性別を答えたくないということであれば、質問票の中でそういったところを答えないこともできるし、男女という二つの性別に当てはまらない方でも試験に参加いただけるのかなと考えている。
 (成人年齢が)18歳からになるというところは、今回の研究計画ではまだ20歳で考えている。ただ、今後の研究計画では18歳からに変更していくことも考えたいと思う。

★ LGBTQはもっと広い問題ではないかと思う。

説明者2: これについては、理研あるいは文科省など、いろいろなところで全体として協議していかなければいけないが、やはり一番は科学的な論文の方でもそういうことをある程度考慮しながら、いろいろなルールを決めていただかないと。特に臨床試験・臨床研究の中では、性別など、結構こだわられる場合があるため、そのあたりのコンセンサスを得ながらやっていかないといけないと思う。社会的コンセンサスと科学的な領域のコンセンサスが必要なのだろうと思っているため、ぜひとも先行していろいろなご意見を頂ければ大変ありがたいと思う。

★ この倫理委員会では(社会的・文化的意味合いの性別ではなく)生物学的性を扱っており、倫理委員会ではそういう扱いでいいと理解していたのだが、違っていれば教えていただきたい。

★ 研究というサイエンスの側面で見れば、先生がおっしゃるようにまさに生物学的な問題なのかもしれないが、一般人を研究対象とした社会的な実験ということで倫理を考えると、質問票で男女の別を答えなさいという、それだけが場合によってはハラスメントになるという議論もあるため社会人を巻き込んでの、実験・試験という面で言えば、生物学的な議論だけではないのではないかと思う。

★ おっしゃることはよく分かる。ただ、やはりわれわれ生物学や医学をやっている人間からすると、性ホルモンの濃度などがいろいろなファンクションにすごく強く関わっていることは自明であり、少なくともこういった研究をするときには非常に大きな問題がある。やはり試験をする人間に対しては、いわゆる生物学的性を開示していただかないといけないことになると思う。
 それとすごく少ない人数のグループ、今回の試験のように数十人でやる場合は、おそらくこのデータはこの人だということが、特に社会的に表明されている方は分かってしまう。大人数の試験はいいのだが、通常のこういう数十人という小規模の試験ができにくくなるのかなとも考えている。

説明者3: やはりこの倫理委員会の中でも、今のように生物学的な性によるさまざまな応答性を判断するようなものは、修飾因子になり得るものもあるが、社会調査研究、アンケート調査研究などでは問題にもなり、工夫をしながら何とか進めたという経験もあるため、やはりここは研究の目的に応じて議論する必要もあるのかなと思う。また、必要に応じて生物学的な性の開示についても同意を取っていくような、ワンクッションを入れるようなことも必要になってくるかもしれないと思っており、そのあたりは慎重に進めていければと思う。
 また、18歳というところも、成人の規定が変わってくることと併せて、生命科学の倫理指針がそちらに追い付いているかというところもあると思う。18歳だと代諾が必要であるとか、そういう観点も併せて、18歳、20歳というところの判断もしていきたいと思う。

★ 研究説明文書を見ると、「本研究で取得した情報は、匿名化した後、セキュリティ対策を厳重に施した上、理化学研究所で期限を設けず保管管理します」となっている。どこで匿名化されて、どういう情報が渡されてということがこの書き方だと分からず、その下では「個人情報及び同意書は研究機構が適切管理します」とあり、これを見ると全て研究機構が持っているかのようにも読めてしまう。
 この研究説明文書を見ていると、最後の「研究実施体制」のところには理化学研究所が共同研究機関として書かれており、コミットがあるということはよく分かるが、「試料・情報の保管」というところで理化学研究所という名前が出てきている以外には、理化学研究所がどうコミットするのかということがあまり明瞭になっていないのではないかと感じた。そこは少し明確にされておいた方がいいのではなかろうかと思ったが、いかがか。

説明者1: 研究説明文書の「研究費と利益相反」のところで、一応、研究のやり方として、「A株式会社が研究費を提供し、理化学研究所との共同研究として実施します」、「共同研究契約書を締結して実施します」と書いている。最初の方で実施体制について触れられていないというのは、順番の問題で分かりにくいところにはなるのかと思うが、研究実施体制については、同意説明のときに必ずご説明した上で同意を頂く形になる。
 個人情報については「取得する情報」というのはどちらかというと研究データのような形で触れているところになり、同意説明のときは読んだ方にそこが伝わるよう注意して説明していただくように準備をしたいと思う。

★ 確かに文章を読んだだけだとコンフュージョンが起こる可能性もあるので、ご説明の際にそこを補足されつつということで承知した。

説明者1: そのように準備させていただく。

★ この試験の質問票の種類の項目の中に学歴と業務歴が書かれている。もしかすると以前もご説明ただいたのかもしれないが、学歴と業務歴についての質問が必要な理由をお聞かせいただきたい。

説明者1: 学歴・業務歴でいいのかというところはわれわれの中でも非常に議論があった。自律神経のコントロールのところに認知機能が関わってくるのではないかと考えており、そういった意味ではIQテストなどの形で積極的に評価することが必要になってくるのだが、今回の研究計画の実務的な時間の配分などを考えると、そこが難しいということで、補足の情報として、これまでの先行研究との関連も含めて、学歴・業務歴を入れている。昨年度、理化学研究所で実施する血流試験をこの倫理委員会で審議いただいた際に、確かここについてご質問を頂いき、そのようにお答えさせていただいたかと思う。

★ ご存じのように、学歴はデリケートな問題かと思うので、今までのご経験から、やはり学歴を聞いておいてよかった、これが非常に結果を解析する上で役に立ったということがあれば、もちろんそれでいいと思うが、あまり関係ないということであれば、いつか削除されてもいいのかなと思った次第である。

説明者1: 慎重に検討することとしたい。

委員長: 他にはいかがか。それでは審査に入りたいと思う。

説明者退席後、審議が行われた。

委員長: いろいろなご意見を頂いたが、具体的に修正箇所が明確になっているというよりも、例えば説明文書の個人情報のところは、説明時に口頭で補足するように対応していただくということになっているかと思う。また、性別に関しては、今後どうするかを検討していかなくてはいけない。最後の学歴・業務歴についても、明確に聞く、削除するという回答ではなくて、検討するということだったと思う。
 審査結果について、新指針では「承認」「継続審査」「不承認」「停止」「中止」「該当しない」という判断になっているが、いかがか。
 承認という形でよろしいか。その際に何かお伝えしておくべき点はあるか。
 先ほどのご回答では、説明文章の分かりにくい部分については、実際に説明する際にきちんと説明することで対応するということだったと思うため、それでやっていただくということになったかと思う。学歴・業務歴に関しては、今後、これを聞くことによって研究結果に非常に有益な情報であったということも明確に示していただくと、非常に分かりやすいが、取りあえずはこれでいくのだろうと思うため、この状況で判断したいと思う。
 それでは、審査結果としては承認とさせていただきたいと思う。

以上

 

   
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