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No.29

第29回 神戸事業所 倫理審査第二委員会 議事要旨

 

1. 日時 令和4年2月9日(水)14:00~15:40
2. 場所 Zoomを用いたオンライン開催
3. 出席委員等
 
(委員)

玉木 彰 委員長 (神戸医療大学大学院医療科学研究科 教授)
武田 真莉子 委員 (神戸学院大学薬学部 教授)
辰野 久夫 委員 (辰野・尾崎・藤井法律事務所 弁護士)
中村 通子 委員 (朝日新聞岡山総局津山支局 支局長)
西口 修平 委員 (加納総合病院 名誉院長)
古屋敷 智之 委員 (神戸大学大学院医学研究科薬理学分野 教授)
片岡 洋祐 委員 (生命機能科学研究センター 細胞機能評価研究チーム チームリーダー)

   
(説明者)

河合 英理子 (生命機能科学研究センター 健康・病態科学研究チーム 研究員)
森戸 勇介 (生命機能科学研究センター 健康指標ユニット 研究員)
水野 敬 (生命機能科学研究センター 健康・病態科学研究チーム 上級研究員)
渡辺 恭良 (生命機能科学研究センター 健康・病態科学研究チーム チームリーダー)

   
(オブザーバー) 小川 壮 (神戸事業所長)
(事務局)

片山 敦 (神戸事業所 安全管理室長)
高橋 一樹 (神戸事業所 安全管理室)
菊地 真 (神戸事業所 安全管理室)
北澤 泰二 (神戸事業所 安全管理室)

4. 議事項目
 

(1)人を対象とした研究課題(新規)に関わる審査
(2)報告事項
(3)その他

5. 審議事項
 

1)人を対象とした研究課題(新規)
受付番号:K2021-037
「体質分類を用いた最適な香り選定手法の創出」
研究実施責任者:健康・病態科学研究チーム 渡辺 恭良

【概要】
説明者の河合研究員より、本研究計画の項目に沿って説明があり、質疑応答の後、審議が行われた。質疑応答では、試験Aにおいて、連続して香り介入する際のリセット方法、試験前の食事等についての注意事項やCOVID-19感染症による嗅覚異常についての意見があった。また、血液検査の外部委託方法について、試料・データの取り扱いの流れについての説明がないとの指摘があり、特に個人情報保護の観点から、個人情報の取り扱い範囲・流れを明確に説明した方がよいという意見があり、審議では、試験方法の一部についての再検討及び指摘箇所の修正が必要とされ、継続審査と判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 香りをかいだときのリセットはどのようにしていくのか。強い香りをかいでいくと、割とすぐに大体区別がつかなくなってくると思うが、そういう場合はどのようにマネージしていくのかというところが気になった。

説明者: これまでにも同様の数種類の香りを連続して官能評価していただく試験を行ったが、そのときは直前の香りが残らないようにするために30秒から1分ぐらい、かいだ後に何も香りをかがない時間を設けた。また、試香紙といって、紙に精油を含ませて被験者ご自身に持ってかいでいただくのだが、その試香紙を同じ部屋に置いておくと香りの影響が残ってしまうので、その紙を別の部屋に持っていって処分して、30秒から1分ぐらい時間を置くと割とリセットされるので、そこはそのようにこれまでと同様の対策を取っていきたいと思う。

★ コーヒー豆をかぐとか、自分の体臭をかぐとか、リセットの仕方というのは何種類かあると思う。そういうよく知られているような手段を取った方が確実にリセットできるかなと思ったが、そのぐらいのことで大丈夫なのか。90分の間で18種類を明確に区別するというところが大丈夫なのかと思ってお尋ねした。

説明者: 自分の体臭をかぐというリセットの方法は確かに有用かと思うため、そこは改めて検討したいと思う。

★ 嗅覚の閾値は年齢によってもすごく影響されると思うが、今回は18~50歳か。

説明者: そうである。

★ 18歳と50歳では随分、嗅覚の閾値というのは元々がすごく違っていると思うが、そういうところを平均化するというか、標準化するというか、補正するというか、エイジミックスしてしまうと、それはファクターとして一つ入るのならいいかもしれないが、鋭敏さというのはすごく違ってくるかなと思っており、このエイジの幅だと大丈夫かなというところが一つある。
 もう一つ、嗅覚の検出能力の遺伝型というのは何を想定されているのか。

説明者: 文献では遺伝子多型によって、例えば草のような香りを心地良く感じるか、不快に感じるかというのが影響されるそうだが、今回の測定に関しては遺伝子型の要素を比較するというのは特に含んでいない。

★ 最初の文章に書かれているが、それはバックグランドだからいいのか。遺伝子多型が関係するというのはどこか。嗅覚細胞のレセプターのところに遺伝子多型があるということか。

説明者: 確かレセプターに関するところだったと思う。

★ 承知した。

説明者: 年齢の影響については、確かに年齢が上がっていくに従って香りを感じにくくなるとはいわれており、そこは確かにこの試験を計画する上で検討していたところではあるが、まず年齢も一つのファクターとして考えることも必要なのかと思っているところで、試験Aを実施して、さまざまな年齢幅の香り官能評価の結果が得られると思うため、その結果も考慮したいと思う。

★ 試験の前日あるいは当日の禁止事項に当日は水分摂取だけが可だと書かれていて、一応、制限が加えられているが、香りの成分の中に例えばグレープフルーツやオレンジ、レモンなどの食事として取る可能性のあるものも含まれる可能性があるが、このような食品や飲料の摂取を禁止されないのか。影響しないと考えておられるのか。

説明者: そうである。影響しないと考えていた。

★ 例えばペパーミントのガムをかむと、そういうものが含まれている場合があると思うのだが、そういうものも別に禁止しなくても大丈夫ということか。

説明者: 確かにあり得る。

★ もし疑いがあるということであれば、この試験の香りの中の成分に関しては食事摂取しないでほしいということも、一文を入れておいた方がいいのではないか。

説明者: もし影響しそうであれば、その一文を加えたいと思う。

★ 研究に参加いただけない方として、嗅覚異常があれば研究に参加いただけないということになっているが、新型コロナウイルスの感染既往のある方も既に分かっているだけで40人に1人になっている。多分、不顕性の感染を含めれば20人に1人とか、場合によっては10人に1人ぐらいまで感染している可能性もいわれている。そうなってくると、嗅覚異常を本人が自覚してされていないような方も結構おられるため、そういうことを明文化しておく必要はないか。

説明者: 新型コロナウイルスに感染した方全員が嗅覚異常を示すとも限らないかと思っていた。

★ 嗅覚異常を明らかに訴えている方以外に、本人が自覚していないのだけれども、嗅覚が低下しているといわれている。こういった微妙な試験の場合、その方の嗅覚がどの程度低下しているかはあらかじめ何かチェックして試験に入られるのか。

説明者: そういうわけではなく、この試験に関して特に嗅覚をチェックする予定はなかった。「嗅覚異常やアレルギー性鼻炎発症中の方」は自覚的に香りを感じにくいと思っている方という意味で記載していたのだが、確かに新型コロナウイルスに感染された方で、自覚がなくても嗅覚異常を示しているとデータがあるということだが、それを考慮すると、既にかなりの方が感染されていると思うため、リクルートの面で少し難しくなるのかなと。

★ そこまでの感染者数にはまだいっていないため、多分、多く見積もっても10人に1人程度だと思うが、リクルート先として考えておられる学生さんなどでは集団感染している場合があるため、注意を払う必要がある。あるいは「不適当と判断した方」で、新型コロナウイルスの感染既往を聞いて、感染したことがあれば、除外するということもありかもしれない。
 味覚に関しては、例えばご飯を食べていても、別の味に感じてしまうということがあるそうで。嗅覚もそういう感じで知覚されているのであれば、誤った結果が混ざってくる可能性があるので、聞かれた方がいいのではないかと思った。

説明者: 承知した。

★ 筋肉量を測られる理由は何なのか。

説明者: 今回、測定項目として中医学診断というものを行うのだが、中医学的な体質の分類の中に筋力が関わっている項目があり、今回は筋力などに関する測定項目も追加した。

★ どういったことが中医学的に想定されるのか。

説明者: 中医学診断ではいろいろな体質分類に分けられるが、分かりやすいところで言うと、疲れやすいとか、気力がないような方は「気が虚す」といって気虚証と表現し、逆に気が満ちているような、体力がすごく十分にあるような方は気虚には該当しないのだが、その二つの体質を比べると、気虚証の方は筋力が低下しているとか、体力が低下しているといわれている。

★ それが例えば嗅覚という感覚的なものにも影響すると考えられているのか。

説明者: そうである。感覚と直接関わりがあるという報告があるわけではないが。

★ この試験のいろいろな項目の中で、健康診断データということで自分の健診や人間ドックのデータ、これは脳ドックが入っている記載と入っていない記載が2カ所別々にあるが、血液を採って、理学検査も含めて腹囲や体組成もその場で測るといったことをやって、それでさらに自分の健診データを持っていくというのは、この健診データで何を見るのか。

説明者: 今回、セルフキットを使った採血を行うのだが、もちろん採血があることを説明した上で、試験に参加していただくかを判断していただく。もしも直前に採血するのが難しいとか、そういうことになった場合に、なるべく直近の健康診断データの血液成分を提供していただこうかと考えている。

★ 脳ドックなどと書いてあるため、脳の中の血管の走行とか、そういうデータなどを取るのかと思ったのだが、そういうことではなくて、血液データの補完ということなのか。そうすると、いろいろな検査の日が例えば半年前だとか、年に1回や2回しか受けていない人もいると思うが、それだけ時間差があり、自分で測る人との差であるとか、もしくは精度というか、診断している検査会社の差など、そういうものは影響しないのか。

説明者: もちろん影響すると思っており、やはり1年に1回程度しか健康診断を受けない方もいらっしゃると思うため、1年前となると、かなり体調や体質も変わると思う。当日に測っていただいた方とは、あとは測定・分析する場所等によって変わってしまうと思うことから、基本的には当日に測っていただきたいのだが、データがゼロよりはなるべく直近のデータを控えておきたいという意味で、記載させていただいている。

★ 了解した。血液でのいろいろな肝機能や腎機能などということで、遺伝子多型は測らないということだったが、腎機能など、そういう数値で体質というものはそれだけ綿密に分類できるものなのか。

説明者: 綿密にというと難しいと思うが、今のところ想定しているのがそんなに数多くの体質分類ではなく、ただ、どの項目が重要になってくるかはまた実際にやってみなければ分からないところもあるが、そこまで細かく体質を分類する予定ではない。

★ 香りを与えるときのやり方というのは、紙に染み込ませたものを匂っていただくというやり方になるというお話だったか。

説明者: そうである。

★ 資料に刺激装置のような図があるが、これは関係ないと思ってよろしいか。

説明者: 香りの官能評価には関係がなく、疲労試験のときに香りを介入する際はこの審議資料の装置を使用する。

★ コロナの話の関連でお伺いするのだが、消毒や流路の消毒などはどのようにお考えになっているのか。

説明者: 昨年も同様のシステムを用いて試験を行っているのだが、その際も、使用したフェイスマスクは1人ずつ洗浄し、除菌液にしっかり浸して、紫外線殺菌保管庫で保管し、直前に被験者さんに着けていただくという形で対策をしている。吸気経路のホースの中ももちろん毎回洗浄して、アルコールで拭くという対策を行っている。

★ 流路で与えるときの香り刺激は、複数の刺激を与えられる可能性があると思うが、そのときには香り刺激と香り刺激の間に一度、流路をフラッシュするような、匂い、香り刺激の残存がないようなやり方は取られているのか。

説明者: 1日に一つの香りを使用し、香りと香りの間というのは今回の試験プロトコルではないため、そこは問題ないかと思う。

★ よく分かった。

★ 血液をセルフキットで採り、そのデータが取れない方に関しては健診データを持ってくるということだが、セルフキットによる採血を怖がる方もおられるが、たとえばナースの方が採血してあげるということにはできないのか。

説明者: 基本的にはやはりセルフでやっていただくものにしたいと思っている。

委員長: セルフキットを使うというのは、他人が侵襲を加えるのではなくて、自分で行うことにするということか。

★ 自分で採血することをストレスに感じる方が結構おられ、医療従事者による採血の方がストレスは少ない方がおられる。誰か採っていただく人を用意できるのであれば採血してあげた方が本来はいいとは思う。少なくとも選択できるような形にすればいかがか。

説明者: 今回の試験に関しては難しい。

★ 承知した。

★ 資料にA社が出てくるが、検査キットを渡されて、そこでの検査結果を委託される先と考えてよろしいのか。

説明者: 採血検査キットの販売元である。

★ 検査キットをA社から買われて、検査されたキットはまたA社へ戻されるのか。

説明者; そうである。使用した針などはA社に返送する。

★ (説明文書の)「その他」のところを拝見すると、「市販の検査キットを用いる」、これはA社から買われると。「検査結果は研究対象者へ送付され」ということで、キットの検査結果は研究対象者が自分で分かるのか。

説明者: まずA社から検査キットを理研が購入して、その検査キットを実験の参加者が自分で使用して採血を行う。その採取した血液をA社に送り、A社が分析を行い、結果を出す。その結果は被験者さんに送られるので、理研はその被験者さんが得た結果を被験者さんから頂くという流れになる。

★ そうすると、A社には対象者の個人名は伝わることになるわけか。

説明者: そうである。

★ それは理研から伝えるのではなくて、対象者が自分でA社に伝えることになるわけか。

説明者: そうである。

★ そのような流れになることは、この説明文書に出ているのか。

説明者: この「その他」の項目以外のところでは、これ以上の詳細な説明は記載していない。

★ 個人情報保護法がまた改正され、4月から施行されるため、世の中の関心がまた個人情報に向いていることから、その観点からの質問である。対象者はキットを使って検査して、その結果をご自分でA社に送るとともに理研にも送るのか。

説明者: まず、被験者には検査キットを使ってご自身で採血していただく。そして、被験者さんがその採取した血液をA社へ送る。

★ ということは、そこで個人名が出ているわけか。

説明者: そうである。

★ その後研究対象者から理研に情報が提供されるというのは。

説明者: 「情報が提供される」というのは採血の結果のみになり、ここでは個人情報は省き、血液の検査結果だけを頂くということになる。名前などは研究IDで管理するため、住所や氏名などの個人情報が理研に送られてくるという状況ではない。

★ 理研は検査される段階では、名前は分かっているのでは。

説明者: そうである。

★ キットを使われた血液その他の情報は匿名なのか。そこは特定できるのか。

説明者: 被験者さんから理研へ採血の検査結果と個人情報が分かる状態では送られてこない。

★ 個人情報保護法の観点からいうと、今の話であれば、少なくとも被験者からA社の方に個人情報が伝わる。

説明者: そうである。

★ 理研からA社に個人情報を伝えることはあるか。

説明者: ない。

★ 承知した。理研は第三者提供をするわけではないということになるので、被験者自らがご自分の個人情報をA社に送るというのがシステムとして考えられているわけか。それは説明文書のどこに出てくるのか。それは説明会でご説明されるのか。

説明者: 書面でのこの説明が不足していたと思う。

★ やはりやや不意打ち感が漂うかもしれないので、事前にご説明はされると思うが、説明文書に書いておかれた方が倫理的にはいいかと思うが、他の先生方はいかがか。

★ 確かに理研の中だけで完結して、専用保管庫に施錠保管されるように読み取れてしまうので、検査会社の方に個人情報が渡る可能性というのはどちらかで示唆されておかれた方がよろしいのではないかと思った。

委員長: すごく重要なポイントかと思う。

★ 理研が被験者から得た情報をA社に渡すのであれば、第三者提供になるため、明確に同意がないといけないと思うが、今回の立て付けとしては、被験者から直接A社に(個人情報が)渡ると。

説明者: そうである。

★ そうすると、そのことをあらかじめ伝えておくことは大事ではないかと思う。

説明者: 承知した。

―説明者退席後、審議が行われた―

委員長: いろいろと意見が出され、まず香りをかいだときのリセットの方法、かいだ香りの影響をどのようになくすかということがあり、検討されるとおっしゃっていたと思う。また、当日摂取する食事の制限について、影響があるものもあるかもしれないということで、何かしらの記載があった方がいいのではないかというご指摘があった。それから対象者の嗅覚異常について、新型コロナウイルス感染者の後遺症として嗅覚異常が指摘されているが、そういった方々をあらかじめ除外基準に明記するか、それとも「不適当と判断した方」というところで判断するかということがあった。あとは健診データを利用するということで、一番のポイントとしては、血液データをA社に自分で送付するということで、ご自分で個人情報を会社に送るということに関する説明が、この説明文書を見る中では確認できないため、その辺の説明が必要ではないかという意見だったと思う。
 結果としては承認、継続審査、不承認、停止・中止、該当しない等があるが、いかがか。修正が少しでもあれば、継続審査になるか。

事務局: そうである。例えば誤字の訂正とか、そういった確認程度で済むようなものであればよいが、今回は説明文書の修正等もあり、少し大きい修正ではないかと思う。

委員長: 修正いただく点が当然あるということで、継続審査ということにさせていただきたいと思うが、よろしいか。

―挙手―

委員長: それでは、継続審査ということで決定させていただきたいと思う。

 

2)人を対象とした研究課題(新規)
受付番号:K2021-036「仮眠習慣による健康改善効果の検討」
研究実施責任者:健康指標ユニット 森戸 勇介

【概要】
説明者の森戸研究員より、本研究計画の項目に沿って説明があり、質疑応答の後、審議が行われた。質疑応答では、職場で仮眠をとる際の安全を確保することが必要ではないかという意見や、必要に応じて職場の理解を得るようにした方がよいのではという意見があった。また、共同研究機関としての企業の役割が、説明文書から読み取れないのではないかという指摘があり、審議では指摘箇所の修正が必要とされ、継続審議と判断された。

質疑応答等詳細は以下のとおり

★ 携帯型心拍計とスマートウォッチの写真が載っていたと思うが、これはRR間隔を導出するために両方を着けるということか。

説明者: 両方の装置を着ける形となっている。二つ着けるのには意味があり、今後、社会実装を考えると、被験者への負担が小さいものを利用することが望ましいと考えられる。胸に着けるタイプの心電計は、シール型の電極を胸に貼り付けて、それを付け替えたり、長時間着けていたり、あとは皮膚が弱い方の場合はかぶれてしまうといった事象が発生することもあるため、スマートウォッチで最終的には社会実装を目指そうと。ただ、精度良く取ろうと思うと、まずは携帯型心拍計できちんと研究成果を出し、この対応を取っていくことで、どれぐらいスマートウォッチで健康評価がうまくできていくのかを調べることもこの研究の目的となっている。

★ 承知した。

★ 今回は仮眠をしたということが、どれだけ健康に影響があるのかを見るわけか。

説明者: そのようになっている。

★ 眠くないとき、眠れないときはどうしたらいいのか。

説明者: 眠くないときは、被験者さんにも事前に連絡というか、教示、説明を行う予定であるが、基本的には安静・閉眼、つまり体を楽にして目を閉じた状態で、例えば先ほど言ったように椅子の上でゆっくりしていただくなど、既定の時間は必ず休んで過ごしていただく形で研究を進めていく予定となっている。

★ 睡眠の質は関係なくて、ゆっくり目を閉じて何もしない時間があるということを仮眠と見るということなのか。

説明者: そのようにしている。

★ 寝る姿勢で、リクライニングチェアによる姿勢は楽そうでいいかと思うが、机の上でうつ伏せに寝るというのは決して体は楽ではないが、なぜ寝る姿勢をこの着座もしくは机の上のうつ伏せ寝で指定しているのか。

説明者: これはなかなか難しいところで、われわれも実験の統制上は、やはり皆さん同じ姿勢で同じ形で寝ていただくのが理想なのだが、今回の試験では各被験者さんの職場等で寝ていただくことを想定している。そうなると、恐らくほとんどの会社がそうだと思うが、完全に横になって寝ることが物理的に難しく、その中で可能なものというと、リクライニングチェアのような背もたれを倒した椅子を使っていただく、もしくはそれも難しければ、自席でうつ伏せになって寝ていただくという形で、まさに被験者さんとの相談にはなると思う。

★ 職場の椅子で寝るというときに、事故などの想定はあまりしていないということか。

説明者: 一つの可能性としては、被験者さんの募集の段階で、寝る態勢を各自がどのように取られるのかをアンケート等で確認しておき、その中にもしもうつ伏せで寝るしかないという人がおられたら、危険性の可能性でご遠慮いただくということが一つ。もう一つは、椅子のストッパー等でもう動かないようにしたことを確認していただき、その上でお試しいただくという形で対応しようかと考えている。

★ 仮眠の質に対してその方がどういった仕事をされているかはかなり大きな影響を及ぼすと思うのだが、それはこのアンケート、質問票の中である程度データを取られるのか。

説明者: アンケートの中には職業性ストレスの調査というものがあり、その中で日々どのようなお仕事に就かれているのかを確認している。また、健康計測のときに行う調査の中にも、職場の状態等について聞く内容がある。あとはわれわれの想定としては、今回、被験者さんは主にオフィスワークの方を中心に募集させていただく予定となっている。

★もう1つの質問は、××時から××時までの仮眠ということなのだが、食事を取ったか、取っていないかというのはかなり大きな影響を及ぼす可能性が高いと思うが、そのあたりは配慮されているのか。

説明者: 個人の就業状態にもよるが、今回の試験では、食事の前か後かということについては特に統制を強くは取っていない状態となっている。

★ データとしては配慮されるのか。

説明者: データとしては、食事時間を日誌の中で記録するボタンがあり、食事の時間と仮眠の時間の対応関係が分かるようになっている。試験デザインとしては毎日一定時間の仮眠をどこかで取っていただくという形で解析を行うが、さらに詳しい解析として、仮眠を食事前に取った人と後に取った人でどのように変わってくるかを別途検証することは可能なデザインとなっている。

★ 「個人情報及び対応表の管理」という項目があるが、どのぐらいの期間、個人情報を保有しておくのかというところで、保管期間としては研究終了後3年と書いてあるが、これはそれでよいのか。

事務局: 個人情報については、解析するデータではないため問題ないと思う。

★ 同意説明文書で××日間の計測を研究期間として設定されている試験だと思うが、「期間は最大で××日を予定しており」とは出てくるのだが、その前に「試験期間」という文言があり、試験期間の具体的な設定がない記載になっている。試験期間とは実際に何のことなのだろうとお思いになる方がいらっしゃるような気がするため、試験期間を最初にどこかで設定された上で、この説明を続けるのがいいかなというのが1点である。

説明者: 承知した。同意説明の説明会の際等にこのあたりを詳しく、何日から何日までという形で被験者さんにはお伝えするようにする。

★  先ほどの話で、うつ伏せになって仮眠を取るのが必ずしも楽ではないという話もあったが、それと同時に仮眠を取るときの環境として、個室を持っているような職場の方もいらっしゃれば、皆さんがわいわいやっているようなところで一つのデスクを持っているような方もいるかと。その辺は基本的には被験者の方に、職場にも了解いただいた上でお引き受けいただくことを想定するということなのか。

説明者: そのようになっている。

★ これ(説明文書)を読んで、勘のいい人だったら「きちんと職場にも話をしておかないと成立しないのだな」と分かると思うのだけれども、わざわざ職場に許可を取ってくださいとまでは特に書かれていないので。

説明者: 今回、そこまでは明記していない。万が一被験者さんと職場の間で何かあって、やはり途中でやめたいということがあれば、いつでも試験を中止することは可能という形にさせていただいている。

★ 一応、説明会のときには口頭か何かでは言っておいてあげるのが親切なのかなという気はした。

説明者: 承知した。説明会の際に「参加されるときには事前に皆さまの職場のご理解を頂いた上で、ご協力のほどよろしくお願いいたします」という形で説明させていただく。

★ 今の点でもう一歩踏み込んで、例えばその会社の産業医に対して理化学研究所の方から、こういう趣旨で研究に参加いただいているのだということを説明してあげることはできないのか。被験者が望む場合はそういうこともすると言えば、各会社には産業医がおり、その先生に言えば、多分、理解していただけると思うのだが。

説明者: 例えば対応の一つとして、理研側からこちらの連絡先を記した研究の説明資料のようなものを事前に用意しておいて、被験者さんから求められた場合は、それを例えば産業医の人に見せていただくことが可能になるような形の準備をすることで。

★ ぜひそういう対応をしてあげた方が親切だと思う。

説明者: 承知した。その点についても検討させていただく。

★ まずこの研究の実施主体としては、あくまでも理研の中のBDR-ダイキン工業連携センターが主宰になるわけか。

説明者: そうである。

説明者: 企業は共同研究機関となり、A機構は業務委託先として、健康計測を主に担当していただく予定となっている。

★ 同意説明文書を見ると、研究責任者の氏名と説明者の氏名がブランクになっているが、同意書は理研BDR-ダイキン工業連携センター宛てであるが、ここは同じ記載になるのか。

説明者: そうである。説明者は基本的に私、もしくは申請書類の中にも説明者のリストがあり、そこに書かれている人が説明者として設定される状態になっている。同意書のところは説明者によって、説明担当者の名前が変わっていく予定となっている。

★ (被験者の)募集は企業の名前でされるわけか。

説明者: そこは企業の中でも募集するが、基本、試験の主体は理研BDR-ダイキン工業連携センターなので、ホームページ等で広く一般で公募する場合は、理研BDR-ダイキン工業連携センターの名前で募集させていただく予定となっている。

★ この同意説明書には企業名は出てこない。そのあたりは説明として不十分というか、整合性が取れていないということはないのか。

説明者: 説明の中に企業との共同研究で今回のデータを利用するという記述があり、同意説明の際にも、口頭にはなるが、理研BDR‐ダイキン工業連携センターとして企業と一緒にやっている研究であるということは明示させていただきたいと思う。

★ 連携センターはあくまでも理研の機関であって、企業は第三者機関であるため、そこが説明書を拝見した限りでクリアではないのではないかと。また、「知的財産権」のところに「知的財産権は全て本研究に関わった研究機関あるいはデータを活用した企業等に帰属する」とある。これは被験者にとっては、どこなのか分からないのではないか。

説明者: これは基本、この企業のみとなっている。

★ そのあたりをクリアに書くことは何か支障があるのか。書かれた方が信頼性は高まるかと思うのだが。この説明文書だけを読むと、あくまでもこの事業は、理研の中の連携センターが企画して行う事業で、共同研究者として企業とA機構ということは出てこないのではないかという質問である。 
 また、個人情報の観点で、企業には被験者の名前は提供されるわけで、さらにデータ取得で、2心拍計測とデータ解析は共同研究機関である企業がされるので、その説明がなされていないと、第三者提供になってしまわないか。このデータ取得とデータ解析が、被験者が企業に直接提供するのであれば、理研の第三者提供にはならないと思う。そこもこの説明文書を拝見する限りではクリアではない。さらに健康計測についての個人情報がA機構に、これは理研がここに委託するとすれば、これは個人情報がそのまま出されるのなら第三者提供になるので、被験者の同意が必要だと思う。

説明者: IDとの対応表については基本的に理研で、企業側から募集があった場合には、その情報についてはこちらでIDとの対応を理研側の担当者が付ける形になる。

★ 理研で入手したものを匿名化してから、それが企業とA機構に渡るのか。それとも、そこは実名が渡るのか。

説明者: 企業とデータ解析等でデータを共有する場合には、全て匿名化された状態でデータ共有が行われる予定になっている。

★ それなら安心である。そのことも同意説明文書の中には明確に書いてないのかなと感じた。改正個人情報保護法が4月施行であるため、そこは丁寧に記載されておかれた方がいいのではないかと思う。

説明者: 承知した。同意説明文書の方を修正するか、もしくは実際に同意説明を被験者さんに行うときに、個人情報、どの情報がどこに渡るか、匿名化というものがどのように行われるのかを説明するような対応でよろしいか。

★ 口頭で説明されると、聞いていないとか、理解できていないといったときのリスクを負うことになるが、その判断でいいかどうかになる。私はなるべく書いておかれた方がよいと思うが。

説明者: 承知した。では、事務局とどのように記載すればよいのかを相談しながら、進めさせていただきたいと思う。

―説明者退席後、審議が行われた―

委員長: それでは、審査に入りたいと思う。まずは仮眠について職場の了解をどう得るかということで、職場向けには連絡先を明記しているという回答だったと思う。仮眠の姿勢について、机に突っ伏して寝た場合など、けがをしたらということに関しては、ストッパーの確認をあらかじめお願いした上で実施してもらうという回答だったと思う。
 あとは共同研究機関として企業があるが、特に説明文書の部分で、個人情報の取り扱いについて、匿名化したデータを共有することは問題ないにしても、その辺の説明がきちんと同意説明書に明記されていない部分があるということも指摘されている。幾つかデータの取り扱い、あるいは関係機関との関係がうまく書類では伝わっていないのではないかという意見があった。
 ご指摘いただいたところは実際に書き直していただくことがほとんどかと思うので、審査としては継続審査になるかと考えるが、いかがか。継続審査でよろしいか。

―挙手―

委員長: ご指摘いただいた部分をまとめて、特に書類の面できちんと伝わりやすいように修正していただくということにさせていただければと思う。特に同意説明書の部分は、もう少し分かりやすく説明できるようにしていただきたいと思っており、継続審査ということで判断させていただきたいと思う。

 

6. 報告事項
 

事務局より、継続申請(実験実施期間の延長)についての迅速審査の結果及び他機関における一括審査を経て理研で許可された課題一覧について報告があった。

概要等詳細は以下の通り

事務局: 報告資料として審査依頼書があるが、この計画は昨年末までの計画で、1年間の延長ということで継続申請が出ている。研究内容については変更なく、期間の延長のみである。迅速審査が行われて、承認と判断されている。継続内容としては、さらなる解析を進めるとともに、発表等でまだデータを使うということで、継続されている。 
 続いて、一括審査による審査結果である。他機関において一括で審査いただき、理研内で許可した課題についてである。指針改正後、神戸事業所においては3件について許可されている。タイトル、課題名を見ていただくと分かるとおり、MRIやPETに関わるような研究ではなく、第一委員会の方で倫理審査がされているような課題となっている。今回、審査する委員会が他機関となっているため、併せての報告とさせていただいている。A大学での審査が2件とBセンターでの審査が1件なされ、いずれも許可されている。

 

7. その他
 

事務局より、2022/3/31で実験が終了予定の18課題について継続申請が提出されており、期間の延長のみのため迅速審査での対応となる旨の説明があった。
迅速審査委員として委員長から2名の委員が指名をされ、2名はこれを承諾した。

概要等詳細は以下の通り

事務局: 継続申請について、現在、18件の課題について継続申請が提出されている。まだ申請の調整中であるが、基本的に内容の変更はなく、期間の延長のみとなっている。そのため迅速審査とさせていただきたく、委員長には迅速審査委員の指名をしていただきたい。

委員長: 順番ということで、名簿での前回からの順番だとA委員とB委員になるが、いかがか。
(両委員とも了解)

事務局: 指針改正について、委員が言われたとおり、個人情報保護法は4月1日で改正法が施行される。それに伴い、倫理指針も改正される見込みである。現在、パブリックコメントは終了しているが、まだ指針の正式なバージョンが出ておらず詳細はご案内できないが、次回の委員会等でまたご説明させていただきたいと思う。
 続いて、先ほど審査いただいた理研BDR‐ダイキン工業連携センターは、5月末で終了予定となっている。ただ、この研究自体は健康・病態科学研究チームがそのまま引き取り、大きな体制変更なく行っていく予定となっている。この連携センターにおいて幾つか研究課題があり、それについてまた所属の変更や企業との情報の共有についての変更予定があるとのことで、また審議をお願いしたいと思っている。新年度についてまた予定等が確定したら、審議の調整をさせていただきたいと思う。

以上

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